労働基準法(労基法)違反で労働基準監督署(労基署)が、経営者を逮捕したというニュース。
逮捕にまで至ったのが、「異例」というのが問題だろう。
時事通信ニュース:労基署が異例の逮捕=賃金未払いの社長ら-岐阜
中国人技能実習生に賃金を適切に支払わず、労基署の調査も妨害したとして、岐阜労働基準監督署は22日、最低賃金法と労働基準法違反容疑で、縫製会社社長粟谷浩司(50)=岐阜県笠松町米野=、技能実習生受け入れ事務コンサルタント伊藤智文(50)=岐阜市中=両容疑者を逮捕した。同署によると、労基署が容疑者を逮捕するのは異例。
このニュースを見出しを見たとき、中国の話かと思った。賃金未払いでデモが起こっているニュースがあったからだ。しかし、岐阜、国内の話だった。
本件の経営者が悪質で逮捕したようなのだが、法律違反に悪質も良質もない。法律があっても守らない、違反が軽度だったら見逃したり放置しているのであれば、法律は存在しないのと同じだ。
労基法を遵守しているかどうか、経営者に対する労基法の適用は、かなり甘いのが現状だ。
だから、ブラック企業がのさばる。
ニュースになるほどのブラック企業は、知名度のある大企業ばかりだが、じつのところ中小企業ほど労基法違反の会社は多い。中小企業のリストを壁に貼り、ダーツを投げてランダムに抜き打ち検査すれば、8~9割は違反が見つかると思う。遵守している会社の方が少ないからだ。
このニュースに対して、Yahoo!ニュースのコメント欄では苦言と喝采のコメントが並んでいた。
厳しくしないとやりたい放題してくる
見せしめが必要
求人と実態が明らかに違う経営者ももっと逮捕したほうがいいね。
そうです。こういう奴らをちゃんと逮捕していくことです。
そうすれば、日本の一般勤労者も残業代の不払いや、フレックス勤務や裁量労働制の「企業サイドだけに都合いいルール」には、労基署に調査を依頼するようになっていくでしょう。
この対応が当たり前になってほしい。
良い仕事をしましたね。
素晴らしい仕事をしたと思う
法律はあるのですから、適正に執行するべきです。
当たり前の仕事をして、ニュースになる…
労基署は警察権がある。訴訟では司法警察員にもなる。
刑法に違反しても、
公職選挙法にしても、なんにしても
違反すれば逮捕される。
それが当たり前。なのに労働基準法は「法」と名がついているのに
いままでが
法律であって法律でないような側面があり過ぎた。
もっとガツガツいくべき。
異例ではダメです。これが普通にならないと。
岐阜県労基署は、いい仕事をしました。
これが仕事です。
労基が当然の対応。
全ての企業の残業代の改善もしてほしい。
最近はあまりにも酷い。
今までは泣き寝入りが当たり前だったのかな。
弱者を守る仕事、もっと頑張って!
オレの会社も頼むわ!残業代と休日出勤の割増を3年も払わないんだけど…。
ドンドン逮捕すべき。
パワハラとか酷い案件にも真摯に対応して下さい。
頑張れ労基!
ウチの会社にも来て~(T . T)
タイトルに「異例」ってあるけど、異例にしないで欲しい。
介護業界がヤバイです
縫製会社・・・うちと同じだ。
逆に、外国人労働者にはきっちり払ってるけど
パートや正社員の残業代はかなりごまかされてる。
まあ今に始まったことじゃないが。
ここ以外でもやってる会社はたんまりあるわけでして…
経営者もまさか逮捕されるとは思ってなかったでしょうから、他の経営者に対しても良い意味で警告になるでしょう。
サービス残業という残業代の未払いにも、しっかり罰則を科してほしい気もします。
ブラック企業がのさばっているのってそういう経営者も問題だけど、
労基が仕事してないからだよ。
こういう記事に対するヤフコメのコメントは、まっとうな意見が並ぶ。それぞれの労働環境で実感があるからだろう。
労働者は、
「うちの会社、労基法違反だよな」
と思いつつも、我慢している。文句をいえば、冷遇されたり自主退職を強要されたりするからだ。労基法違反が常態化している会社は、パワハラ・セクハラやイジメも横行する。
労基署が労基法違反を厳密に摘発できないのには、あまりに対象となる会社が多くて、署員の人員が足りないというのもあるのだろう。
2012年の少々古い記事だが……
Ceron – 東京新聞:労働者保護、人手足りず 監督官1人に3000事業所:社会(TOKYO Web)
過労死や過労自殺が高止まりする中、長時間労働や労災事故など不当な労働条件の改善を指導する労働基準監督官は、東京二十三区では一人当たり約三千の事業所を担当している。人手が足りず、十分な監視の目が行き届かない実態が浮かび上がってくる。
元記事は削除されているので、引用しているサイトからの抜粋。
4年(現在年からは12年)経った現在でも、事情はそれほど変わっていないと思われる。警察官が足りず、犯罪が横行しているとなれば大問題になるが、労基法違反は野放しにされてもあまり問題にならない。それだけ軽く見られているわけだ。
犯罪でたとえれば、殺人は逮捕するけど、ナイフで斬りつけたときに怪我が軽ければ逮捕しない……というようなものだ。そうなったら傷害罪の罪はないことになってしまう。
労基法違反は犯罪。
その認識が経営者には希薄だ。希薄になるのは、めったに査察されないし、逮捕されないし、罪に問われないからだ。
労基法違反で多いのは、賃金を適正に払わない、残業代を払わない、労働時間の許容範囲を超えた長時間労働などだが、これらは中小企業では珍しいことではない。
それに加えて、法人に義務づけられている社会保険に加入していない会社も多い。
社会保険については、「貧困層だけでなく、富裕層ではない貧乏層もツライ」でも触れたが、会社が社会保険に加入しておらず、しかたなく国保に入らなければならないと、保険料の支払い負担は重い。会社が社会保険に加入してくれれば、負担は半分になるからずいぶんと楽になるし、保険料の未納問題もかなり解消するはずだ。
国保を滞納すると、給料差し押さえなどで強制徴収されるが、社会保険に加入していない会社は処罰されない。順番として、まず会社に社会保険に加入するように命じるのが先だと思うのだが、そうではなく末端の個人を先に締め上げる。管轄が違うからなのかもしれないが、そこは労基署と連携するのが筋だろう。
システムとして機能不全に陥っている。
「1億総活躍社会」というかけ声はいいが、まず、会社が労基法を遵守するようにしなければ、虐げられる労働者はいつまでたってもなくならない。
少ない人員でたくさんの会社を監督しなければならない労基署の署員も、サービス残業などの労基法違反をしているのではないかと想像してしまう。そうであるなら、警察官なみに人員を増やす必要がありそう。政治家の先生方は、そういうところにツッコミを入れて欲しい。
労基法違反が発覚すると、まず、勧告するようなのだが、勧告して素直に従うようなら最初からちゃんと労基法は守るものだ。守る気がないから違反を承知でやる。だから、違反を見つけたら、勧告なしの1発アウトで処罰していい。そのくらいの厳しさがないと、経営者は自覚しないよ。
そもそも経営者で労基法をちゃんと理解している人が、どれだけいるのかも疑問。会社を起こすのに、資格が必要なわけでもなく、車のように免許が必要なわけではない。労基法を知らなくても、経営者にはなれる。
私が勤めている会社の社長も、労基法を知らないのか、知っていても無視しているのかのどちらかだ。
社長いわく。
「うちは年俸制だからね。残業代は出ないよ」
それは違う。年俸制は正規の業務時間に対する年俸であって、時間外手当は払わなくてはならない。残業を何時間やっても、一定の給与しか払わなくてもいいわけではないのだ。勘違いなのか、都合のいい言い訳なのか、勝手な解釈なのか、こういう会社は多いと思う。
その間違いを指摘してやりたいところだが、それをいうと解雇されるリスクがあるからいえない。業界自体が、そういう空気になっているから、この会社だけの問題ではない。小さな会社では、社長はワンマンであり支配者だ。ブラック企業ではあるが、まだマシな方なので我慢するしかない。無職になるよりはいいと思ってしまうのだ。若ければさっさと転職するところだが、この歳になると転職するのは困難だからでもある。
労基法を遵守している、いわゆる「ホワイト企業」は少数派だ。
労基法違反をもっとこまめに摘発できないのだとしたら、ホワイト企業を認定する制度を作るといいかもしれない。ホテルなどでは、消防庁発行の「優良防火対象物」や「防火・防災優良認定証」という認定証を貼って、安全性をアピールしている。品質マネジメントシステムとしては、ISO 9001を表示することで品質をアピールする会社もある。食品であれば「特保」みたいなもの。
それと同じように、厳しい審査で「ホワイト企業認定証」を発行すれば、その会社は晴れてホワイト企業と表明できるし、お墨付きがつく。逆に、ホワイト企業認定証のない企業は、労基法を遵守していない企業であることがわかる。この方法であれば、労基法違反を摘発する労力よりも、ずっと効率的な気がする。
検討してみる価値はあるのではないだろうか?