調査・統計の数字のトリック

Tricks of the Numbers in Surveys and Statistics. 政治・社会
Tricks of the Numbers in Surveys and Statistics.

Tricks of the Numbers in Surveys and Statistics.

世論調査やある事柄に関する調査や統計で、数字的な優位性から因果関係を推し量るということが行われる。
だが、調査・統計の数字には、因果関係を特定するには足りない場合も多々ある。

以下の記事もそのひとつだろう。

児童虐待7割が「核家族」 奈良県内児童虐待事案の調査結果を報告(産経新聞) – Yahoo!ニュース

昨年度に奈良県と市町村が受理した児童虐待事案を対象にした初の調査結果を報告した。全1228件のうち、7割あまりが父母以外の同居者のない「核家族」で起き、親が養育を怠慢したり拒否する「ネグレクト」も全体の4割弱を占める実態が判明。

虐待の7割が核家族だった……では、虐待の原因が核家族とは断定できない。
それは調査方法が間違っているからだ。

そもそも家族構成のシェアが違う、核家族と核家族以外を同列に扱っている。現在は圧倒的に核家族が多いのだから、虐待が発生する割合も核家族が多くなって当たり前だ。

たとえば、別の事例を仮定してみよう。
犯罪者が使っていたパソコンのOSの違いで調査する。そうすると、Windowsユーザーが9割だった……という結果になるだろう。
ならば、Windowsユーザーは犯罪者予備軍……という因果関係になるだろうか?

あるいは犯罪に使われるケータイでも調べてみる。
犯罪に多用されたのはドコモの携帯だった……となったら、ドコモユーザーが犯罪の温床だといえるだろうか?

シェアが圧倒的な優位にある人的分布であれば、当然、優位なカテゴリーで特定の条件を満たす人たちが多くなる。
これは数字のトリックだ。

家族構成から虐待の有無を調べるのではあれば、「核家族で発生した虐待の割合」と「核家族以外で発生した虐待の割合」で比較しなければ、因果関係を推測することはできない。
そういう調査が行われたのか、数字を発表していないだけなのかはわからないから、上記の記事のように「核家族が虐待の原因」とは特定できないのだ。

この手の調査・統計で、数字を曲解している例が多いように思う。

—–【補足】——–

5年ごとに行われている世帯動態調査の直近のデータによると、2004年での世帯の構成は以下のようになっているという。

第5回世帯動態調査 結果の概要

平均世帯規模は2.9人から2.8人へと減少、単独世帯の割合は19.8%から20.0%、核家族の割合は62.5%から64.2%へとそれぞれ上昇し、この5年間に小家族化・核家族化が進んだ。

4年前(現在年からは21年前)のデータであり次の調査は2009年だが、前回の調査では5年で核家族の割合が1.7%増えている。増加率が同程度と仮定すると、2008年現在では、65.6%くらいだと予想される。

つまり、「虐待の7割が核家族」という数字は、核家族そのものの割合に近いということであり、その割合を反映しているだけとも考えられる。そのことからも、核家族=虐待という図式は、成り立たないのではないだろうか?

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