家電業界はテレビが不振で、白物家電に活路を見いだそうとしているようだが、その主力商品であろう製品の効果に疑問符が出された。
 「プラズマクラスターイオン」と「ナノイー」は声高に性能をアピールしていただけに、シャープとパナソニックにとっては大ピンチかも。

プラズマクラスターやナノイー自体にはほとんど殺菌効果がないことが明らかに – 家電・PC – Tech-On!

 日本のエレクトロニクス関連メーカーが販売している空気清浄機には、殺菌や脱臭といった効果をうたう粒子を放出するものが多い。メーカー各社が名付けた粒子の例としては、シャープの「プラズマクラスターイオン」やパナソニックの「ナノイー」がある。ところが、そうした粒子自体には殺菌効果がほとんどなく、実際の殺菌は、同時に発生するオゾンが担っているとする論文が公開されている。

 メーカーにとっては、痛い論文だろうね。
 オゾンの殺菌効果は昔から知られたことだ。オゾンといえば、成層圏でオゾン層として紫外線を軽減してくれる存在なのだが、高濃度で身近にあると毒性になる。

オゾンについて

低濃度のオゾンは人体に有益であるが、濃度が高くなると人体にも影響が出てきます。濃度の高いオゾンガスを直接吸い込むと、その量によっては死亡事故に繋がることがあります。従って、有人時には最高0.05ppmを越えないこと、また使用にあたっては、連続的でなく断続的に使用する事など人体に及ぼすオゾンの影響を十分考慮して使用しなければなりません。日本では、作業場での基準値を0.1ppmと厚生省で定めています。

 オゾンはすぐに分解してしまうものではあるが、空気清浄機から発生するオゾンの濃度がどの程度かだね。
 シャープの製品紹介ページを見ると……

プラズマクラスターとは | プラズマクラスターイオン発生機:シャープ

 実証機関として大学や研究機関がズラズラと並んでいるが、これらの機関の検証結果はどうなのだろう?
 反論が出てきそうな予感。
 また、

プラズマクラスターの効果 | プラズマクラスターイオン発生機:シャープ

試験方法:掃除をしない実際の居住空間(約8畳)での浮遊ダニのアレル物質の作用をELISA法で測定し、その増加率を算出。(プラズマクラスターイオン濃度:3,000個/3)

 ということなのだが、1立方センチメートルあたりの空気の分子の数は、
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一般に大気中には、1立方センチメートルあたり2.5×10の19乗個もの分子が存在します。

 と、2.5×10の19乗個……25,000,000,000,000,000,000(2500京)個の中に、たった3,000個でしかない。水を溜めた25メートルプールにインクを一滴垂らしたよりも少ない感覚。
 たったそれだけで、どれほどの効果があるのかと思う。

 「プラズマクラスターイオン」と「ナノイー」に限らず、ちょっと科学的な響きの言葉があると、なにか特別な機能があるように見えてしまう。

 例えば、「天然成分」や「自然成分」を安全・安心の売りにする食品や化粧品。その成分が天然由来だからといって、安全とは限らない。自然界には毒性のある自然成分は少なくない。ヒ素は毒物だがある種の岩石に含まれているし、アルカロイド類は植物に含まれるが薬剤になるものもあれば有毒なものもある。

 あるサプリメントのCMでは「還元型だからすごい」みたいなことを連呼していた。まぁ、そのセリフは特徴的なので「あれか」とわかる人もいるだろうが、還元型だとなにがどう違うかの説明が一切ない。その商品のサイトには、それなりの説明が詳しく書かれているが、化学の知識がない人にはちんぷんかんぷんだろう。

 最近は減ったが、「遠赤外線」を売りにした商品も多かった。どんな物体でも、多かれ少なかれ遠赤外線を発している。それが健康にいいという根拠はどこにもない。その物体が体温よりも高ければ、暖を取ることはできるかもしれないが、放射性成分などを含まない限り、なにもしない状態で自ら熱を発することはない。

 「抗菌」と表示するものも多い。
 抗菌処理をした製品で、なにによって抗菌性の効果を出しているのかわからないものもある。その効果がどの程度続くのかも不明なものも多い。
 エスカレーターの手すりに「抗菌」のステッカーが貼られているものもあり、その理由が以下のようなものだったりする。

エスカレーターの手すりの「抗菌」マークが気になる(Excite Bit コネタ) – エキサイトニュース

ところで、駅によって当然、差はあるだろうが、掃除担当者がエスカレーターの手すりの掃除をしている場面は、もともとよく見られたもの。
何か特別な「抗菌」をするようになったということ?
「いえ。お掃除自体はもともと各駅でやっているものですが、『汚い』という声があるので、抗菌したということをわかりやすく“表示”しようということになったんです」
つまり、手すりの清潔度が変わったわけではなく、「清潔であることを表示した」のが、この印というわけだ。

 それを「抗菌」というのかね? 雑巾で拭いただけだよね?
 なんとなく「抗菌」と表示することが、免罪符になっている気がする。

 ちなみに、抗菌の定義は以下だ。
日本石鹸洗剤工業会 石けん洗剤知識

■抗菌
 これも、近頃では幅広い商品に謳われるようになりましたが、「抗菌」とは「菌の繁殖を防止する」という意味です。経済産業省の定義では、抗菌の対象を細菌のみとしています。JIS 規格でその試験法を規定していますが、抗菌仕様製品では、カビ、黒ずみ、ヌメリは効果の対象外とされています。
 菌を殺したり減少させるのではなく、繁殖を阻止するわけですが、これも対象やその程度を含まない概念です。

 細菌のみが対象ということで、インフルエンザウイルスやノロウイルスは対象外だということになる。

 話がそれてしまったが、白物家電に活路を見いだそうとしている家電メーカーは、従来の製品になにがしかの付加価値をつけることで、差別化や高価格化を狙っている。
 その肝となる付加機能に「効果がない」と判定されると、頭の痛いことになりそうだ。

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