謝罪の言葉から見える、その人の本音

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貧乏人が行ってはいけないレストラン?」の続き。

ブーイングを浴びた高級レストランのシェフが、謝罪したらしい。
その謝罪の言葉には、本音が透けて見える。

ゲンダイネット

「年収300万円、400万円の人にはわからない」などと発言し、「何サマなんだ!」と大ブーイングを浴びていた“イケメンシェフ”川越達也氏(40)が、ついに白旗だ。

17日朝に放送された情報番組「とくダネ!」(フジテレビ)の取材に答え、「本当に申し訳ない気持ちでいっぱい。僕の中で一般的なお客様の層を表現した言葉があの形になった。数字で表現したことは誤解を招いた。本当に申し訳なかった」「僕が生意気でした」と謝罪した。

川越達也氏

川越達也氏

この言葉は、謝罪しているようで、じつのところなにを謝罪しているのかがよくわからない。記事は言葉を抽出しているだろうから、全文ではないと思うが、出ている言葉を追ってみよう。

本当に申し訳ない気持ちでいっぱい。
誰に対して、何に対して、申し訳ないといっているのだろう?
主語がないんだ。
「申し訳ない」とは……
申訳無い とは – コトバンク

言い訳のしようがない。弁解の余地がない。相手にわびるときに言う語。「世間に対し―・い気持ちで一杯だ」「不始末をしでかして―・い」
相手に無理な依頼ごとをして、すまないという気持ちを表す語。「―・いが、あしたにしてもらいたい」

……ということなのだが、謝罪の言葉の中では言い訳しているし、謝罪する相手を特定していない。だから、「申し訳ない」という言葉自体が矛盾している。

一般的なお客様の層を表現した言葉
これまた不可解な表現だ。
(A)彼のお店に来る客層のことなのか、(B)世間一般の顧客層のことをいっているのかがわからない。

(A)だとすると、そもそも低所得者層を顧客層として考えているのなら、批判の元となった発言をすること自体がおかしい。高級店のなんたるかをわからない人が大半なのだから、批判されることは予測できるはずだ。

(B)だとすると、世間一般は低所得者層ばかりだといっていることになる。前の記事で、サラリーマンの階層別年収分布を示したが、それは間違いではない。間違いではないのだから、このことについて謝罪する必要はないように思う。

数字で表現したことは誤解を招いた
数字でなければよかったのか?

数字でなければ「低所得者層」というのか「貧乏人」というのか、どういう表現を使うのかわからないが、数字でなければ誤解をされなかった……とも思えない。
誤解だというのなら、誤解でない意図はなんなのかの説明がない。

また、「誤解を招いた」といっているのであって、間違ったことはいっていないということでもある。持論を撤回しているのではない。

僕が生意気でした
自虐的な姿勢を示すことで反省の弁とするのは、日本人的な謝罪の方法だが、これは地雷でもある。彼のキャラクターは、上から目線の厳しい批評で料理や食品を評価することではなかったか? ファミレスやコンビニの料理を、歯に衣着せぬ評価でぶった切ってきた。それは自信とプライドと地位があるからであり、生意気であることを許される立場にいたからだろう。

その自分を否定することは、今後、上から目線の厳しい意見はいえなくなるかもしれない。
生意気なら生意気の姿勢を貫いた方がよい。

マスメディアに露出を続ける限り、たぶん、また批判されるような発言をしてしまう。問題発言をする人は、なかば無意識に言葉を吐いてしまうので、たびたび批判を浴びる。そうなったとき、生意気であることを反省したことが地雷になる。「あの謝罪は、やっぱりうわべだけだったんだな」と。

彼の謝罪は、批判の嵐を治めるための手段のひとつなのだろう。
批判が起こったときの対処方法としては、3つ。
(1)謝罪して、低姿勢を見せる。
(2)批判には批判を返し、まっこうから対決する。
(3)無視する。

彼は(1)を選択したが、今後も批判は起きうる。リスクマネージメントとしては、あまり良い方法ではないように思う。前の記事にも書いたように、高級店なのだから、会員制にするなどして高所得者層に特化した経営にした方がいい。客を選べってこと。

(2)を選択するのなら、徹底的に対決すればよい。大阪市長の橋下氏はこの手法だね。話題を集めるということでは、効果的な方法ではある。

著名人がマスメディアを通して謝罪することはよくあるが、たいていは謝罪が謝罪になっていない。謝罪というより自己弁護になっていることが多い。
謝罪するときの言葉や文法をよく練らないと、人の心に響く謝罪にはならないものだ。
友だち同士や恋人・夫婦間でも、謝ることは難しいからね。

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