「平等と自由」は理想的な社会の基本であり目標でもあるが、現実問題として平等も自由も限定的だ。
理想として考えられているということは、逆説的には「平等と自由」は成立していないともいえる。
昨今、経済的な「格差」が問題になったりするが、それは「平和の代償」とする説がある。
格差社会は「平和の代償」という不都合な真実 | マネーポストWEB
「皮肉なことに、格差は、社会が平和で安定しているからこそ拡大しいきます。資産は複利で増えていきますから、毎月の余裕資金を株式などに積み立てていけば、30年、40年後には大きな資産を形成できます。それに対して、毎月稼いだ分をすべて生活費に使ってしまえば、いつでまでたっても銀行口座の残高は増えません。これを2世代、3世代と繰り返せば、両者の『経済格差』はとてつもなく大きなものになるでしょう。これが、平和な社会が『上級国民(富裕層)』と『下級国民(貧困層)』に分断されるメカニズムです」
(中略)
「シャイデルはこの大著で、人類史に平等をもたらした4人の『騎士』を取り上げています。それは『戦争』『革命』『(統治の)崩壊』『疫病』です。二度の世界大戦やロシア革命、文化大革命、黒死病(ペスト)の蔓延のような『とてつもなくヒドいこと』が起きると、それまでの統治構造は崩壊し、権力者や富裕層は富を失い、平等が実現するのです。
(中略)
これが正しいとするならば、『いかなる犠牲を払っても平等な世界を実現しなければならない』と主張するひとは、その前にまず社会全体を“破壊”しなければなりません。シャイデルによれば、そのもっとも効果的な手段は核戦争です」
記事の結末が大胆というか衝撃的だ。
だが、このシナリオは「地球を食べ尽くす日が来たら……」で書いたことにも通じる。
環境問題や人口問題、そして格差問題を解決するには、地球をリセットするしかない……ということか。ようするに、人間は自分たちが思っているほど賢くはないのだ。残念ながら。
度々書いていることだが、経済的な平等というのは、人口が多くなるほど不可能になる。富の量が有限であるため、100の富を100人で分ける場合は百分の1,1000人で分けると千分の1になる。人数が増えるほどに、平等に分けたらみんなが貧乏になってしまう。それを目指したのが社会主義だったが、貧乏は嫌だと特権階級ができた。
人間に欲望がある限り、より多くの富を欲する。誰もが欲すると、奪い合いになる。
それが格差の元凶。
平等に分けあうことができるのは、人数の少ない集団の中だけだろう。人数が多くなるほどに、ひとり当たりの分け前は減る。あるしきい値を超えた集団にとって、平等と貧しさは同義語になる。
記事中にもあるが、終戦直後の日本は大部分の人が貧しく、経済的に低いレベルで格差が小さく、擬似的な平等状態にあった。その疑似平等状態のまま底上げされたのが高度成長時代。
しかし、その後、格差が広がり始めたのは、生み出される富が上限に近づいたことと、人口増加によって分配の分母が増えてしまったからだ。1億人の国民のすべてが、1億円の年収を得られるほど、富の総量は多くない。
2019年7月のマネーストックの合計は、1365兆3000億円。
これを1億人で平等に分配すると……
1365兆3000億円÷1億人=1365万3000円
……となる。
平等に分配すると、億万長者の金持ちは存在できない。金持ちが存在するためには、多数の貧乏人の存在が前提となる。
格差とは、有限の富の奪い合いの結果だ。
平等をもたらした4人の『騎士』……『戦争』『革命』『(統治の)崩壊』『疫病』
4つの要素のうち、3つは戦争絡み。つまり、社会システムの破壊が、富の生産・維持システムをも壊すため、富裕層が減る。同時に人口も減るため、富の分配システムは格差が小さい方で機能するということになる。
格差の是正を訴える某政党は、社会を破壊しろといっていることになる。
豊かさとは、年収がどれだけあればいいのか明確にされていないが、1365万3000円というのがひとつの目安ではあるだろう。
国民が等しくこれだけの収入を得るには、プロ野球選手も大手企業の社長も有名俳優も、年収の上限が1365万3000円になる必要がある。
そんなことが可能か?
まず無理だよね。資本主義経済の中では。
あらゆるものの価値をお金に換算する社会では、格差のない平等は幻想だ。
平等世界のための核戦争か。
意味深だね。
しかし、核戦争後に訪れる平等世界も、束の間なのだろう。人々が欲望を満たすために突き進めば、結局は元の木阿弥。
▼「ターミネーター2」の核爆発シーン
「ターミネーター2」のこのシーンは象徴的だ。
これによって都市も社会システムも破壊され、築き上げた富も破壊された。生き残った人々は路頭に迷い、豊かさとは無縁の生活を強いられることになったが、みんなが貧しいということでは平等に近い。
核戦争によらない解決方法を見いだせるほど、人類は賢くなれるだろうか?