呼吸器系に感染する病気としては、新型コロナ(コロナ19)やインフルエンザだけでなく、結核も忘れちゃいけない。
あまりニュースになることがないのだが、集団感染の報告が相次いでいる。
結核7人集団感染 1人死亡、6人は家族や関係者 北九州市 – 毎日新聞
北九州市は14日、市内の80代男性が2019年12月に肺結核で死亡し、その後男女計6人の集団感染が確認されたと発表した。男性の家族や利用していた高齢者施設の関係者で、このうち家族3人は結核を発病し、通院治療中という。
市によると、男性と接触した可能性がある32人に血液検査などを実施し、6人の感染を確認した。発病した女性の結核菌を遺伝子検査した結果、男性の菌と遺伝子型が一致することが9日に判明したという。結核の集団感染は19年に2件出たが、今年は初めて。
60代女性ら結核集団感染を確認 岡山市発表 /岡山 – 毎日新聞
岡山市は10日、市内の飲食店でアルバイトをしている60代女性が結核を発病し、この女性を感染源とする集団感染が発生した、と発表した。同居家族3人が発病、アルバイト先の2人が無症状の感染者と確認された。
女性は2020年4月に同市内の医療機関で結核と診断された。市が濃厚接触者の健康診断をして感染が判明した。
かつては不治の病とされた結核。結核で亡くなった著名人としては、高杉晋作、沖田総司、竹久夢二、石川啄木、樋口一葉、中原中也などがいる。結核は、文豪がかかるというイメージがあったりもする。
過去の病気と思われがちだが、日本は世界と比較すると、結核の罹患率が高い国となっている。
2018年の資料で、1万6789人の感染者が見つかり、2303人が死亡している。
世界では毎年1,000万人が結核を発病し、160万人が亡くなっているという。
これは、今現在の新型コロナの死者数を大きく上回る規模である。
なお、結核菌はウイルスではなく細菌。
今月になって立て続けに集団感染が公表されているが、たいして問題にされていない。
「東京が諸悪の根源」といったのは、兵庫県の知事だったが、お隣の岡山県では結核のクラスターが発生しているのを、どう考えているのだろう?……と、意地悪な質問をしてみたくなる。
じつは、全結核罹患率地図 (2019年)によると、兵庫県は結核罹患率の高い県になっている。
▼全結核罹患率地図 (2019.8更新) / 疫学情報センター
他県のことはいえないぞ……という例のひとつ。
度々書いていることの繰り返しになるが、リスク管理、リスク意識、リスク評価が偏ってるんだよね。
コロナ19は、新しい疾病ということで大騒ぎしているのだが、年間の感染者数・死者数は、インフルエンザや結核の方が桁違いに多い。
だからといって、緊急事態宣言なんて出ないし、自粛要請も出ない。新型コロナ以前は、マスク着用率は5割以下だった。マスクは、もっぱら花粉症の人がするものだったのだ。
コロナ19は新型だから恐いというのもわからないでもないのだが、インフルエンザや結核は同等かそれ以上にリスクのある病気だ。
であるにも関わらず、新鮮味がないために報道されることは少ないし扱いも小さく、危機感も乏しい。無関心ですらある。
今日現在までのコロナ19の死者数は、983人。
結核による死者数は、近年は年間1900〜2300人前後。
どっちのリスクが高いかは、数字を見たとおり。
結核菌は生活環境にありふれていて、ウイルスのように簡単に不活性化しない。そういう意味ではしぶとい。
また、昨今では耐性菌も現れてきていて、抗生物質が効かない菌もある。じつは、これがやっかいで、あまりに抗生物質を使いすぎてしまったため、耐性菌が増えることになっている。
上の日本地図を見ればわかるように、結核は東京以西の西日本での罹患率が高い。
新型コロナばかりに気を取られていると、結核で足下をすくわれるぞ。