電子ブックの個人出版は特定商取引法の適用対象か?


私の電子ブックを、「パブー」を介して販売しているのだが……。
そのパブーから、以下のような案内メールが来た。

電子書籍を販売されている皆様へ

平素より格別のご愛顧を賜り、誠に有難うございます。
「パブー」において有料の電子書籍を販売されている著者様へ
お知らせとお願いをいたします。

特定商取引法において、通信販売を行う者は法により定められている
記載事項をサイト上に表記する必要がございます。
これは法人だけでなく個人であっても、営利の目的を持って、
反復継続して取引を行う限り、必要となるものです。

よって、無料の電子書籍のみを配信している場合は対象外となりますが、
販売実績がなかったとしても有料の電子書籍を配信している場合は対象となります。

つきましては、パブーにおいて有料の電子書籍を配信している
著者様におかれましては、プロフィールの自己紹介欄に、下記の記載例を
参考にして“特定商取引法に基づく表示”の記載をお願いいたします。

んんん?
それはちょっと違うんじゃないか?……と思った。

この論法でいくと、プロ作家が電子ブックを販売する場合にも、作家の連絡先や本名を記載しないといけなくなる。
だが、プロ作家がそんなことをしているという話は聞いたことがないし、実際にしてはいない。

パブーで電子ブックを売っているのは、大部分が本業のプロではない作家。
ただ、価格を付けて売っているので、プロの線引きは難しいが、職業作家として書くことで食っていないのは、アマチュアもしくはセミプロだろう。
以下、個人出版をしている人を「アマ作家」と呼称する。

アマ作家は特定商取引法の適用対象だが、プロ作家は適用対象ではない……というのも、おかしな理屈だ。

もっといえば、通販で売られているあらゆる商品の生産者、製造者の連絡先も記載しないといけないことになる。そんなことをしている通販サイトは、見たことがない。
たとえば、タブレットの製造には、最終製品を作ったメーカーだけでなく、様々な部品を提供している会社がある。それらのメーカーのすべての連絡先を記載しなければいけないのだろうか?

Amazonでも個人出版が可能だが、販売されている個人出版の電子ブックには、特定商取引法に基ずく販売者(ここでは著者)の連絡先等の表示はされていない。
販売しているのはAmazonであって、著者本人が直接的に販売し決済しているわけではないからだ。

販売のプラットフォームということでは、パブーも同等のはずだ。
ちなみに、Amazonで売っている私の電子ブックは、パブー経由での販売だ。

で、いろいろと調べてみた。
資料は、「特定商取引法に基づく表示について」にある。

事例として、関連しているのはインターネット・オークションだと思われる。オークションは個人が商品を出品するのが基本だからだ。

インターネット・オークションにおける「販売業者」に係るガイドライン』には、以下の記述がある。

インターネット・オークションは、これまで消費者でしかなかった個人が容易に販売業者になることができるというシステムであるが、個人であっても販売業者に該当する場合には、特定商取引法の規制対象となることに注意が必要である。

(1)すべてのカテゴリー・商品について
インターネット・オークションでは、個人が不要品や趣味の収集物等を多数販売するという実態を考慮する必要があるが、例えば、以下の場合には、特別の事情がある場合を除き、営利の意思を持って反復継続して取引を行う者として販売業者に該当すると考えられる。但し、これらを下回っていれば販売業者でないとは限らない。商品の種類によっても異なるが、一般に、特に、メーカー、型番等が全く同一の新品の商品を複数出品している場合は、販売業者に該当する可能性が高いことに留意すべきである。

  1. 過去1ヶ月に200点以上又は一時点において100点以上の商品を新規出品している場合
    但し、トレーディングカード、、中古音楽CD、アイドル写真等、趣味の収集物を処分・交換する目的で出品する場合は、この限りではない。
  2. 落札額の合計が過去1ヶ月に100万円以上である場合
    但し、、絵画、骨董品、ピアノ等の高額商品であって1点で100万円を超えるものについては、同時に出品している他の物品の種類や数等の出品態様等を併せて総合的に判断される。
  3. 落札額の合計が過去1年間に1,000万円以上である場合

この事例を電子ブックに当てはめると、100点以上の電子ブック、月に100万円以上の売上がなければ、特定商取引法の規制対象にはならないのではないか?

そもそも、アマ作家は作品をパブーに提供しているのであって、購入者に直接販売しているわけではない。パブーが販売を代行していて、決済からダウンロード、顧客管理の一切をパブーが管理している。
パブーは販売作品から手数料を取り、それを収益としている。著者は商取引には関与していないのだ。

私はストックフォトの販売も行っているが、データを販売するということでは、電子ブックと同等だ。
しかし、ストックフォト会社から、特定商取引法に基ずく販売者(撮影者)の情報提示を求められたことはないし、情報として明示もされていない。著作権表示のところに、©YUTAKA ISAYAMA と表記されるだけだ。

ストックフォトでは、作品を提供する撮影者は、ストックフォト会社にとっては商品の仕入れ先であり、販売の権利を有するのはストックフォト会社だからだろう。
つまり、作品の提供者とストックフォト会社との間で取り引きはあっても、写真を購入するユーザーと作品提供者との間での取り引きではないといえる。

パブーでの電子ブック販売も同様ではないだろうか?
オークションでは、出品者と落札者の間で、直接的な取り引きはあるが、パブーの電子ブックの販売では著作者は販売には関与していない。
したがって、著者と購入者の間で、直接的な取り引きは成立していないのだ。

パブーを介さず、自分のサイトで直接販売するのであれば、特定商取引法の適用対象になることは合点がいく。顧客と商取引を直接行うことになるからだ。

問題は、パブーやAmazonのプラットフォームを利用する場合だ。

これは法律の解釈と適用できるかどうかの話なので、経産省や法律の専門家の見解を伺いたい。

とりあえず、疑問に思ったので、ここに問題提起しておく。

LINEで送る
Pocket
LinkedIn にシェア