サンドマン | Netflix

LINEで送る
Pocket

 2022年8月5日から配信が始まっていた「サンドマン」を見た。
 DCコミックスが原作だが、いわゆるヒーローものとは違うドラマになっている。なかなか面白い切り口の作品だ。

「サンドマン」を観るべき5つの理由|シネマトゥデイ

ニール・ゲイマンの名作コミックをドラマ化した「サンドマン」がNetflixで配信中。ポスターとあらすじだけでは、よくあるダークファンタジーと間違えてしまいそうな本作は、実はかなりユニークな大人向き作品。今、「サンドマン」を観るべき理由が5つある。

理由1:普通のダークファンタジーとは一味違う!?

 主人公の名は“ドリーム(夢)”。彼には“デス(死)”という姉がいて、両性具有の弟/妹“ディザイア(欲望)”と、その双生児の妹“ディスペア(絶望)”がいる。原作コミックには、ディスティニー(運命)、ディストラクション(破壊)、デリリウム(錯乱)も登場する。彼らは“エンドレス(終わりなき者)”と呼ばれ、人間と同じような姿をして、人間の世界を歩き回り、人間と接触することもある……というのが、このドラマの基本設定。人間と密接に結びついた“抽象概念”を擬人化し、彼らと人間が接触して生まれるドラマを通して、人間にとって“夢”とは何か、“死”とは何か、という深淵なテーマを考察していく。本作はそんな大人向けの物語なのだ。

サンドマン

サンドマン

 Wikipediaの「サンドマン」のページは、(2022年9月3日現在)情報が更新されていなかったので、シーズン1の各話タイトル等の情報を転載しておく。

シーズン1・全11話のタイトルとあらすじ(Netflixの公式サイトより

  1. 安眠(54分)
    目覚めの世界で、逃げ出した悪夢を追っていたモルフェウス。だがその途中で彼は、デスを召喚して拘束しようとたくらむ魔術師ロデリック・バージェスの餌食になってしまう。
  2. 不完全な者たち(38分)
    自身の力が宿る3つの道具、小袋に入った砂、ルビー、ヘルム(かぶと)を取り戻す旅を始めたモルフェウスは、相克関係で知られるある兄弟のもとを訪れる。
  3. わたしを夢見て(46分)
    自分の砂を手にした最後の人物の居場所を突き止めたモルフェウスは、図らずも慈悲を施すことを覚える。息子に会いに行くエセル。
  4. 地獄にある希望(45分)
    ヘルムの在りかに関する手掛かりをつかんだモルフェウスは、ルシファーとの接見を求めることに。混乱するジョンに、心優しい見知らぬ人物が救いの手を差し伸べる。
  5. 24/7(54分)
    不意を突かれるモルフェウス。ダイナーでくつろぐジョンは、真実とウソに対する持論を証明するため、その場にいた人々を残酷なやり方で試し始める。
  6. 翼の音(53分)
    虚無感にさいなまれるなか、精力的に務めを果たす姉に同行したモルフェウスは、彼女から数々の助言を与えられ、古い知り合いに会うことを勧められる。
  7. ドールハウス(49分)
    モルフェウスは、ルシエンから気になる報告を受ける。家族を捜すローズ・ウォーカー。コリント人の仕業を崇拝する者たちが、彼の気を引こうとあるたくらみを抱く。
  8. ごっこ遊び(50分)
    行方がわからない創造物のひとつに近づいていくモルフェウス。必死に弟を捜すローズは、無意識のうちに友人の夢を実現させてしまう。
  9. コレクター(49分)
    珍しい現象がドリーミング(夢界)を揺るがす。ローズは、友達になったばかりの人物とロードトリップに出る。不気味な集会にゲストを連れて参加するコリント人。
  10. 失われた心(46分)
    夢の渦の力が増し、領域を隔てる壁が弱まっていくなか、ローズは苦渋の決断を迫られる。コリント人と対峙(たいじ)するモルフェウス。
  11. 1000匹の猫の夢/カリオペー(64分)
    新しい世界を夢見るシャム猫と、小説のアイデアを切望する作家。モルフェウスと出会ったものたちの2つの物語。

 1話が45分程度だが、38分〜64分と幅がある。厳密な時間に縛られないのが、ネット配信ならでは。テレビ放映だと時間枠が決まっているから、各話の誤差は少なくなる。

 全体としてはつながりのあるストーリーではあるが、第5話以降は1話完結的な展開になっている。
 第1話〜4話までは、ドリーム(モルフェウス)が人間に捕らえられ、大切な道具(日本的にいえば神器)を奪われ、自由と道具を取り戻す展開。物語としてはストレートだ。
 しかし、道具を早々に取り返してしまったので、物語は別の方向に向かう。
 そして、サンドマンの面白さを発揮するのは、第5話以降だといえる。

 全11話の中で、最高傑作が第6話の「翼の音」だろう。
 ドリームが、姉で死神のデスに同行して、死を迎えた人々の魂を導くシーンは、思わず涙を誘う。
 その後、時代は数百年前に遡る。ある酒場で、死にたくないという男に対して、ドリームは永遠の命を与える。そして、100年に一度、その男と会って話をする約束をする。
 100年後、200年後……500年後と、ドリームと男は酒場で会い続けた。
 その最後(物語上の現在)の会談でのシーンが、微笑ましくグッときた。
 生と死についての、深淵ともいえる問いかけの、ひとつの答えを見た気がした。

 ドリームは夢(眠っているときに見る夢)の王国の王なのだが、神でもある。
 とはいうものの、あまりにも頼りない、思慮に欠ける神でもあり、ドリームが成長していく物語にもなっている。それは少年が大人になっていく過程のようだ。
 不滅の存在でありながらも、未熟な神というギャップが物語を面白くしている。

 ジャンルとしてはダークファンタジーに入るが、夢という心の内面を舞台にしたファンタジーだ。
 ドリームを演じるトム・スターリッジの独特な風貌もあって、奇妙で不思議な世界観を作りだしている。

 シーズン2の正式発表はされていないようだが、制作陣はシナリオの執筆を始めているそうだ。
 期待したい。

(Visited 206 times, 1 visits today)