【サッカー】東アジアカップ後からの未来

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……の続き。

東アジアカップを現地からレポートしてくれた、宇都宮徹壱氏の記事は、なかなか読み応えがあった。サッカーの話題だけではなく、試合が開催される現地の周辺状況や、現地に行かなければわからないエピソードなど、スポーツジャーナリズムの鏡といってもいい内容だと思う。

サッカー評論家の中には、テレビ観戦だけしてあーだこーだ書いている人が少なくないが、それだったら私たちファンと同じ視点なので、それじゃ底が浅いだろう。

同じ試合を見るのでも、テレビでは部分を切り取られたダイジェストでしかなく、全体は見えない。カメラマンや編集者が興味を示した場面を選択しているので、そこにはバイアスがかかってしまう。現地で生観戦するのが、スポーツ記者や評論家の基本ではないか。

宇都宮氏は、レポートの最後に、私も危惧する今後のことを書いていた。

東アジアカップを終えて危惧すること日々是東亜杯2015(8月9日@武漢) – スポーツナビ

今大会でのハリルホジッチの采配に、まったく問題がなかったとは言わない。ただ、現時点で私が危惧しているのは、その采配ではなく、指揮官と世論とのギャップが必要以上に広がってしまうことである。そうしたギャップが原因で、これまでクラブや協会のトップ、さらにはメディアと衝突してはケンカ別れするということを彼は繰り返してきた。外国人監督に比較的寛容とされる日本でも、今大会の結果を受けて、そうしたリスクを排除できないことを私は密かに恐れている。日本代表を巡る困難な状況を立て直し、さらなる発展を臨むのであれば、性急に結果を求めるべきではない。

2015年、東アジアカップ

2015年、東アジアカップ

まったく同感。
就任5ヶ月くらいで、強いチームが作れるほど、代表監督の仕事は簡単ではないはずだ。ましてや、個のレベルが低い日本代表なのだ。このチームをたたき上げるのは、至難の業だ。
典型的な監督批判をしているのが武田氏。

武田修宏氏「ハリルジャパンに攻撃の形なし」

 これでハッキリしたのは、ハリルホジッチという監督は攻撃の形を持っていないということだよ。武藤雄の同点ゴールも、浦和でやっている形がそのまま出ただけ。監督の理想はどこにも見えないプレーだった。

この批判をする前提には、「監督の理想」とするサッカーが、選手に定着していることが必要だ。しかし、定着させる時間と練習をみっちりやったのかね?
たった数日、試合期間を含めても10日くらいで、初招集された選手達は監督の理想を体現できるほど完成度を高められたか?
無理だろう。

それができるには、選手達のレベルが相当に高くないといけない。招集された選手達のうち、代表レベルに達しているのはせいぜい4~5人。今後も代表に呼ばれるのは、もっと少ないかもしれない。
完成形になっていないチームに、監督の理想のサッカーができるわけがない。
武田氏が監督なら、それが可能だとでもいうのだろうか?

東アジアカップで勝つことを最優先で行くのなら、浦和のチームをそのまま持っていった方が無難だ。だが、それではACLと変わらないことになってしまう。サッカーはチームスポーツだから、チームとして成熟していないと連携も監督の戦術もうまくいかない。

Jリーグの選手だけで構成された今回の代表チームには、成熟度がなかった。
ワインに例えるなら、ブドウを摘み取って潰した段階だ。これから樽で発酵させ、瓶詰めして、冷暗所で寝かせる。果汁を絞っただけの段階で、「このワインは不味い。ワインになっていない」と批判することが、いかにナンセンスかということ。

プロスポーツは結果がすべてではある。
勝つことが至上命題であることは否定しない。しかし、日本代表は無敵ではないのだ。なんとか勝とうとあがいている、凡庸なチームなのだ。
選手達は、国内ではサッカーのエリートではあるが、世界のサッカー界では片田舎のエリートでしかない。世界という大都会に行けば、ただの田舎もので、平均よりも低いレベルの能力しかないことに気がつかされる。

それは大きなコンプレックスになる。選手達は口にしないが、世界との差でみじめになるくらい、強烈なコンプレックスなのではと想像する。コンプレックスは、プレッシャーにもなり、海外チームに対する苦手意識が根付いてしまう。メンタルの弱さは、そのへんに起因しているように思う。
海外チームに所属する日本人選手が、代表でもそれなりに戦力になるのは、彼らがコンプレックスを克服しているからだ。国内組と海外組との大きな違いはそこだ。

勝利にこだわるのは、スポーツとして当然だ。
だが、最終目標はどこにあるのか、その過程としてなにが必要か、ということも重要だ。
目先の勝利だけにこだわっていたら、最終目標には辿り着けなくなってしまう。

ハリル監督でW杯ベスト8以上に行けるほど、生やさしくはない。これからも紆余曲折はあるだろう。東アジアカップでの経験を糧にできないとしたら、そのことの方が問題で、東アジア4位という屈辱を、いかに晴らしていくか。監督も手探りだろうし、選手も手探りだろう。この苦悩、もどかしさ、不安を乗り越えた先に、大きな喜びが待っていると期待したいではないか。

監督批判をするなといってるのではない。
批判の仕方が間違っている。
だめだ、だめだといっているだけでは進歩がない。
徹底的な分析と、論理的なサッカー理論とでもいうべき提言が必要だ。

フィジカルを向上させるにはどうすればいいのか? そのためには日々の食生活から改善しなくてはいけないかもしれない。
視野を広くする、攻め方のアイデアを増やす、臨機応変な対応をする……と、口でいうのは簡単だが、そのためになにが必要なのか?
トレーニング方法の改善や、冷静な判断力を養うためにメンタルトレーニングをするとか、現代のスポーツは科学的に行われたりする。もくもくとピッチを走っていればいいのではない。

ひとつ、取り入れた方がいいと思うのは、英会話習得だろうね。日本人は、英語を話せないことで、外国人(欧米人)コンプレックスを持っているので、無意識に苦手意識がある。英語で文句をいわれたら、英語でいいかえすくらいの会話能力があれば、苦手意識はなくなると思う。

いずれにしても、ハリル監督の手腕を評価するには、少なくとも1年は観察する必要がある。代表チームにとっての1年は、クラブチームにとっての1ヶ月くらいの活動期間しかないが、そのくらいあれば、ある程度、ハリル監督のチームになっているのではと思う。

日本のメディアやサッカー評論家は、気が短すぎる。そんな簡単にチームを強化できるのなら、苦労はしないよ。日本代表は、出来の悪い問題児だというのを自覚することだ。
その問題児が、W杯で飛躍できたら、素晴らしいことじゃないか。それは極めて難しいミッションなんだ。

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