メタのメタバースの成果は期待外れ?

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 Meta社のメタバースについては、ネガティブな記事が多く見られるようになっている。期待の裏返しともいえるが、期待値に対して成果が著しく低いからでもあるのだろう。
 普及には何年もかかる……とはいうものの、変化の激しいIT業界で猶予はどれくらいだろうか?

米メタのメタバース、成果は期待外れ 社内文書 – WSJ

マーク・ザッカーバーグ氏が、会社の軸足を仮想空間「メタバース」に移行することを目指し、社名をフェイスブックからメタ・プラットフォームズに変更してから約1年がたった。しかし、技術上の問題やユーザーの関心の低さ、成功に必要な要素の不明確さなどにより、同社が移行に苦戦していることが社内文書で明らかになった。

 ザッカーバーグ氏は、より没入感のあるオンライン体験へのシフトには数年かかると述べているものの、消費者向けメタバースの主力製品となる「Horizon Worlds(ホライズン・ワールド)」は社内の期待に応える成果を上げていない。

 メタは当初、ホライズン・ワールドの月間アクティブユーザー(MAU)を2022年内に50万人に増やすことを目標に掲げていたが、最近その目標を28万人に下方修正した。社内文書によると、現在のMAUは20万人に満たない。

 ホライズンを訪れた人の大半が最初の1カ月を過ぎるとおおむねアプリを使うのをやめており、ユーザー数は春以降、減少し続けている。従業員の内部メモを含む社内文書で明らかになった。

 一方、フェイスブック、インスタグラム、ワッツアップで構成されるメタのソーシャルメディア製品はMAUが合わせて35億人と、世界の人口のほぼ半数に相当する。

 ホライズンは、ユーザーがアバター(分身)を用いて買い物やパーティー、仕事などができる双方向型のさまざまな仮想世界を提供するアプリだ。しかし、「Hot Girl Summer Rooftop Pool Party(イカした女の子の真夏の屋上プールパーティー)」と題した空間にはほとんど女の子がおらず、「Murder Village(殺人村)」という名のゲーム空間には殺す相手が誰もいないことが多い。同社が目玉とする仮想のたまり場「Questy’s(クエスティーズ)」さえも、大抵閑散としている。

 同社の社内データによると、クリエーターが構築した仮想世界のうち50人以上が訪れたものは全体のわずか9%にとどまる。ほとんどは訪問者がゼロだ。

 「がらんとした世界は悲しい世界だ」。社内文書の一つは、ユーザーを集わせて出会いの場を作ろうとする同社の取り組みについて、こう要約している。

Questy’s(クエスティーズ)

仮想のたまり場「Questy’s(クエスティーズ)」は多くのユーザーを引きつけられていない

(中略)

 メタは初期のメタバース関連製品を取りやめるか延期している。現・元従業員によると、ホライズンをゲームを中心としたものにすべきか、ザッカーバーグ氏が望む通り交流に重点を置いたものにすべきかについて、社内で意見が割れているという。

(中略)

 ユーザーの多くが不満を感じている問題はもう一つある。メタバースでどう収益を得るかだ。

 TikTok(ティックトック)やメタ傘下のインスタグラムなどのソーシャルメディアプラットフォームでは、インフルエンサーやクリエーターは主にブランドの宣伝を通じてお金を稼ぐことができる。メタバースには同様の仕組みはまだない。

 「クリエーターの中には、メタバースで本格的に働きたいと考えている人たちもいる」。社内メモにはこう書かれている。「適切な報酬のフルタイム職があれば、メタバースの構築を正規の仕事にする人も出てくるだろう」

 メタは、一部の仮想世界については、その責任者に報奨金を支払うことで支援しているが、他の形態の商取引を推進する取り組みはまだ初期の段階だ。社内文書によると、ホライズンで最も実入りがいいのは「世界内課金」だが、その売り上げは累計1万ドルで、クリエーターへの投げ銭機能による売り上げは合計470ドルにとどまる。

 アクティブユーザーの少なさが、うまくいってない元凶ではある。なぜ少ないかというと、高価なヘッドセット(ゴーグル)や最新のPC環境が必要だったり、技術的な難しさだったりの敷居の高さがある。
 また、1か月で飽きられてしまうのは、虜にする魅力が乏しいためだ。
 それは大きすぎる期待に対して、期待を裏切ってしまっているからだろう。

 この過程については既視感がある。
 インターネットが一般化する前の、パソコン通信の時代に似ている。当時のPCのスペックは低く、通信速度も今と比べたら桁違いに遅く通信料金は高かった。
 パソコン通信はマニアックな世界だった。いくつかの提供会社があったが、NIFTY-ServeとPC-VANが2強で、他の弱小会社のパソコン通信は閑古鳥が鳴いていた。ピーク時の1996年にはそれぞれ会員数200万人に達した。
 ……がしかし、たったの200万人だ。現在のSNSユーザーの数と比べれば、いかに少なかったかがわかる。少なくても収益を上げていたのは、有料サービスだったからだ。

 このパソコン通信が、のちのインターネット時代の楚になった。パソコン通信時代は、通信回線の容量が小さかったので、大きなファイルの送信はできなかったため、テキスト主体の環境だった。テキストだけの掲示板やチャットが主流だ。
 現在のSNSでも、テキストが中心になっているのは、テキストはデータが軽いからだ。昔を知っているものにとっては、TwitterやLINEはチャットの発展型であって、画像や動画を送信できる通信環境になったから可能になっているだけ。やってることは、今も昔も大差ない。

 で、現在のメタバースは、かつてのパソコン通信時代に相当する。
 パソコン通信の衰退とインターネットの発展はクロスフェードしていて、前者が衰退し消滅することでインターネットは爆発的に進歩した。
 SNSやネット配信が普及したのは、モデムの高速化や光ファイバーが世界中に引かれたからこそ可能になった。
 このへんは生物の絶滅と進化にも似ていて、前時代の覇者が絶滅することで新時代の種が繁栄する。
 そういう意味では、現在のメタバースは一度絶滅して、新たな技術革新と共に「シン・メタバース」が勃興すると想像する。

 Meta社の中でも、ゲーム路線かコミュニケーション路線かで意見が割れたというが、とっつきやすさからいえばゲーム路線がいいとは思う。メタバースゲームで大ヒット作を作れば、参加する人は増えるだろうし、認知度も上がる。
 「アバターでコミュニケーションしましょう」……なんていわれても、世の中は善人ばかりではないので、不愉快なことは起こるものだ。引用部分には入れていないが、そういうレポートも書かれている。

「ザッカーバーグ氏は、より没入感のあるオンライン体験へのシフトには数年かかると述べている」……というが、株主や投資家やユーザーは何年待てるだろうか?
 そこが問題だろうね。

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