少々記事としては古くなってしまったが、宇宙に関する新しい視点を与えてくれる発想。
宇宙はビッグバンによって「膨張」している……というのが、基本的な認識。
かつては、その膨張も減速していると考えられていたが、観測では加速していることが判明し、その原因として暗黒エネルギーの存在が考えられている。
暗黒エネルギーは、引力に対する斥力として働くとされており、それが膨張を加速しているという。
宇宙の果て……つまり、宇宙の地平線近くでは、膨張するスピードが光速に達して、それ以上遠くは観測できなくなる。それゆえ、宇宙の地平線と呼ばれる。
なぜ、そうなっているのか?
ということに関して、新たな視点がもたらされた。
WIRED VISION / 宇宙そのものが巨大なブラックホール? 暗黒エネルギーを説明する新説
韓国高等科学院(Korea Institute for Advanced Study)の物理学者Jae-Weon Lee氏による興味深い示唆が、『New Scientist』誌に掲載された。
宇宙の膨張を加速させる力の源と思われる、謎の多い「暗黒エネルギー(ダークエネルギー)」は、宇宙自体がブラックホールに似た構造を持つことから生じている可能性があるというのだ。
量子物理学では、何もない空間は、実際には仮想的な粒子・反粒子の対で満たされているという仮説を立てている。対になった粒子と反粒子が、瞬時のうちに生成と消滅を繰り返しているというのだ。
もしこれらの粒子対の片割れが、ブラックホールの「事象の地平線」――重力が非常に強いため光でさえ逃げられないとされる外縁部――のどちらかに現れたとしたらどうなるだろうか。
おそらく、お互いが出会って消滅することが不可能になるため、「事象の地平線」の内側にある対の片割れのほうは、実宇宙に固定される。そして、地平線の外にある対の片割れのほうは、「ホーキング輻射」と呼ばれる現象によって、ブラックホールから放射されるだろう。
New Scientist誌の記事の説明によると、Lee氏のチームは、観察可能な宇宙には、上述の事象の地平線に類似した境界があることを指摘しているという。
膨張を続ける宇宙では、ある距離以上は光速より速く離れるため確認できない。これを「宇宙の地平線」というが、Lee氏のチームは、この宇宙の地平線によって、粒子対が分割されるときの放出エネルギーが暗黒エネルギーであると説明している(粒子対が分割されるときの放出エネルギーの量を計算し、その計算結果が、宇宙の膨張の加速を説明するために必要なエネルギーの量に一致すると考えている)。
これは、暗黒エネルギーと同様に、理解しにくい概念だ。暗黒エネルギーも、宇宙の膨張率に与える影響が観測されていることで、その存在が予想されているが、これまで暗黒エネルギー自体は確認されていない。
しかし、New Scientist誌によると、この記事によって他の物理学者たちの間で関心が高まっているため、ビッグバンで残った「宇宙背景放射」を調べる目的で、ヨーロッパの衛星『Planck』が打ち上げられる際に、テストが行なわれる可能性もあるという。
なかなか面白い。
逆転の発想だね。井の中の蛙が、自分が井戸の中にいることを理解できないのと同じだ。
私たちのいる宇宙が、超々巨大なブラックホールの内側だとしたら、そのことを知るすべはほとんどないのだろう。
この発想をヒントに考えると、「膨張」していると私たちが考えていることも、間違っているのかもしれない。
外側に向かって加速していると思っているのが、じつは中心に向かって落ちているのかもしれない。
そのイメージを簡略図にしてみたのが、以下である。
宇宙の地平線に向かって「落ちている」と考えれば、加速していることも納得しやすい。まぁ、たぶんにSF的ではあるが、宇宙がブラックホールの内部だとしたら、その内部で事象がどう見えるかはわからない。
中心に向かって落ちていくのが、内部にいると外側に向かって広がっているように見えても不思議はない気がする。なにしろ、実際のブラックホールの内部で、どうなっているのか知りようがないのだから(^_^;
答えがいつか出るのかはわからないが、黄金の種族(ヒロイック・エイジ )にでもならないと、宇宙の謎は解明できないのかもしれない。