「経営者もルールを守ろう」に関連した話。
時期を同じくして、別の著者による似たような記事が出てくることが多い。それだけ関心を集めている話題だということだろう。
著者が違うから、同じテーマでも視点や論点は異なる。
「社員の不正」を止める社長の責任 / SAFETY JAPAN [小山 昇氏] / 日経BP社
社員の不正で頭を悩ましている会社も多いと思います。少数の備品の持ち出しといったかわいらしいものから、接待費の水増しや売り上げの横領、帳簿操作による着服といった、はっきりと「犯罪」のレベルまで。組織にゆるみが大きくなるほど、こうした不正の数も増えます。
小山氏の方が、松村氏の記事よりも「正論」だ。なにより、バランス感覚がある。一方的に不正を働く社員を責めるだけではなく、経営者にも一定の責任があるのだという主張は素晴らしい。きっと、小山氏の会社は労働環境としても優れているのだろう。
消しゴム1個を社内からくすねても不正であり犯罪だが、同様に15分でもただ働きさせるのは労働者の時間と賃金をくすねる経営者の犯罪だろう。
ところが、大部分の経営者は、サービス残業が労基法違反であり刑罰もある(軽い刑罰だが)犯罪であるという自覚がまるでない。
消しゴム1個に目くじらを立てるのに、無給の残業は当たり前だと思っている。サービス残業が常態化している会社、官公庁、学校で、ニュースになるような大きな不正や不祥事が起きるのは必然ではないかと思う。トップに労基法を守る意識がないのだから、その下で働くものが不正を働くのも無理からぬことだろう。
残業代はもらってないのだから、このくらいくすねてもいいじゃないか……という、その気持ちはわからないでもない。
私は現在勤めている会社を含めて、5つの会社で働いてきたが、きちんと残業代を出してくれたのは1社だけだ。妻も過去に6社に勤めているが、サービス残業がなかった会社はない。友人たちの話を聞いても、残業代を厳密に満額もらっている人は皆無だった。多かれ少なかれサービス残業をしているのだ。
まともな会社、経営者というのは、希少な存在だともいえる。
コンプライアンスを掲げて、会社や官公庁としてのイメージアップを図ることが盛んに行われているが、そんな職場ではサービス残業はないのだろうか?……と疑問に思ってしまう。
サービス残業は犯罪である。
そのことを経営者は自覚すべきだ。