野心的? 無謀? 2023年宇宙の旅

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民間企業による宇宙への挑戦は、アメリカを始めとした海外で盛んだが、日本でも具体的な目標を掲げて挑戦するところが出てきた。

……のだが、概要を見る限り、「んんん???」と疑問符がたくさん浮かんだ。

“2023年宇宙の旅”実現へ H.I.S.とANA、宇宙機開発ベンチャーに出資

 エイチ・アイ・エス(H.I.S.)とANAホールディングスは12月1日、宇宙輸送機を手掛けるベンチャーのPDエアロスペース(名古屋市)に出資、 資本提携したと発表した。H.I.Sから3000万円、ANAホールディングスから2040万円の合計5040万円を出資し、2023年12月に宇宙旅行 の事業化を目指す。

(中略)

構想では、宇宙輸送機が航空機と同じように滑走路を離陸した後、放物線を描くように高度100キロメートルまで到達。その後、地球の重力で自由落下し、滑走路に着陸する。フライトは約90分間で、無重力状態を5分ほど体験できるという。料金は1人当たり約1400万円を予定している。

ニュースリリースは以下にある。
ニュースリリース(PDF)
さらに、PDエアロスペースによる資料

PDエアロスペースの宇宙輸送機のイメージ

PDエアロスペースの宇宙輸送機のイメージ

▼開発スケジュール

PDエアロスペースの宇宙輸送機の開発スケジュール

PDエアロスペースの宇宙輸送機の開発スケジュール

開発実験機(サイズはミニチュアである)

開発実験機(サイズはミニチュアである)

昨晩のテレビニュースでも取り上げていたが、エンジンの実験はミニチュアサイズでのものだったし、実機に搭載できるようなスケールにはなっていなかった。

エンジンがまだ実験段階であることに加えて、実機のフレームはイメージ図にあるようなものは、まだ実サイズでは製造されていない。
実験機は、写真だけ見ると大きいように見えるが、全長が3mくらいのミニチュアだ。
それなのに、二年後の18年に無人機で実証飛行。
四年後には、有人で実証飛行????

なんか、無茶苦茶なスケジュールな気がする。
国産旅客機として話題になっている「MRJ」は、2005年にミニチュアモデル(ようするに模型)を発表したことから始まり、紆余曲折を経て2016年にやっと実用的な初飛行にまで辿り着いた。しかし、トラブル続きだった。
大気圏内を飛ぶ旅客機ではあるが、足かけ10年あまり。

PDエアロスペースの宇宙機は、宇宙船というよりは高度100kmまで弾道飛行するだけだが、だからといって旅客機より簡単というわけでもないだろう。
H.I.S.とANAが出資したといっても、たったの5040万円ぽっち(^_^)b
桁を1つか2つ間違ってないか?

イーロン・マスク率いるスペースX社の「ファルコン9」は、低価格が売りのロケットだが、それでも打ち上げ価格は6,200万ドル(約66億円)かかるという。
ISSへの補給ロケットの場合、高度は約400kmまで上がらなければいけないから、PDエアロスペースの目指す宇宙機とはスペックが違う。
だとしても、開発費が1億円以下で飛ばせるとは思えないのだが……?

夢のある計画に水を差すつもりはないが、その資金とスケジュールでは無理だと思う。
もし、それが実現できたら、驚異的な技術とコストパフォーマンスになる。
2020年に有人機が飛ぶのかどうか、かなり懐疑的に期待する(^_^)b


【追記】Wikipediaより(2022年現在)

2009年時点では2014年中の有人機完成を目指すとしていたが、その後計画は大幅に遅延しており、2022年現在では全長5mの無人機を2024年に高度80kmまで打ち上げ、次いで全長14.8mで8人乗りの有人機を2027年に打ち上げるとしている。宇宙旅行の商業打ち上げは2029年となる予定。

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