韓国の国際養子問題

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養子縁組というと、子供を育てられない親から、子供を欲する里親に、養子として引き取られていく、それは子供の幸せのため……というプラスイメージだろう。
里親のもとで、必ずしも幸せになれるとは限らないが、少なくともそこを目指しているとは思う。

しかし、韓国では事情が特殊だったようだ。

かつて20万人が韓国から海外へ 祖国に戻り始めた国際養子たちの胸の内:朝日新聞GLOBE+

韓国は半世紀以上前から生まれて間もない子どもたちを海外の里親のもとに養子として送り出してきた。1950年に始まった朝鮮戦争の間に米国の軍人との間に生まれた「ハーフ」の子どもや戦災孤児を米国に送ったのが始まりとされるが、やがて貧困やシングルマザーなど戦争と直接関係ない理由の国際養子も広まった。引き取り先も米国以外に欧州が加わり、一時は「赤ん坊の輸出国」と国際社会から批判された。その養子たちがここ数年、祖国を訪れ始めた。生みの親を探したり、言葉を学んだり。韓国籍を取り直して暮らす人もいる。「私は何者か」。アイデンティティーをめぐって葛藤してきた韓国人養子たちを訪ねた。

(中略)

1950年代初頭から海外の里親のもとに送り出された韓国人の養子は約20万人。今では養子縁組が必要になった場合、仲介団体はまず韓国国内で里親を探すことが法律で定められたため、年間300人ほどに減ったが、国境を越えた養子縁組そのものはなくなっていない。

「赤ん坊の輸出国」とはひどい話だが、そういわれるくらい海外に送られる子供が多かったということなんだね。

この国際養子は、言い方を変えれば「口減らし」みたいものだし、人身売買的な側面もあったのではと推察する。ボランティアといっても金はかかるわけだし、表向きは善意を装っても、裏では金銭の授受があっても不思議ではない。

朝鮮戦争後の混乱期ならまだしも、現在も少数ながら続いているというのに驚く。
これまでに20万人が海外に送り出されたということだが、細かい経緯のデータが記事にはない。
そこで調べてみたら、論文として発表されているデータがあった。
少々データとしては古いが、2008年までのデータ。

UTokyo Repository – 東京大学学術機関リポジトリ

韓国海外養子研究の動向と教育学的な課題

韓国の海外養子の年次推移

韓国の海外養子の年次推移

このデータで注目したいのは、1958〜1990年までは、男児よりも女児が圧倒的に多かったこと。
韓国は、日本以上に男尊女卑の価値観なのは周知のとおりだが、女児は疎まれていたのだと思われる。韓国では男児が優遇されるため、女児が生まれたら養子に出されたのだろう。

ところが、2000年代に入ると、今度は男女が逆転して、男児の方が多くなっている。
この理由はなんだろう?
生まれてくる子供の男女比は、どこの国でもほぼ半々か、若干男児が多い傾向にはある(男児の方が死亡率が高いため)。しかし、この差は出生時の男女比よりも、男児が多すぎ。
つまり、そこに選択的な意図が働いていると思われる。
里親が男児を欲したか、男児が女児よりも多く里子に出されたか。
この点については、論文でも触れていない。

国策として海外の養子に出された子供たち。
生みの親と国から捨てられた格好だが、韓国内で育つのと海外で育つのと、どっちが幸せだったのだろうか?

自分のルーツを知りたいというのは、生みの親を知りたいということでもある。
そして、養子に出された理由も。

大人になった養子たちの心境は複雑だろうね。
育った国の国籍はあっても、見た目は外国人。
見た目は韓国人でも、韓国人にはなりきれない。

その点は、日本での帰国子女や、国際結婚でのハーフの人たちと似ているのかもしれない。
とはいえ、生みの親が誰かわからないのは、大きな違い。

養子縁組については、日本も遅れているので韓国のことをあまり批判はできない。
ただ、だからといって海外に送られた子供たちが、大人になったときのことまで配慮していたともいえそうにない。

また、里親として育てた親の気持ちも複雑だろう。
我が子として育てたのに、韓国に帰ってしまうとしたら、虚しいのではないか?
ケースバイケースだとは思うが、養子も里親も心情的にどこか救われない気がする。

日本国内でも、生みの親を知りたいという養子の人たちが、ニュースとして取り上げられることがある。
また、精子ドナーで生まれてきた人が、遺伝的な父親を知りたいとの「知る権利」を主張したりもする。

自分のルーツを知る。
それが不明な人にとって、切実な問題なのだと思う。

20万人も国際養子がいる問題なのだから、像を建てるのが好きな韓国は、「国際養子像」を建てて問題提起した方がいいかもよ。
ただし、謝罪と賠償の要求先は韓国政府なので、そこは間違えないように。

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