Yahoo!ニュースのレコメンドで出ていた記事。
 気になったのでリンク先に飛んでみた。

Amazonが『南武枝線』を販売停止にした件 : 西瓜鯨油社

 AmazonからKindle版『南武枝線』についてのお知らせメールが来ていた。この本を販売停止にしているという。『南武枝線』は7月15日につんどく速報で取り上げてもらって以降、売上げがのびていた電子書籍商品であった。

 なるほど。
 作者が意図的に空白とした部分を、Amazonは欠落だと判断したわけか。実際の本でいえば、落丁に相当する不良品扱いにしたようだ。
 該当の電子ブックは販売停止になっているので現物を見られないが、掲載されている画像を見ると、たしかに欠落しているように見える。早合点してしまう読者がいても不思議ではない。
 その手法が、型破りであまりにユニークすぎたということだろう。前衛的であるということは、型破りでもあるわけで、その斬新さに読者がついていけなかったのかな。
 Amazonもいきなり販売停止ではなく、作者に確認すればよかった。WEB上では、トリック的な表現も多々あり、空白部分が長く続いて、スクロールしてスクロールして、下の方になにかが出てくるといった表現もあったりする。その空気感を電子ブックで表現すると、常識的な本の表現とは違ってくる。

 音楽でもときどきそういう表現がある。
 ある曲が終わったあとに、長い空白……無音の状態が続いて、「あれ? 終わったのかな?」と思っていると、数分後に音が鳴り出す。そのブランクがあまりに長いので、せっかちな人は次の曲に切り替えてしまいそうな演出。
 ある意味、一発ネタの表現で、二度目は飛ばしてしまうが、最初は驚きがある。

 奇抜な表現が必ずしも高い評価を得られるわけではないにしても、面白い試みではある。これが知名度のある作家であれば対応も違ったのだろうが、セルフパブリッシングの悲しいところか。
 たとえば、今、思いついたのだが、「正直者にしか読めない物語」というタイトルの本を出すとする。全300ページの本で、1ページ目から299ページまで空白のページが続く。そして、最後の300ページ目に「君は嘘つきだ」と一言だけ書かれた本(笑)。
 良し悪しは別にして、本としては成立する。ただ、値段を付けるような本ではないけれど。

 Amazonには私の電子ブックも置いてあるが、これはパブー経由の電子ブックだ。
諌山裕の電子ブック
 直接Amazonから出そうとすると、なにやら煩雑な申告が必要なので、お手軽なパブー経由にしている。まぁ、いちおう並べているという程度のものなので、売れるかどうかはあまり気にしていない。同じ電子ブックが、パブー、kobo、Amazonと出ているわけだが、一番売れているのはkoboだったりする。koboはいろいろと問題を起こして話題を提供してくれたが、なかなかどうして、セルフパブリッシング作家にとってはあなどれない電子ブックストアになっている。
 無名のセルフパブリッシング作家にとって、Amazonはストアとしては大きいものの、大量の商品に埋もれてしまうので、偶然読者の目に留まる可能性は低いように思う。また、パブーからAmazonに連携する場合は、最低価格と最大配信タイトル数の制限があるため、koboには出せるけどAmazonには出せない本もある。
 当初、パブーからAmazonに電子ブックを提供するときに、すんなりと通っていたのだが、不備が多発しているとして、いったん販売が停止された。私の電子ブックに関しては問題はほとんどなかったのだが、他の作家のハブー経由の本で、表紙に作者名がなかったり、内容に不備があったりしたらしい。おそらく、購入した読者からクレームがついたのだと思う。
 そこでAmazonのとった対応は、個々の電子ブックの適合性をチェックするのではなく、一律にリセットするという大鉈だ。そんなことをするのなら、最初から内容をチェックすればよかったじゃないか……とも思うが、あとの祭りでチェックしていなかったわけだ。再チェック後に販売は再開されたが、私はなにも手を加えていないので、リセットする必要があったのかどうか疑問に思ったものだ。

 海外(英語圏)では、無名の作家の電子ブックがベストセラーになるといった、希有な電子ブックドリームが誕生したりしているが、日本国内ではそうした夢物語は、いまのところないようだ。そもそも、日本語の本を読むのは、99.9%くらい日本人だけなので、市場規模が英語圏にくらべて桁違いに小さい。同じ比率で売れたとしても、総数が少ないのは当然の帰結。
 もっぱら、日本の電子ブックはマンガやタレント写真集が主流だ。
 マンガは電子ブック向きのコンテンツだし、文字ばかりの本を読むよりも気軽だ。また、お試し版として無料の本があったりして、販促にも力が入っている。
 タレント写真集は……、ようするに水着やヌードの写真集なわけで、程度の差はあるものの「エロ」が売りだ(笑)。昔からエロ本は売れるというのが、電子ブックでも王道をいっている。

 文章ものの電子ブックでは、有名作家によるベストセラー本が上位に来るが、まぁ、これは必然。
 次に目立つのは、いわゆる実用書。ビジネス関連の○○の極意、みたいな啓発本や、恋愛やお金に関する蘊蓄本など。これらの実用書は、比較的価格が安く設定されているのも買いやすい一因なのだろう。

 いずれにしても、セルフパブリッシングで無名の作家が、Amazonに電子ブックを並べることは容易だが、売れるようにするのは難しい。
 それが現実。

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