【サッカー】五輪、感動と失望の終戦

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ロンドンオリンピック

スペイン戦、前半34分、先制ゴールを決めた大津(7)に駆けよって喜ぶ吉田(5)、酒井宏(4)、清武(17)、東(10)

オリンピックはまだ続いているが、サッカーファンにとっては、終わった。

女子は感動、男子は失望の終戦となった。

深夜の時間の試合を見るため、仕事から帰宅後、飯を食ったら眠って試合開始前に起きて見た。
試合が終わったら、そのまま起きていて出勤……という、不規則かつハードな日々だった。睡眠時間は4時間くらいで寝不足だった。
応援していたし、勝ったときの喜びを味わいたいがために、期待を持って観戦していた。

女子は順当に勝ち進み、目論見どおり決勝まで進んだ。
危なっかしい試合もあったが、勝ち進むためにはどういう戦い方をするかという「計算」が成り立っていたのが、なでしこジャパンだった。

彼女たちが勝つためのサッカーをしていたのはもとより、マネージメントが見事だった。
そういう計算を立てられるチームだったことが、素晴らしかった。

決勝で勝てなかったのは残念だったが、負けてもこれほど晴れ晴れと感動できるなんていうのも、そうそうあることじゃない。
選手達もやりきったことの充実感を語っていた。
それは、見ている方も同様だった。
だから、讃えられる。

一方、男子。
私の戦前の予想というか期待は、グループリーグを突破できれば御の字だった。
その期待は、スペインに勝つという金星を含めて、期待以上のものだった。

ベスト4まで勝ち残り、準決勝まで駒を進めて、決勝まで残れるかも……という期待を抱かせたが、メキシコ戦では疲労がピークになっていたようで、後半では運動量が激減してしまった。そう、大会前のニュージーランド戦の状態まで戻ってしまったのだ。
パスが遅い、フォローが遅い、判断が遅い……と、すべてが遅くなっていた。

スペイン戦に勝ったとき、会社のサッカー好きの同僚と話をしていたのだが、
「勝ったのは素晴らしいけど、あの戦い方では決勝までもたないよ」

90分間全力で走り続けるのが、日本の戦い方になっているが、これはU-23もA代表も基本的には同じ。しかし、スペイン戦のような戦い方は、連戦を続けるときには決勝まで維持できないのは明白。初戦が大事なのはたしかだが、日本はピークを初戦に持ってきていた。
つまり、決勝まで勝ち進むための戦い方ではなかったのだ。

オリンピックは中2日だったが、W杯では中4~5日と若干間は開くものの、それでも初戦から決勝まで同じスピードで走り続けることは無理だろう。
男子の場合、決勝まで勝ち進むための戦い方が計算できないのが、最大の弱点かもしれない。全試合、全力で必死に、フルパワーで戦わないと、先に進めない。ある意味、後先考えずに突っ走るしかない戦い方だ。

それは「運」しだいの戦い方でもある。
今回のU-23には、運が味方した。
しかし、その運もメキシコ戦の前半で使い果たしてしまったようだ。

昨晩……というか今朝だが、銅メダルをかけた韓国戦は、見るも無惨な試合だった。
もはや、体力も気力も運も尽きて、なすすべがなかった印象だ。

ベスト4まで残ったのは快挙ではあるのだが、最後が罰ゲームのような韓国戦で、惨敗。
それまでの賞賛が、チャラになってしまうような負け方だった。

大きな失望だ。

日本チームは、先制点を取れれば波に乗っていけるが、相手に先に取られると、とたんに冷静さを失い焦りが如実に出てしまう。取り返すだけの余力がなくなってしまう。

これは、若い彼らだけでなく、A代表にもいえること。
基本、先制逃げ切りタイプだ。
リードされたときの、反撃の戦い方が徹底されていない。

そのことはメキシコ戦後の彼らのコメントにも出ていた。

清武弘嗣「まだメダルを取るチャンスはある」=U-23メキシコ戦後コメント(スポーツナビ) – ロンドンオリンピック Yahoo!スポーツ×スポーツナビ

(終盤リードを許したことで焦りが出たか?)焦りはなかったですけど、2点目を取られて(今大会)初めてリードされたということもあって、どういう攻撃をするのか、どこまでバランスを崩して攻めるのか、そういった意思統一が足りなかった。迷った部分があった。

リードされたら、パワー プレイで前線に放り込んでいくしかなかろう。女子のアメリカが、カナダ戦で何度も追いついたように、ペナルティエリア内に入っていかなければ、逆転のチャンスはない。

だが、日本は後方でパスを回すばかりで、ボールが前に行かない。長身の杉本を投入してもなお、パスでつないでいこうとする。結果、途中でインターセプトされて逆襲に遭う。

自分たちが先制点を取って攻めるときと、リードされているときの攻め方は切り替えるべきじゃないのか。リードされたときの、攻め方のシミュレーションがないんだと思う。

もっとも、前線に放り込んでも、それを個の力でシュートまで持ち込めるFWがいないと、無理な相談ではあるのだが。ワンバックやモーガンのような選手が、日本には乏しい。

加えて、リザーブの選手が、途中交代で結果が残せず、ジョーカーになれなかった。
一番の誤算は、宇佐美だろう。

トゥーロン国際大会では、それなりに存在感を示していたが、オリンピック本大会ではリザーブに甘んじ、途中から出てきてもコンディションが悪いのか、キレが悪く再三ボールを失っていた。彼がフリーキックで1点でも取っていれば、もっと違っていたのかもしれないが、見せ場がなかった。

ともあれ、終戦だ。
収穫もあったが失望もあった。
敗戦から学ぶことも多いが、それは反省ばかりである。
勝って得るものの方が多い。

アジアでは日本は強い立場にいるが、全世界の国際大会では、日本は負けることの方が多いのが現状なのだから、敗戦からの反省材料はありすぎるくらいある。
勝つことで、勝ち方を身につけることが必要だろう。

リードされても、逆転できるだけのメンタリティとパワーを持つこと。
誰かが言っていた言葉。

強いものが勝つのではない、勝ったものが強いのだ。

そう、勝ってこそ得るものがある。
それが勝敗のあるスポーツなのだから。

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