本が売れない……というのは、ずいぶん前からいわれ続けている。
最近の若者は本を読まなくなった……というのも、私が高校生の頃からいわれていた。かれこれ30ン年前だ(^_^;
厳密にいえば、売れる本と売れない本の落差が大きいということだ。ベストセラーは出ているわけだし、本を買わなくなったわけではない。問題なのは、粗製濫造していることだろう。
出版社には毎月何冊出す、といったノルマというかスケジュールがある。定期的に一定量の本を出さないと、仕事がなくなってしまうからでもある。
結果、面白くない本もたくさん出ることになる。無駄が多いわけだ。もっとも、その無駄のお陰で下請けの会社が仕事にありつけるという構図ではあるのだが。
書店に並ぶ本の返本率は4割だという。
これは平均であるから、売れない本はもっと返本率が高い。なぜ売れ残るかといえば、過剰に供給するからだ。つまりは、出版社のマーケティング能力が低いことの証明だ。見込み違いが多すぎるということ。
それを解決しようという試みが以下の記事。
「返本率4割」打開の一手なるか 中堅出版8社、新販売制「35ブックス」 – ITmedia News
書籍は通常、「委託販売制」で販売されており、書店のマージン(定価に占める取り分)は22~23%程度。売れなければ、仕入れ価格と同額で返品できる。
これに対して35ブックスは、書店のマージンを35%と高めに設定する一方で、返本時の引き取り価格を35%に下げる仕組み。「責任販売制」と呼ばれるシステムで、取り次ぎにも協力を得て実現した。書店の利益アップと出版社の返本リスク低下、取り次ぎの業務効率化が狙いだ。
書店にとっては利益率が上がっていいかもしれないが、売れない本はやっぱり売れないわけで、根本的な対策にはほど遠い気がする。
書籍は「再販制度」によって、定価販売が守られている。
本来なら独禁法違反なのだが、特例として認められている商品がいくつかあり、書籍もそのひとつだ。
出版社は既得権益として再販制度を維持したいようだが、保護されていることをいいことに、粗製濫造して返本が多いと愚痴をいうのは、甘えているとしかいいようがない。
書籍もオープンプライスにすべきだ。
本が安く買えるようになれば、潜在的な客は戻ってくる。昔、文庫本が300円前後で買えたのに、今では1000円を超えることも珍しくない。物価が上がっているとはいえ、書籍の値段の上がり方はそれ以上だ。
こんなに高ければ、買い控えるのは当たり前。古本屋に出てくるのを待つのが、賢い買い方だ。
しかし、古本屋で売れても、出版社の利益にはならない。
それならば、新刊でも安く買えるようにすればいいではないか。
利益率は下がるだろう。リスクも増えるだろう。
だが、リスクがあるからこそ、売れる本を作ろうという強い動機になるはずなのだ。
再販制度は、出版社を保護しているのではなく、マーケティング能力や創造力を衰えさせていることに、早く気づくべきだ。
いや、気づいてはいるのだろうが、ぬるま湯から抜け出せないのだろう。