マスクの有効性とは、マスクのフィルタリング性能がウイルスの漏出を阻止しているかどうか。
素材となる繊維の密度が細かくなればなるほど、小さな粒子を阻止できる。
一般的な不織布マスクは、公表されている性能では4〜5㎛以上の粒子を98%通さないことになっている。
「効果的なフィルタリングをしなかった」という研究がある一方で、有効だとする研究もある。
正反対の結果となっている研究なのだが……
「ウイルス拡散防止にマスク有効」 米中チームが米科学誌に発表 – 毎日新聞
研究チームは2013~16年、香港の病院を受診した患者のうち、コロナウイルスや季節性インフルエンザウイルスなどについて陽性と診断された人を対象に分析。ポリプロピレン製の不織布の使い捨てマスクを着用したグループと非着用グループに分け、呼気を30分間採取して調べた。
コロナウイルス感染者(延べ21人)の場合、呼気に含まれていた直径5マイクロメートルより大きい飛沫を調べたところ、マスク非着用の10人中3人からはウイルスが検出された。一方、着用した11人は全員、マスクの外に出た飛沫から検出されなかった。飛沫よりも小さく空気中を漂う「エアロゾル」(直径5マイクロメートル以下)についても、非着用の10人中4人からは検出されたが、着用者からは検出されなかった。
「新型コロナにマスクは無駄?」では、サージカルマスクでもウイルスの漏出は防御できなかった……という結論。
今回の記事では「マスクは有効」
マスクはウイルスに対して、有効なのかどうか?
どっちなんだ?……と言いたくなってしまう(^_^)b
2つの研究は結論が真逆なように思えるのだが、よく見ると前提条件が違っている。
ポイントは3つ。
- マスク無効説とマスク有効説とでは、対象としたウイルスが違う。
- 実験方法が違う。
- 有効説はゼロになるのではなく「減った」という結論
1. マスク無効説とマスク有効説とでは、対象としたウイルスが違う。
実験の時期も違うのだが、有効説の方は新型コロナ(COVID-19)が発生する以前の2013〜16年であり、無効説の方はCOVID-19の感染者を対象とした実験だった。
つまり、無効説の方が新しい実験であり、対象をCOVID-19に絞りこんだ研究だということ。
有効説が対象としたのは、普通の風邪の原因となるコロナウイルスや季節性インフルエンザになっている。
ウイルスが違うと、感染力なども違ってくるため、有効説が証明したのは対象としたウイルスについての有効性だといえる。
それがそのままCOVID-19に当てはまるかどうかは疑問が残る。
2. 実験方法が違う。
有効説では、30分間の呼気を集める方法。
対する無効説では、意図的に咳をしてもらう方法。
呼気を集めるだけだと、呼気に含まれるマイクロ飛沫を対象としているため、捕集されるマイクロ飛沫は少ないのではないか?
そのことは、「マスク非着用の10人中3人からはウイルスが検出」との結果に出ている。
感染者であるにもかかわらず、ウイルスが検出されなかった人が7割というのはどうしてなのか? その理由についての説明がない。
無効説では、ウイルス培養用シャーレで採取し、増殖させてウイルスを検出しているようだ。こっちの方が実験としては良いように思える。
マイクロ飛沫は2〜10㎛と小さなものだが、この極小の一粒に、0.1㎛のウイルスは数百個が付着できる。
マイクロ飛沫は一粒ということはなく、数十〜数百の霧状(エアロゾル)となって降りかかる。この一粒でも、人体の粘膜に辿り着けば、ウイルスは体内に侵入し、増殖することは可能だろう。
3. 有効説はゼロになるのではなく「減った」という結論
上記の記事は、書き方として少々誤解を招く書き方になっている。
別のニュースソースでは……
医療用マスク、コロナウイルス拡散防止効果 香港大など :日本経済新聞
香港大学などの研究チームは4日までに、通常のかぜの原因となるコロナウイルスに感染した患者が医療用の「サージカルマスク」をすると、ウイルスがマスクの外に広がるのを抑えられるとする実験結果を発表した。
(中略)
この他インフルエンザについても、患者がマスクをした場合はウイルスが検出される割合が減った。
……ということで、実験は風邪の原因のコロナウイルスであり、インフルエンザについては「割合が減った」という結果だ。
記事の書き方で、異なった結論のようになってしまう例でもある。
「拡散防止」と「感染防止」は違う……との発言もあるのだが、問題にしているのはマスクのフィルタリングの性能と効果であること。入りと出の方向の違いは、あまり関係ない。
マスクの性能によって、飛沫を出す方の拡散防止と、飛沫を吸う方の感染防止が、有効かどうかが決まる。
マスクの付け方にも問題があり、6〜7割くらいの人は、ダメな付け方をしている。
電車内でよく見かけるのは……
- 鼻や頬の側に、隙間が大きく空いている人。
- 鼻を出している人。
- スナック菓子を食べたり、缶コーヒーや缶チューハイを飲むために、顎マスクにしている人。
- 電話をするためにマスクを外す人。
- しきりにマスクに触る人。
- 咳をするのに、マスクを外す人(!)←いるんだよ、こういう人
そのマスクは、なんのため?……という人は多い。
結局のところ、マスクはどれほど有効なのか?……という、決定的な結論は出ていないということになりそうだ。
ひとついえるのは、これほど多くの人がマスクを着用していても、感染拡大は止まっていないこと。
マスクがある程度有効だとしても、感染拡大の抑止にはあまりならないということかもしれない。