「圧縮効果」批判について

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写真はリアルを写すが、真実を写すとは限らない……という典型的な例。
報道写真で望遠レンズを使った「圧縮効果」が批判の的になっているという。
圧縮効果なんていう単語は、カメラマニアじゃないと出てこないよね。
うちの妻が「圧縮効果ってなに?」と聞いてきたと思ったら、この記事のことらしい。

望遠レンズによる圧縮効果はなぜ非難されるのか その背景を考える / ITmedia NEWS

ところがこの報道で使われた写真について、望遠レンズの圧縮効果を狙った「演出」であるという非難がTwitterで上がってきた。

確かに望遠レンズで撮影すれば、いわゆるパース感がなくなって平面的になるので、縦方向に長い距離にあるものを、1枚の画像の中に入れ込むことができる。

こうした撮影方法に対する批判に、新聞社のカメラマンが反論記事を書いたことで、より反発が強まっている。

批判の対象となった写真は以下。

望遠レンズの圧縮効果

なるほど、これはやり過ぎだな……と、私は思う。
いちおう、私もフォトグラファーなので、撮影対象をどう撮るかというのは、いつも考えていることだ。余分なものを排除し、トリミングすることで表現したいものを強調する。この写真はその結果だろう。

望遠レンズを使ったのは、遠くから撮影していたというのもあるだろうが、周囲の余分な背景が入らないようにした意図もあると思う。
広角レンズで全体を入れることも可能だが、それだと人物が小さくなるから混雑感が出なくなる。
そこに望遠レンズを使ったのは、撮影者の演出なんだよ。

勘違いしている人が多いように思うが、写真とは撮影者の意図を表現するものである。

報道は真実を伝えるというよりは、リアルの断片を伝えているだけだ。
記事の内容も写真も、リアルの断片である。
たくさんある事象の中から、ピンポイントで1点を取り上げること自体が、すでに演出となっている。
なぜ品川駅だったのか? そこに必然性はなく、記者とカメラマンの選択の結果だ。
私の勤務先に近い恵比寿駅では、こういうアングルは撮れないね。人々が重なる長い通路がないからだ。たとえば練馬駅では、そもそもこんなに通勤客は集まらない。
品川駅の選択は、このイメージを見せるための恣意的選択だったといえる。

ニュースは、大なり小なり「あおり」が入るものだと思う。そうでなければ注目されない。
嘘ではないが、多少の誇張がある。たいていのニュースがそうだろう。

この話題で問題だったのは、カメラマンの釈明に説得力がなかったことだ。撮影技法を説明しても、一般人の共感は得られにくい。
批判している人たちは、なぜ望遠撮影の写真を使って「密」を表現したのか?……について問題にしている。その疑問に対する答えになっていなかった。

撮影対象として、あの場所を選択したことが適切ではなかったのだと思う。
「密」を表現したいのなら、通勤電車の満員状態を撮ればいい。広角で撮っても密々に密着してるよ(笑)。

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