【レビュー】映画『アバター』

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話題の映画『アバター』を、23日の昼間に観てきた。
今回は3D映画ということで、ユナイテッドシネマ豊洲に行った。
期待の映画だったが……

アバター

予想以上にすごかった!

期待した映画で、予想を裏切るほど面白かった映画は少ない。
『アバター』は、まさに桁違いに予想を上回る映画だった!!

当初、3D映画で、キャラクターをCGで作っている映画という認識だった。
つまり、期待としては映画技術の最先端を味わえるというものだったのだ。
しかし……

この映画は、“魂”を揺さぶる物語だ!
映画でこんなに泣けたのは、久しぶりだった!

以下、ネタバレありなのでご注意願いたい。

映画館で観る3D映画は初めてだった。
ディズニーランドの3Dアトラクションや、昔々のつくば万博のときにも3D映画を観た。
タイプとしては、ディズニーランドの延長線にあるものだ。

つくば万博は、1985年に開催されたが、技術的には古いものの、そのときの3D体験の方が斬新だった。映像から飛び出すように見える映像が、手を伸ばせば触れられるようなリアルさがあった。

『アバター』での3Dは、立体感というより「奥行き感」であって、目の前に迫ってくるような立体感ではない。
奥行きにいくつかのレイヤーがある感じで、その仮想的な距離感から奥行きを感じる。

もっとも効果的な奥行き感は、虫や小石が飛び交うシーンで、対象物が小さいほど背景との差がついて、より立体的に感じる。
その一方で、大きな対象物……たとえば、手前にあるメカと奥の背景との奥行き感は焦点が合いにくく、やや不自然に感じる。

専用のメガネをかけるが、もともとメガネを使っている私にも、3Dメガネをかけることはできる。
ただし、かけにくいというのはあって、3Dメガネがずれないようにするのに、ちょっとした工夫が必要だった。
通常のメガネに、3Dメガネがうまく引っかかるように乗せるのがコツだ。

3Dメガネは、こんなもの↓

3Dメガネ

3Dメガネ

私のメガネは、鼻梁の上(左右のレンズをつないでいる部分)が、やや出っ張っている構造のため、そこに3Dメガネの鼻梁部分を引っかけることができた。
この3Dメガネは、買い取りになるのでお持ち帰りができる。うまくメガネの上に3Dメガネをかけられなかった人は、3Dメガネがずれないようにするために、セロテープのようなものを用意して、3Dメガネの鼻梁部分から額に固定するようにテープを貼るといいかもしれない。

……と、3D映画として注目されていた『アバター』だが、むしろ3Dはオマケ的な要素だと断言できる。
3Dで観なくても、映画として、物語として十分に楽しめる作品だ。
上映時間が2時間42分と長めなのだが、その長さを感じさせないほど、内容が濃い。

地球人と、それに対抗する惑星パンドラの住人「ナヴィ」の対比は、西部劇での騎兵隊とインディアンだろう。

思い出したのは「ダンス・ウイズ・ウルブス」だ。
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物語の構造的にも似ている。
異人(エイリアン)として、現地人の世界に入り込み、やがて自身が現地人の価値観や考えかたを身につけていき、自分の出身である地球人と戦う。
ナヴィを滅ぼそうとする地球人は、アメリカ人自身を象徴している。ベトナムやイラク、さらにはアフガニスタンでアメリカ軍がやっていることと、基本的には同じことだ。

自分自身を悪者に仕立てて、ナヴィに感情移入させるというのは、ある意味、まだ残されているアメリカの良心でもあるのだろう。
大切なものはなにか?
その問いかけでもある。

それにしても、CGのキャラクターが、ここまで繊細かつ躍動感のある動きをするとは思わなかった。
観ているうちに、私自身もナヴィに乗り移ったかのような錯覚を覚えた。
彼らの生き方、考えかた、感じることが魂を揺さぶった。

それはある意味、ユートピアだ。
野性的でナチュラルで、厳しい環境の中にあって自由な彼らを、うらやましく思う。
原初の欲求なのだろう。
都市で暮らす私たちは、その便利さや快適な暮らしを享受しているが、同時に失ったもの、失ったことにすら気がつかないことがたくさんある。

主人公のジェイクがいった。

「これが真実で、今までが夢だったんだ」

同じことを、映画を観ていて思った。
日常の世界よりも、惑星パンドラの世界の方が居心地がいい気がした。

どんな世界にも厳しさや障害はある。ユートピアに見えるのは、外側から見ているからでもある。
それでも憧れる。
自分にはない、未知なるものへの好奇心や欲求があるからだ。

映画や小説といったフィクションを楽しむ心理というのは、現実逃避という一面と、自分では経験し得ない世界に身を置きたいからでもある。

朝、眠りから覚めたとき、今日もつまらない一日が始まる……と思うことがある。
楽しいことよりも、楽しくないことの方が多いのが人生だろう。

これは悪夢なのか?
そう思うことだってある。

そんなとき、映画や小説の世界に浸ると、
「オレはこっちの世界の方がいい」
と、しみじみ思う。

自分でも小説を書くのは、自分がいたい場所を描きたいからだ。
そんな夢を『アバター』は見せてくれた。

終盤。
ジェイクがナヴィの戦士として、仲間たちに戦いに立ち上がることを呼びかけるシーンには、武者震いした。
数では勝っていても、武力では劣る彼らは、熾烈な戦いを挑んでいく。

涙があふれてきた。

非情な戦いで傷つく彼らに、思わず怒りがこみ上げてくる。
物語は、ジェイクとネイティリのラヴストーリーにもなっている。

このラヴストーリーが、ピュアで心を打つ。
まさか、異星人の、しかもCGキャラクターのラヴストーリーで感動するとは思っていなかった(^^)。

地球人 vs ナヴィの戦闘シーンからは、涙が止まらなかった。
怒り、悲しみ、共感、愛するものへの想い……それらが混じり合った涙だ。

エンドロールが流れ始めると、感動で打ち震えた。
映画でこんなに泣かされたのは久しぶりだ。

観客は次々と席を立って、出て行く。
席がほぼ中央で、私の前が通路になっていた。
画面を横切っていく観客たち。

おまえら!
ちっとは余韻を大事にしろよ!
早々に退出した彼らには、さしたる感動はなかったのだろう。
なんて、感性の鈍い奴らだ!

余談だが、シガニー・ウィーバーがいい味を出していた。
「エイリアン」のイメージが強烈な彼女だが、この映画では円熟した演技を見せていた。
最初、「シガニーだよね? イメージ変わったな」と思った。

もう一つ余談として、惑星パンドラは、実在の恒星系であるアルファ・ケンタウリにある、架空の巨大ガス惑星の衛星が舞台となっている。
アルファ・ケンタウリは地球からもっとも近い恒星だ。

そのへんのことは、オフィシャルサイトにある「パンドラのすべてというムービーの中で紹介されている。

もう一度、観たいと思った。
もっとナヴィの世界に浸っていたい。

それで、今度は吹き替え版を26日に観に行く予定で予約を取った。
3Dではなく、近くのユナイテッドシネマ豊島園で。
Blu-rayが出たら、買うね(^^)。

キャメロンは、また、すごい映画を作った!
それだけは確か。

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