「縦書きブラウザ」の国際標準化を目指しているということなのだが……
今さら、「縦書きブラウザ」が必要だとも思えない。
「縦書きブラウザー」日本語実装のバグ修正で報奨金、国際標準化に向け -INTERNET Watch
ウェブブラウザーに縦書きレイアウトを普及させることを目的とした「次世代WEBブラウザのテキストレイアウトに関する検討会 電子書籍関連分科会」が、日本語実装のバグを修正した開発者に報奨金を支払う取り組みを行なっている。
分科会は総務省が旗振り役となり、楽天やグーグル、ソニー、ボイジャー、講談社、角川書店、出版デジタル機構などの民間企業が中心に参加。現在は、SafariやGoogle Chromeに採用されるオープンソースのレンダリングエンジン「WebKit」などを対象に、縦書きレイアウト実装の国際標準化を進めている。
(中略)
必達条件を満たせば、10~20万円の報奨金が支払われる。
20万円の報奨金というのに、吹いてしまった(笑)。
そりゃ、いくらなんでも安すぎだろう。桁はもう1つ増やさなければ、旨みがない。記事に書かれているような、やらなければいけない作業の量と手間暇を考えると、20万では割に合わない。もし、外注としてこの仕事を依頼すれば、20万円の見積もりを出す会社なんてないと思う。
そもそも「縦書き」にこだわる理由の根拠が乏しい。
「日本の文化である縦書き表現を継承する観点や、世界に向けた日本語コンテンツの発信を維持・強化する観点から、非常に重要」
……ということなのだが、この理屈は電子ブックの日本語表記でもいわれている理由だ。
縦書きに日本語ならではの特質があることは事実だが、WEBコンテンツや電子ブックは縦書きが必須ではない。むしろ、縦書きにこだわるがゆえに、横書きならではの日本語コンテンツの発展が遅れているようにも感じる。
私は以前から、「電子ブックでは縦書きを捨てよ」といっているのだが、著作を電子ブックリーダーやタブレットで読むとき、横書きの方が見やすいし読みやすい。
そもそも日本語のコンテンツは、基本的に日本人しか読まないわけで、世界に向けて縦書きのコンテンツを配信する意味がない。
たとえば、上記の記事を縦書きで組んでみると……
……と、こんなことになる。
InDesignを使って組んだものだが、実際にはもう少し縦書きに配慮した組み方にする必要はあるが、それは「紙」の紙面を想定しているからだ。
横文字のアルファベッドが多く、URLもある。これらを縦書きにしたら、いかに見にくいか。縦書き表示するには、縦書きを想定した文章の書き方をしなくてはいけない。WEBコンテンツの大部分は、そのような書き方にはなっていない。
無理矢理「縦書きブラウザ」にするのではなく、「横書きで美しい日本語の組み方」になる方法を考える方が、現実的だし必要なことだと思う。