昨晩(2019/07/20)、妻と一緒に見てきた。

危惧したほど悪くなかった。
ディテールで泣ける部分もあるのだが、感動というのとは違った。
作品として前作を超えられなかったね。

前作を★5つの評価とすれば、今作は★3つ。
期待値が大きい分、評価が厳しくなったというのもあるが、まるで前作の続編のような作品なので、新鮮さとかインパクトが乏しかった。実際、前作の主人公ふたりがチラッと登場する。

大ヒット作の次の作品が難しいというのを、絵に描いた作品だったともいえる。
興行的には出足好調とのことだが、それは期待値の大きさだろうね。
みんな、前作よりすごいものを期待したんだ。

見ていて思ったのは、
「ああ、これは細田守監督と同じパターンだ」
ということ。

細田監督作品は、「時をかける少女」で脚光を浴び、「サマーウォーズ」で度肝を抜く傑作を作り、「おおかみこどもの雨と雪」でさらに期待値が高まった。
しかし、「バケモノの子」でやや下降線になり、「未来のミライ」で幻滅することになった。

作品がヒットして期待が高まると、新作で自身の前作を超えられなくなる。
勢いをなくしてしまうというか、壁にぶつかってしまうというか、上限に達してしまったかのようになる。

細田監督と新海監督の作品は、テイストとしては似ている。
映像的な部分では、リアル志向で細部にこだわる絵を描く。
反面、ストーリー的な部分ではけっこう雑というか、絵のリアルさほどにはストーリーのリアルさは出ていない。
そこがツメの甘さなのだと思う。
そのため、ストーリーに途中から無理が生じ、だんだんと破綻していく。

君の名は。」では、ストーリーが破綻しかけつつも、破綻しても辻褄を合わせられる時間移動ものだったことが幸いした。
少年と少女が心だけ入れ替わるとか、突然、時間移動してしまうとか、アイデアとして古くさく、ひねりもなにもないのだが、映像美とスピーディーな展開、少年少女の初々しい恋愛がストーリーを駆動させた。

しかし、「天気の子」では、ストーリーの弱点をフォローできるアイデアや設定が十分ではなかった。
救いは神頼みしかなかった。文字通りの神頼みだ。
君の名は。」でも神頼みは出てきたが、「天気の子」は終始神頼みだった。
物語の展開上では、「神頼み」は万能の解決策になってしまう。
主人公たちが八方塞がりの状況に陥ったら、「神様……」と神頼みしたら、神様が全部解決してしまう。そこに理屈はないし、なんの制約もなく、無理を通すことができてしまう。
そうなると「リアルさ」は破綻する。

新海監督のインタビュー記事で……

「『君の名は。』に怒った人をもっと怒らせたい」――新海誠が新作に込めた覚悟 – Yahoo!ニュース

先ほど、帆高の叫びを描きたいという話をしましたけれど、その叫びってどういう叫びかというと、帆高と社会の価値観が対立したときに生まれた叫びなんです。

(中略)

――次の作品を、「主人公と社会の価値観が対立する」映画にしようと思ったのはなぜだったのでしょう。

それは……僕自身の気分だったとしか言いようがないですね。直接的な理由を挙げるなら、『君の名は。』がすごく批判を受けたということはあります。『君の名は。』の公開期間中だと、テレビをつけても、雑誌を見てもそういう感じで。「ガキっぽい映画だ」みたいな言われ方もずいぶんしましたし、「代償なく人を生き返らせて、歴史を変えて幸せになる話だ」とも言われました。「ああ、全く僕が思っていたことと違う届き方をしてしまうんだな」と思いました。

「主人公と社会の価値観が対立する」ということだが、私の感想としては、15歳くらいの年頃でたいていの人が経験する「反抗期」じゃね?……と思った。
思春期の反抗期って、理屈じゃなくて生理的感情なんだよね。第二次性徴期で、性ホルモンがガンガン分泌されて、体も脳もコントロールできなくなる。あの頃の怒りとか衝動とか不満とか性欲とかは、すべて性ホルモンに起因する。

そういう解釈をすれば、帆高と陽菜は性ホルモンに翻弄されているわけで、社会に対する反抗的な行動も、恋愛感情も、ファンタジーな妄想も、すべては性ホルモンが原因(^_^)
まぁ、そういっちゃうと身も蓋もないのだが、その感情は理解できる。

じつは、共感できる部分というのが、あの年代の自分のことを思い出すからだ。
親や教師に反発して、バカな行動をしたりしたが、なぜ反発してしまうのかその当時はわからなかった。ただ無性に腹が立つし、イライラするし、感情を抑えられなかった。

その時期を過ぎて大人になると、あのときは性ホルモンに振り回されてたんだな……とわかった。大人や社会に反発する衝動は、同時に好きな女の子とエッチしたいという妄想とセットだったんだ。帆高が夏美の胸にエッチな気持ちを感じてしまうシーンがあったが、あれは象徴的。帆高も無意識に湧き上がってくる性欲に、戸惑っているんだなと。

「天気の子」の評価は、評論家筋やメディアの紹介では、高い評価になっているようだ。これは宣伝的な意味合いもあるのだろうから、ご祝儀評価というところか。
しかし、一般の人たちの評価は厳しいのが多く見られる。おそらく、期待値の高さからの反動でもあると思う。そういう意味では、期待に応えられていないともいえる。

老婆心ながらいっておくと、「君の名は。」「天気の子」と似たテイストの作品が続いているので、次回作をこの路線で行くと飽きられるよ。
ガラッとテイストを変えた方がいい。
その点、宮崎駿監督や高畑勲監督は、作品を作るごとにテイストをかなり変えていた。そこがすごいというか、引き出しの数が多かったんだと思う。

「天気の子」は興行的には、そこそこ成功するだろうし、けっして駄作ではない。
しかし、傑作でもない。
次回作はどんな作品を作るのか?
早くても3〜4年後だろうけど、期待と危惧の半々で待っている。

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