ロシアによるウクライナ侵攻が現在進行形の中で、取り上げにくい雰囲気もあるが、本作はロシア製のSF映画だ。
「アトラクション -制圧-」(2017年公開)と、続編の「アトラクション -侵略-」(2020年公開)の2部作になっている。
日本での劇場公開は限定的だったようだが、Amazon Prime Video等で見ることが可能だ。
日本ではほとんど話題にならなかったためか、この作品についてのレビューは少ない。
じつのところ、私も知らなかった。
たまたまAmazon Prime Videoで別の作品を見ていて、レコメンド作品として出てきたので見てみたという経緯。
「侵略」の方が2020年なので、その2年後にロシアがウクライナに侵攻するなんて、誰も予想していなかった。
ロシアに対する制裁が実行されている現状では、それ以前に制作された映画であっても評価はしにくい空気がある。
しかし、あえて客観的にSF映画として評価するなら、この映画はなかなかの秀作だ。
SF映画のジャンルとしては、エイリアンものでありパニックものになる。
ハリウッド的ではないSF映画だが、特撮(VFX)のレベルは高く、日本製SF映画よりも上かもしれない。
ロシアでもこんな質の高いSF映画が作れるのか……と驚いた。
この作品についてのある記事では、ロシアの体制批判が込められているとの指摘があった。
それは主人公のセリフで、墜落した宇宙船に対して、
「こんな国に堕ちなければよかったのに」という一言にも現れていた。
エイリアンもののセオリーでは、武力行使が必然だ。どっちが先に仕掛けるかの違いはあるが、エイリアン vs 地球人の戦いになる。
本作では、先に仕掛けたのはロシア軍だった。
エイリアンを敵と認識し、いかに攻撃するかしか考えない政治家や軍の上層部たち。アメリカ映画でもそこは似たり寄ったりなので、そういう意味ではロシアもアメリカも大差ないんだなと思った。
エイリアンは人間とほとんど違わない人物がひとり出てくるだけ。
「人間とルーツは同じ」みたいなセリフが出てきたので、なんらかの因縁がある設定のようだ。
戦いの相手になるのはエイリアン側のAIで、その攻撃方法がデジタル情報をハッキングして情報戦を仕掛けるというもの。それに対抗するために、ロシア軍はアナログの固定電話や紙情報で指揮系統を保とうとする。
このアイデアは、エイリアンものでは新鮮だった。
ロシアの印象が著しく悪くなっていることで、ロシアを全否定する風潮がある。
体制が変わらないと、この風潮は続くのだろう。