生活レベルを昔に戻せば、地球環境はよくなるのか?
 問題はそれほど単純ではないだろう。
 「昔」というのが、いつのことかで意味がまったく違う。
 そんな意識調査があった。
Business Media 誠:地球環境を守るため、生活レベルをいつ頃まで戻せますか?

 環境を守るためには、生活レベルを昔に戻すことが効果的ともいわれている。しかし一度便利さに慣れてしまうと、なかなかそれ以前には戻れないもの。いつ頃までなら戻すことに耐えられるのだろうか。シチズンホールディングスの調査によると、全体平均は1987年(昭和62年)で、昭和の終わりまでなら戻せる、ということが分かった。男女別で見ると、女性は「1990年」までなら戻せる、が最も多く37.0%、男性は「2000年」で36.0%と、「女性の方がエコロジー意識が高いといえそうだ」(シチズンホールディングス)

 おいおい(^_^;……ちょっと待て。
 1987年にしろ2000年にしろ、昔というには微々たるものだ。
 地球環境の問題の中でも、地球温暖化について公式に大きく取り上げられたのは、

1988年にアメリカ上院の公聴会におけるJ.ハンセンの「最近の異常気象、とりわけ暑い気象が地球温暖化と関係していることは99%の確率で正しい」
地球温暖化 – Wikipedia

 とされている。
 つまり、その時点で、すでに温暖化は進行していたことになり、1987年に戻してもまったく意味がないどころか、石油は使い放題、省エネなど重要視されていない時代だ。
 1988年時点での環境悪化は、それまでの蓄積の結果だ。日本で言うところの高度成長時代(昭和30年代~40年代(1955年から1973年まで))は様々な公害や環境悪化が問題になった。当時は地球温暖化などはまったく考えられていなかったが、工業化・近代化が環境を悪化させていることは、局所的な問題としてとらえていた。地球全体の環境を考えるほど、政治も企業も想像力がなかったのだ。

 昔に戻す……ということを考えるのなら、少なくとも1955年以前だろう。私が生まれる前の時代だ。
 しかし、さらに昔に戻すと、第二次大戦がある。戦争は環境破壊の最たるものだ。となると、大戦前の時代……昭和初期が、もっとも近い戻すべき「昔」になるのかもしれない。
 だが、ここでひとつ忘れてはならないことがある。
 それは人口だ。
 昔に戻すということは、生活レベルを戻すだけではなく、生きている人間の数も戻す……つまり減らさなくてはならない。人口の増大が、環境に負荷をかけていることは自明の理なのだから、人間の数も計算に入れなくては戻したことにならない。
 1936(昭和11)年頃の日本の人口は6925万人となっている。現在の約半分だ。人口が半分であれば、単純に環境負荷は半減すると考えてもいいだろう。加えて生活レベルというか、エネルギー消費が低いわけだから、環境に優しいことは間違いない。

 しかしながら、「昔に戻す」というのは机上の空論にしかならない。
 1936年のレベル……技術力や生産能力も含めて……に戻せば、現在の人口を養っていくことは不可能だろう。国民の半分が飢餓や病気で死んでもいいから、昔に戻すなどということができるわけがない。
 日本では少子化が問題になっているが、世界の人口は増え続けている。バイオ燃料の影響などもあって、食糧危機が危惧されているが、地球温暖化を防止することが先決なのか、飢餓問題をなんとかするのか先決なのか、という選択にもなりつつある。
 両方を一度に解決できれば最良なのだろうが、どちらも解決できないまま突き進むというのが、現実になってしまいそうだ。

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