2014年サッカーワールドカップ・ブラジル大会まで、あと1年と1カ月になった。来年の今ごろは、大会の開幕が待ち遠しくなっているだろう。
日本はよほどのことがない限り、予選を通過することは間違いない状況だ。
しかし、格下相手に苦戦したり、レギュラーメンバーが固定化されているとして、ザッケローニ監督の采配に疑問を呈する声もある。
だが……
成長なきザックジャパンと相反する監督への高評価 代表の未来に感じる危険な兆候【ブラジルまでの果てなき航路】 | フットボールチャンネル
W杯をほぼ手中に収め、順調とも言える日本代表。だが、もはやW杯の出場など最低限の目標であって、ザックジャパンの目指す先は前回大会以上の成績であるはずだ。しかし、代表には未だ課題が多く、停滞感が漂う。にもかかわらずザッケローニ監督が手放しで評価されている現状は問題ではないだろうか。
批判は必要ではあるのだが、対案が出てこない。
ザッケローニ監督がダメだというのなら、では誰ならいいのか?
誰でもいいわけではなく、誰なら引き受けてくれるかという選択肢も限られているだろう。
監督を代えることのメリットとデメリットがあるわけで、誰が監督をしたらデメリットよりもメリットの方が大きくなるのかの提言がない。
南アフリカ大会のときには、オシム監督が倒れるアクシデントがあって監督が交代した。ザッケローニ監督のこれまでの成果を問題にして監督を交代させるとしたら、トップクラスの監督を引っ張ってこないと説得力がなくなってしまう。
監督がころころ代わるチームは、チームの求心力が失われたり、機能不全に陥ることが多いこともあり、デメリットを上回るメリットを引き出せる監督というのは少ないように思う。
中核となっている本田や遠藤が不在のときの「プランB」がないというが、それは日本に限ったことではない。
アルゼンチンのメッシや、ポルトガルのクリスティアーノ・ロナウドの代わりはいないのだし、代えがきかない選手だからこそ存在価値がある。
タレント揃いのスペインですら、得点力不足が問題視されている。
早い話、どこの国の代表チームであれ、「プランB」で勝つことは容易ではないということだ。
強豪国チームに比べて選手層が薄い日本では、レギュラーメンバーに劣らない「プランB」は成立しないともいえる。
また、「成長がない」というが、たかだか3年で劇的に成長するなどということは、高望みしすぎだろう。ここでいう「成長」の意味は、未完成だったものが完成に近づくという意味の成長だとする。少年から青年になる過程の「成長」のイメージ。この「成長」の意味を定義しておかないと、「成長したか否か」の論点がずれてしまう。
選手の多くは20歳以上であり、そのくらいの年齢になってしまえば成長というより、持てる長所を少しでも磨けるかだ。ミスを1つでも減らす、集中力を切らさない、シュートを1本でも多く撃つ……というようなことだ。それらは技術的、精神的なものであって、成長うんぬんの話ではない。別の言い方をすれば「経験値」の積み上げだ。
香川が、いきなりメッシのようになったりはしない。個々の能力や才能は、20歳以下の段階で大部分が作られているから、あとは磨くだけ。才能は宝石にたとえられることが多いが、10カラットのダイヤモンドの原石を取り出したら、あとは磨いて価値を高める。10カラットが20カラットになったりはしないのだ。
記事中ではブラジルを例に、それなりの成績を出していた監督を交代させたことを挙げている。「満足できない結果」という監督交代の理由は、ほんとうにそれだけだろうかとうがった見方をしてしまう。人事の問題には、表向きの理由だけではなく、組織内での力関係もあるからだ。
ブラジルは監督交代で、はたしてコンフェデやW杯で、良い結果を出せるかどうか。仮に、コンフェデで対戦する日本と引き分け、あるいは負けるようなことがあったなら、また監督交代をするかもしれない。結果が出ないから、監督交代を繰り返すという負のスパイラルに陥らないとも限らない。
監督交代は、リスクも高いと思う。
日本代表の監督交代を提言するサッカー専門家は何人かいるが、ザッケローニ監督じゃなければ誰がいいのかの候補までは出てこない。その候補が挙げられてないから、「ザックよりもそっちの方がいい」とはいえない。
ザッケローニ監督だって問題点はある。そんなことはサッカーファンは、みんなわかっている。それでもザッケローニ監督を応援するのは、人間的な魅力があるからだろう。
ザッケローニ監督で勝てないなら、それが現在の代表チームの限界だと思う。少なくとも「プランA」のメンバーなら、そこそこの成績は残せる。
南アフリカ大会やロンドン五輪での日本の成績が、予想以上のサプライズだったように、ブラジル大会でもサプライズは起きる。それが日本に起きるか、他国のチームに起きるかの違いだ。
あと1年となったこの段階で、監督交代はリスクの方が大きい。
もう腹をくくって、ザッケローニ監督と心中するしかない(笑)。