「『宇宙戦艦ヤマト』という時代」が未来にならなかった現実

LINEで送る
Pocket

1974年にされた「宇宙戦艦ヤマト
私は熱狂して見ていた。
まだ家庭用ビデオデッキがないだから、することはできず、音声だけをカセットテープに録音して、繰り返し聞いたものだ。

アニメの走りでもあり、ヤマト以前とヤマト以後でアニメを取り巻く環境は変わったともいえる。
一時代を築いた「宇宙戦艦ヤマト」ではあるが、その後の続編やリメイク版は、見てはいたが新しい要素が加えられてはいても、もはや古い時代の懐古的な作品にしか思えなかった。

その総集編となる「『宇宙戦艦ヤマト』という時代 西暦2202年の選択」が公開される。

「NHKスペシャル」を目指した「『宇宙戦艦ヤマト』という時代」 監修が明かす制作秘話 | ENCOUNT

不朽の名作アニメ「宇宙戦艦ヤマト」をリメイクした「宇宙戦艦ヤマト2199」と「宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち」を新たな切り口で再構成した特別総集編「『宇宙戦艦ヤマト』という時代 西暦2202年の選択」が11日から劇場上映される。本作の構成・監修・脚本を手掛ける福井晴敏氏と、脚本の皆川ゆか氏が、今、ヤマトが問いかけるものは何かを語った。

「『宇宙戦艦ヤマト』という時代」はリメイク版を単にまとめただけではない異色作だ。1969年のアポロ月面着陸から始まる宇宙開拓をスタートに、2199年イスカンダルへの大航海、2202年ガトランティス戦役に至るまで、「2202」を中心に、人類史・宇宙史に刻まれる歴戦をつづっていく。新作「宇宙戦艦ヤマト2205 新たなる旅立ち」(21年上映予定)の序章という役割もある。

『宇宙戦艦ヤマト』という時代の年表


Nスペ風に作ったというのは面白そうだが、たぶん劇場には行かないと思う。
劇場が限られているというのもあって、歩いて行ける近所の館(ユナイテッドシネマとしまえん)では公開予定がないのも理由。映画を観るために遠出するのは、けっこう面倒なんだ。
ネット配信されたら見るよ。

初代「宇宙戦艦ヤマト」に熱狂した一番の理由は、松本零士のキャラクターとだったからだ。
あの頃の松本零士は、絶頂期だったね。
その後に制作された宇宙戦艦ヤマトは、松本零士色がどんどん薄まってしまった。洗練されて新しくなっているのだが、松本氏独特の色気と毒気は削がれてしまった。古代進に名残はあるものの、森雪は美人ではあるが初代の面影は微塵もない。

ヤマトと対比されるは、続編を作るにあたってのスタンスがまったく違っていた。
ガンダムの新シリーズでは主役が世代交代をする。アムロは過去の人であり、新しい世代が物語を牽引する。
一方、ヤマトはリメイクということもあって、古代進と森雪がずっと物語の中心だ。子供達世代、孫世代と時代が先に進まない……というより進めない。ヤマトは古代進と森雪の物語だからだ。

ヤマトの世界では、ある一線より先の未来には進まない。
リメイクで時間軸は戻り、再びイスカンダルを目指す過程を繰り返す。ただし、同じ歴史の繰り返しではなく、設定は大きく変わる。紅一点だった森雪ではなくなり、女性クルーが増え、それにともなって恋愛関係のカップルが複数生じる。
メカのも刷新されて、松本零士風のアンチークなメカではなくなった。

そして、物語中の問題を解決するのは、ヤマトの単独行動なのは変わらずだ。キャラクターを立てるためには必要な設定ではあるが、ヤマトだけで敵に対峙するには、敵の方が圧倒的な戦力で、あまりに不利な状況。伝家の宝刀である波動砲で切り抜けるという安直さ。そのご都合主義に、むず痒くなってしまう。

同じキャラクターでリメイクされるということでは、「エヴァ」も同類だ。
エヴァも時間を巻き戻して、ちょっと違う時間軸を再演する。エヴァは、シンジとレイとアスカの物語だから、彼らの時間軸の中だけでしか物語は成立しない。彼らの子供達には引き継がれないんだ。

宇宙戦艦ヤマトは第二次大戦中の戦艦大和をベースにしている。沈没した大和を宇宙船に改造するのは荒唐無稽なのだが、ファンタジーとしてそれをやってしまう。それは懐古と戦艦大和に対する願望の表れなのだろう。
浮沈戦艦といわれた大和は、空爆であえなく撃沈。大艦巨砲が最高と考えられていた古い時代の象徴だった。その大和を宇宙戦艦として蘇らせたのは、古き良き日本の復活を意図したのかもしれない。

宇宙戦艦ヤマトは、未来を舞台にしながらも、古い時代の価値観を引きずっていた。
「愛」を唱えながらも、敵を殺すことでしか問題を解決できない。
それはガンダムも同じ。
戦争娯楽作品という位置づけでいえば、ヤマトもガンダムも戦争することが必然だ。
話し合いによる和平交渉や、戦争を避けるための試みがないわけではないが、結局は戦いを始めてしまう。ある意味、それはリアルの世界の反映でもある。

脚本の福井晴敏氏は、ガンダムシリーズにも関わっているので、福井氏の描くヤマトにはガンダム的なエッセンスが加えられている。そこが新しいといえばそうなのだが、ヤマトの呪縛を解き放つほどには強くない。

結局、初代ヤマトに戻ってしまうのだ。
今見ると、技術的に拙い部分は散見されるが、当時の“熱”というか“勢い”は感じられる。
リメイク版では、映像が綺麗になり、メカはCGで描かれているからクオリティは高い。しかし、リメイクは所詮リメイクである。

実際の宇宙開発の歴史と、ヤマトの歴史をシンクロさせているのだが、宇宙戦艦ヤマトは私たちの未来にはつながらない、私たちとは違う道に進んだ未来の物語なのだろう。

私にとっての宇宙戦艦ヤマトは、1974年にある。
リメイクは蛇足なんだよね。
それでも見てしまうのが、ファンの悲しいサガでもあるのだが……。

(Visited 43 times, 1 visits today)