【レビュー】映画『ベルセルク 黄金時代篇 覇王の卵』

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 遅ればせながら、映画『ベルセルク 黄金時代篇 覇王の卵』を観てきた。
 ケーブルテレビのアニメチャンネルで、昔のTVアニメ版を再放送していて、あの独特なテーマ音楽が耳について離れなくなっていた(^^)。
 何度となく観た作品だし、DVDの登場以前、レーザーディスクを買いあさったりもした。
 いまさら……という気がしないでもなかったのだが、観ようという気になったのは、以下の記事を読んだからだった。

【レポート】ベルセルクの世界は再現可能なのか -クリエイター集団「STUDIO4℃」の挑戦 | クリエイティブ | マイナビニュース

現在公開中の映画『ベルセルク 黄金時代篇I 覇王の卵』。この作品は、世界で3,000万部を突破したファンタジーコミック『ベルセルク』を原作としたもので、主人公ガッツとグリフィスの運命の出会いから戦闘集団”鷹の団”の栄達、グリフィスの絶望、そして世界を一変させる「蝕」までが描かれた作品だ。

(中略)

田中氏おすすめの見どころは、3Dを含めたハイブリッドな作り、そしてゾッドとの戦いのシーンだそうだ。また、ユリウス邸での暗殺シーンの隙のない演出。主人公ガッツとグリフィスが友情を語るベランダのシーン。また作品全体として、音楽と効果音・映像の相性にも注目してほしいそうだ。

 その意欲は買う。
 それがどれほど作品として、成果につながっているのかを確かめたかった。
 2月4日から公開だったから、まだ2週目だが、映画館はガラガラ……(^^;)。10人もいなかったように思う。
 映画館は、うちから近いいつもの豊島園だが、場所と時間(22:15~)を考慮しても、少なすぎじゃねぇ? 注目度、期待度が低いということか?

 観た感想を短く書けば……

グリフィスはより美形になってる。
キャスカの存在感は薄い。
ガッツはまあまあ。
映像としては、すごくいいところと、なんだそりゃ的なダメな部分の落差が大きい。

 グリフィスは美形の男子というより、ほとんど女性の美人だね(^^)。ちょっと線が細い印象で、妙な色気があった。テレビ版のグリフィスの方が、美形でも強かさを感じるものがあったと思う。
 キャスカは存在感が乏しかった。たぶん、「声」の問題。テレビ版の宮村優子の声は、個性的でインパクトがあったからね。
 ガッツはまあまあだが、やはり「声」の迫力が薄れている感じ。
 総じていえることは、キャラがみんな「やさしく」なった印象だ。
 これが今の時代なのかな?……という気もする。

 さて、肝心の映像の部分。
 前述のインタビュー記事で、気合いの入った制作をしていたようなのだが、完成品として公開された作品はどうなのか?
 意欲的かつ野心的な取り組みだとは思うのだが、結果としては完成度がいまいちだと思う。
 妥協点が低いと思うのだ。
 どこかで妥協しなくてはいけない。能力的なこと、時間的なこと、予算的なこと……等々、いろいろと制約がある中で制作しているわけだから、どこかで妥協することになる。
 もっと何とかしたいと思っても、どうにもできないことがある。
 問題は、その妥協点をどのレベルまで引き上げるかだ。

 モーションキャプチャーを使った映画としては、私たちは完成度の高い「アバター」を観ている。アニメと実写という違いはあるが、3DCGという点では「アバター」と比較してしまう。
 「アバター」が10点満点の完成度だとすれば、映画ベルセルクは5点くらい。
 なぜそう思うかといえば、違和感を感じる部分が多かったからだ。
 動きが不自然だったり、表情が死んでいたり、引っかかる部分が多い。些細なことなのだが、その些細な部分に観ている方は敏感に反応してしまう。
 その違和感を引きずるので、物語の世界観にのめり込めなくなってしまう。

 たとえば、バズーソとの戦いのシーンで、周囲にいる無名の戦士たちの動きと表情。
 まるでゾンビのような死んだ表情なのだ。生気がない。動きもぎこちなく、場面に不釣り合いだ。そういうところの妥協点が低い。
 違和感があるから、そこだけ浮いて見える。
 旧来の手描きアニメだったら、その他大勢のキャラは止め絵で処理してしまうが、その方が余計な違和感を与えずに済む。3DCGではなにがしか動かさなくてはいけないから、逆に目立ってしまう。
 このへんは諸刃の剣だ。

 また、モーションキャプチャーでは、モデルとなる人間の演技力が問題になる。動きは「癖」が出るもので、同じ人間がベースになったであろうキャラがあちこちにいて、違和感がさらに増す。
 主要キャラでもところどころモーションキャプチャーならではの違和感があり、役者の演技がダイコン役者だった。
 歩き方、手の振り、身構え方……等々、モーションキャプチャーで忠実に再現するほどに、アニメとしての違和感は誇張される。
 今ある技術と、それを表現として使いこなす術が、まだまだ完成の域には遠い気がした。

 おそらく、制作した側も、そうした違和感はわかっているはずだ。
 だが、妥協したのだろう。
 これが精一杯だと。
 それはそれでしょうがない。
 この経験を活かして、次の作品でレベルアップして欲しいと思う。

 音楽についても触れておこう。
 TVアニメ版の印象が強すぎて、映画版の音楽は印象に残らなかった(^^;)。
 映画というと、オーケストラを使う音楽になりがちなのだが、少々ありきたりな気がした。いっそのこと、ギンギンにロック調……今風ならデスメタル調でも良かった気がする。

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