NFTアートの現状(その2)

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NFTアートの現状(2022/01/18現在)」の続き。

現在のNFTアートの一番の問題点は、類似作品が多すぎることだろう。
もっといえば、模倣作品が多い。
これはOpenseaのArtカテゴリの話。

初期の頃にドット絵の顔だけの作品が、目新しさもあって売れた。それを模倣する人が増えて、ちょっとしたブームになった。
「顔」というのは、見る人に強いインパクトを与えるのは確かなのだが、同じような顔のバリエーションを数百〜数千も乱造されたことで、どこを見ても顔ばかりの作品が並んでしまうことになった。

これを「顔バリエーションタイプ」と名付けよう。略して「顔バリ
その一例が以下。

顔バリエーションタイプ

ここにピックアップしたのは、オファー(買いたい人が買い値を提示)が付いているものを並べた。オファー価格は低いのが常だが、少なくとも買いたい人がいる。
一例を挙げれば、売り値1イーサリアム(369,000円)に対して、オファーが0.001イーサリアム(369円)というようなことは珍しくない。オファーに対して売主が承諾すれば、売買成立となる。

顔だけアートが悪いとはいわないが、こうも羅列されるといささかうんざりする(^_^)b
デジタル時代の弊害でもあるが、同じ顔、同じポーズで、色違いや小道具違いで簡単にバリエーションが作れてしまうので、乱造が簡単になっている。アナログの手描きでやっていたら、こんな展開にはならない。

とはいえ、売上ランキングのトップ15を見ると、ゲーム関連を除いて顔バリしかランクインしていないという現実もある。売れている(売買されている)のは顔バリが主流だ。それが顔バリの増える要因にもなっている。

「悪貨が良貨を駆逐する」ではないが、顔バリが多すぎて、それ以外の作品が埋もれてしまっている。
そのことはOpensea側も意識しているのか、トップページで取り上げる注目作家(週に5〜7人)には、顔バリではない作品をプッシュしている。

顔バリがOpenseaを席巻していると、多様性が失われるし、NFTアートの価値観も偏狭になってしまうように思う。顔バリからの脱却が、Openseaの課題かもしれない。

Openseaトップ画面

▲Openseaのトップ画面。1段目はArtカテゴリ作家。2段目の中央はゲーム関連で、左右がPhotographyカテゴリの作家。(2022年1月21日現在)

もうひとつ目につく傾向が、有名人の似顔絵作品だ。
その一例が以下。

有名人タイプ

有名人の有名度を利用しているともいえるが、アート作品としてはどうなのよ?……と思う。
これらの作品には、元になった写真があるはずで、模写あるいはパクリといわれても仕方がない。

たとえば、左上1番目のイーロン・マスクの似顔絵だが、元となった写真がある。

Why Africa is Unable to Accommodate SpaceX, Fiber Optics and other Space Projects – Space in Africa

Elon Muck

この画像をコピーして、アートっぽい処理を施している。
これは、写真の著作権の侵害だろうし、人物の肖像権の侵害になるのでは?
現状、Openseaは審査なしで作品を販売できるので、こうした作品もフリーパスだ。
ちなみに、イーロン・マスク氏は人気のようで、モデルとして多く登場する。

NFTは作家が作品を販売し、購入者は転売して利益を稼ぐことが目的ではある。
中には、0.1イーサリアム(36,693円)で買ったものを、10イーサリアム(3,669,329円)で転売しようとする輩もいる(^o^)
100倍の価格で儲けようという意図はわからないでもないが、それでは売れないだろう。
値付けは所有者の自由だが、適正価格というのはある。
※換算レートは、毎日、毎時、毎分で変動する。

Artカテゴリのカオスぶりと違って、Photographyカテゴリは比較的健全だ。
写真では類似のバリエーションを作りにくく、基本的に1点ものだ。カメラはデジタルでも、撮影は被写体とカメラマンとのアナログ作業だからね。
Artカテゴリにも、こういう健全さが欲しいところ。

NFTアートが成熟していくには、まだまだ道は険しいように思う。

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