アニメ業界のことについては、過去、いろいろ書いてきた。
アニメーターでは食えなかった」は、よく参照されている。このエントリは、2006年11月7日付のものなので、11年前。

現役アニメ監督の、アニメ業界についての問題提起の記事が以下。

「10年もたない」現役アニメ監督が語る、過酷な製作現場の内情と解決策 ORICON NEWS

 スタジオジブリは先ごろ、宮崎駿監督の引退撤回、そして新作長編アニメーション映画制作を発表。と同時に、同作品のためのスタッフ募集を開始したのだが、その求人内容の“月収20万円”は高いのか、安いのか、と世間をザワつかせた。実際、日本における新人アニメーターの平均年収は約110万円。これは月収10万円にも届かない金額だ。さらに、アニメーターの1日の平均作業時間は11時間、1か月の平均休日は4.6日、これらの数字が示す通り、日本のアニメ業界は“ブラック労働”の代表格となっている。

(中略)

■増え続けるアニメの制作本数、減り続けるアニメーター

ブラック労働と言われるが、アニメーターを目指す人達の数は以前とさほど変わらない。しかし、生活できないから辞めていく人が年々多くなっている。そんななか、年間300本以上といわれる制作本数は適正なのだろうか。一方で、制作本数が多ければ、メジャーな作品だけではなく、以前なら実現しなかったようなマイナーな作品も作られる。アニメの多様性という観点からいえば、制作本数は多い方が良いという声もある。

現状の問題点と未来を憂う記事は度々登場するが、10年経ってもアニメ業界の闇は晴れていないということでもある。私がアニメーターをやっていた30年前と、大差ない状況が続いている。

前にも書いたように思うが、フリーランスのアニメーターは別としても、制作会社(プロダクション)に所属するアニメーターを、正社員として雇用するだけでも、かなり改善される。

正社員として雇用すれば、最低賃金制度が適用される。
東京都の場合、最低賃金は932円/時間。
月に26日、1日11時間の労働とすれば……

(26日×11時間)×932円=26万6552円

これだけあれば、とりあえず人並みの生活ができる。この当たり前のことができていないのがアニメ業界なのだ。

ちなみに、最低賃金の対象となるのは……

最低賃金の適用される労働者の範囲 厚生労働省

【最低賃金の適用される労働者の範囲】
地域別最低賃金は、産業や職種にかかわりなく、都道府県内の事業場で働くすべての労働者とその使用者に適用されます(パートタイマー、アルバイト、臨時、嘱託などの雇用形態や呼称の如何を問わず、すべての労働者に適用されます。)。

つまり、最低賃金が適用されない会社所属のアニメーターは、「パートタイマー、アルバイト、臨時、嘱託などの雇用形態や呼称の如何を問わず、すべての労働者に適用されます。」に含まれない労働者ということになる。

じゃあ、アニメーターの労働(雇用)形態はなんなのか?

すべて労働者」にも含まれないとなると、人間扱いされていないのか、奴隷ということになってしまう。奴隷は強制労働の無報酬だから、少ないながらも報酬は発生しているので、半奴隷、あるいは半労働者とでもいうのだろうか?

いずれにしても、基本的な労働者の権利が存在しないのが、最低賃金が適用されていない会社所属のアニメーターということになる。

なぜそんなことが可能なのか?
じつのところ、会社に所属していて、会社に勤務状態などを管理されてはいるが、正社員でもアルバイトでもなく、個人事業主扱いなのだ。

実態としては社員と変わらないが、それは名目というか偽装であって、法的には個人事業主になる。だから、最低賃金を保証する必要がない。
しかし、アニメーターはそのことの自覚はないし、正社員ではないと知らされることもなければ、雇用の契約書などというものも存在しない……というのが、私がアニメーターをやっていた頃の実情だった。

現在は、多少はマシになったのかな?……とも思ったが、「平均年収は約110万円」ということから推察すれば、相変わらずなのだろう。

最近のアニメ制作本数は、たしかに多すぎ。
私は、シーズンごとの新番組は、とりあえずチェックする。HDDレコーダーの設定で、新番組は自動録画になっているので、第1話は見る。その1話を見て、継続して録るかどうかを判断するが、30本あったら、残るのは10本くらいだろうか。それでも見るのを消化するのは大変(^_^)。

制作本数が異常に多いのは、制作費が安いからでもある。
テレビは、ほぼ24時間放送しているから、番組としてなにがしか埋めなくてはならない。深夜時間帯に放送されるアニメは多いが、CM枠の料金も安くなっている。番組として埋めるのに、制作費の安いアニメはお手軽なのかもしれない。

制作本数を減らして、クオリティを上げる……という理屈は、わからないでもないが、制作費が現状のままであれば、末端のアニメーターの報酬は低いままで、仕事量が減り、収入はさらに下がることになる。
低い単価を量で補っているため、なんとか現状維持していられる。

制作本数を減らし、質の高い作品を作るには、制作費の大幅なアップをして、末端のアニメーターの報酬アップを実現しないと、ますます食えなくなる。

また、作品が想定外にヒットしたときには、アニメーターにボーナスとしての還元されることも必要だ。
ヒットすればボーナスが出る……というシステムになれば、モチベーションも高まるというものだ。

ともあれ、まず、アニメ業界で働く人たちを、人間として、労働者として、最低賃金が適用される労働環境にすること。
そこから始めないと、いつまで経っても変わらない。

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