「空気感染確認」を報じない主要メディアの不思議

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新型コロナの新規感染者が、東京では300人超え、全国では900人超えとなり、危機感をあおっている。
危機感を持つことは必要ではあるのだが、それならばなぜ「空気感染確認」のリポートが大きく報道されないのかが不思議。

この「空気感染確認」は、今現在取られている感染防止対策を、根底からくつがえすような事実だ。空気感染を前提とした対策を考えなければいけないはずで、それを無視してもいいのか?

ガイドラインとして挙げられている対策をしていても、空気感染していれば効果は限定的で、対策をしているつもりが、穴の開いたバケツで水をくんでいるようなことになってしまう。

空気感染確認の事実は、トップニュース扱いでもいいと思うのだが、主要メディアはどこも取り上げていない。
「感染しない、させない」と都知事はスローガンを口にするが、これまでの対策方法では空気感染は防ぎようがない。

空気感染する感染症は、麻疹、水痘、結核の3つとされてきた。
これに新型コロナ(COVID-19)が加わることになる。
結核の場合、医療従事者の感染予防対策としては、N95マスクの着用が推奨されている。マスクの性能として、N95マスクしか効果を期待できないからだ。
つまり、普通のマスクでは不十分であり、なんでもいいからマスクをしろというのは、間違った安心感を与えることになってしまう。

マスク着用の効果を肯定する専門家は多い。
ただ、マスクの種類についてまで言及している人は少ない。どんなマスクでもいいわけはなく、マスクの性能を限定すべきだと思う。

新型コロナ マスク着用による感染予防の最新エビデンス(忽那賢志) – 個人 – Yahoo!ニュース

日本でもご存知の通り5月4日から「新しい生活様式」として屋内では無症状者もマスクを着用することが推奨されています。

こうした「無症状の人も含めてマスクを着用する」という考え方をユニバーサルマスク(Universal Masking)と言いますが、この推奨は「発症前に感染性のピークがある」という事実と「マスクは会話などで発生する飛沫の拡散を減少させる」という事実から、おそらく新型コロナに対して予防効果があるのだろうと考え出された推奨です。 実際に予防効果があるのかは十分に分かっていませんでしたが、この数ヶ月で徐々に知見が集まってきました。

(中略)

中国の北京で124家族335人を対象としたコホート研究をご紹介します。
家族内で1人感染者が出た場合に、他の家族に感染が起こった事例は22.3%でした。4つの家族に1つは家族内感染が起こっていることになります。
しかし、新型コロナを発症した人が、症状が出る前からマスクを着けていた場合は、家族への感染を79%減らしました(OR=0.23、95%CI 0.07~0.84)。しかし、発症後にマスクを着けても家族への感染は減らさなかったそうです。

(中略)

2020年3月から4月にかけて新型コロナが大流行していたアメリカのある病院で、3月に医療従事者がマスク着用を義務化し、4月に患者のマスク着用を義務化したら医療従事者の新型コロナ感染率が低下したという報告です。

病院でのユニバーサルマスクの効果

ミズーリ州のスプリングフィールドにある美容院で働く2人の美容師が新型コロナに感染しました。
この美容院では、スプリングフィールド市の推奨に基づき、ユニバーサルマスクを実行していました。
この2人の美容師に濃厚接触したと考えられる139人の客は、それぞれ15分以上この美容師と濃厚暴露していたと考えられましたが、なんと誰も新型コロナには感染していませんでした。マスク、パねえっす。
ユニバーサルマスクの効果が分かるエピソードです。

記事中で取り上げられている効果の検証だが、これは別の解釈もできてしまう。

まず、中国での事例
家庭内感染についてのリポートだが、家庭内で常にマスクをしているのだろうか?
それはキツいな。

それより、私が注目したのは、「発症後にマスクを着けても家族への感染は減らさなかった」という部分。二次感染がどの段階で起きたのかが不明だ。発症前の潜伏期間に二次感染が起きたのなら、マスクをしていなかったわけだから、感染して当たり前。
家族内の感染者が発症後にマスクをしたが、それ以後に家庭内感染を起こしたのなら、マスクの効果はなかったということになる。

リポートの原文も読んだが、サンプルの181家族中、57家族が除外され、124家族を調査したという。マスクの有無は、自己申告によるものだ。
いずれにしても、聞き取り調査という曖昧さのある方法なので、正確性には疑問が残る。

次にハムスターの実験例
たしか、この実験はハムスターを別々のケースに入れて、両者をつなぐ部分をサージカルマスクで仕切るという実験だったと思う。ハムスターに直接マスクを装着することはできないからね。

マスクを間に入れることで、感染率が下がった……というものだが、たしかに感染率は下がっているが、逆にいうとマスクをしていても感染するということを証明してもいる。また、サージカルマスクで防げないということは、サージカルマスクの目をすりぬけているわけで、空気感染の可能性を暗に示しているともいえる。

さらにいえば、感染率がゼロではないということは、感染スピードを鈍らせることはできても、拡大は防げないともいえる。医療機関の逼迫を回避することは期待できるが、感染拡大は止められない。じわじわと時間はかかるものの、長期戦になるということだ。

次に病院の例
例示されているグラフの解釈がおかしいのでは?
3/25の部分のカーブは、なぜ最高点に結んでいるのか? 中間点を結ぶなら、こういうカーブにはならない。
ということで、別解釈のカーブを描いてみると……

病院でのユニバーサルマスクの効果

……と、赤線が中間点を結んだカーブ。
この解釈でいえば、マスク着用をしてからも増加傾向は続き、4/29には減少傾向になっている。この減少傾向が、マスク効果なのかどうかは判断が難しい。4/29以降のデータが出ていないので、減少傾向が続いているのかどうかわからないからだ。

青線は最高点を結んだカーブだが、これを採用するなら、マスク着用後も感染率が高かったともいえる。4/29に突出した最高点が出ているしね。

データの解釈は、どう解釈するかで変わってくるという例でもある。

4/29以降のアメリカでは、一時的に減ったものの感染者数は増え続けている。
この病院では、その後どうなったのか? マスク効果で感染率は低いままになっているのか?
そのへんを追跡調査してほしいものだ。

最後に美容院の例
感染した美容師が、感染してから何日目かの記述がないので、その時点での感染能力がどれほどあったのかの判断ができない。感染後、発症前の感染力がもっとも高いというのは、そのとおりなのだろうが、この美容師がそうだったのかのデータがない。感染能力が衰えていた時期であれば、そもそも感染しにくかった、という解釈もできてしまう。

マスク効果がどの程度なのかは、ここに挙げられている事例では、エビデンスというには条件が曖昧すぎる気がする。
日本での舞台クラスターでは、観客全員がマスクをしていたのに感染してしまった事例もある。
検証するには、他の要因を排除して、マスク効果かどうかを限定できる条件が必要ではないか。

マスクを24時間、1秒たりとも外さない人は皆無だ。
水を飲むとき、食事をするときは、マスクを外さないといけない。
周りに誰もいない、ぼっちでいるのならいいが、街に出れば周りに人がいるものだ。マクドナルドやスタバなどで飲食をする人は多いが、マスクは外すよね。電車の中で、飲みものを飲んだり、サンドイッチを食べている人もよく見かける。
いま、そこでマスクを外して、安全だと思うのはなぜ?……と、問いたい。
マスクをしているつもりでも、じつは無防備になっていることは多いと思う。

いずれにしても、マスクで感染リスクはゼロにはならない、ということだけは確か。
マスク、マスクと漠然というのではなく、マスクの種類は特定した方がいい。
最低限サージカルマスク、理想はN95マスク。それ以外はNG。都知事の布マスクはNGだよ。
マスクを推奨するのなら、そこははっきりいった方がいいのでは?

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