ミンミンゼミを撮った

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夏真っ盛り。
毎日、あづい。
東京の夏は、特に暑い。

私は九州は大分県の出身だが、田舎にいた頃は、暑いとはいってもカラッとした暑さだった。実家の周辺が山だったので、緑も多く、都会の照り返しの熱波とは無縁だったこともある。

夏といえば、セミの鳴き声。
東京では、そのセミも少なく、鳴き声もそれほど多くはない。
今年は、セミが鳴き始めるのが遅かったらしく、8月に入って本格的に鳴き始めたようだ。春頃に気温が低かったことから、セミが地面から這い出てくるのが遅れたのだろう。

セミの鳴き声は、夏を象徴する「音」なのだが、これは地域によって違いがある。つまり、セミの種類の分布が地域によって違っているからだ。
私の田舎では、夏真っ盛りの時期は、クマゼミが大勢を占めていた。

クマゼミはやや大型のセミで、「ワシャワシャ」とけたたましい大きな音で鳴く。
ま、鳴くといっても、実際には腹の振動板をこすり合わせて、擦過音を出しているのだが、その点は羽をこすって鳴くコオロギなんかと仕組みは一緒。
あの小さな体で、よくもあんな大きな音が出るものだと感心する。

セミの体内には、擦過音を増幅するための空洞があり、そこで共鳴して大きな音になる。
実家では、夏になるとクマゼミが朝から「ワシャワシャ」と大群衆で鳴いていた。大群衆になると、その音は「ゥワーーンゥワーーーン」と唸るような音になる。
その音が、夜になるまで耳から離れない。

うるさいのだが、耳慣れた音でもあり、空気のようにそこに存在していた。
それは「夏の音」だった。

東京では、この時期、鳴いているセミはアブラゼミとミンミンゼミだ。
アブラゼミは九州でもポピュラーなセミだが、ミンミンゼミは私の田舎ではマイノリティーだった。滅多に鳴き声は聞こえなかったし、まして姿を見ることも取ることもなかった。

少年時代、昆虫採集に没頭していたので、ありとあらゆる虫を取ったものだ。夏休みの自由研究のテーマは、いつも昆虫だったのだ。
取った昆虫は綺麗な標本としてコレクションした。それを学校に提出していたわけだが、種類が多岐にわたり、完成度も高かったので(自慢(^_^))先生から、「どこで買ってきた?」と疑われたりもした。先生は小学生が、こんなものを作れるはずがないと思っていたのだ。

私は手先が器用で集中力もあったので、昆虫標本なんて朝飯前だった。マッチ棒を積み上げて自宅の縮尺模型(50センチ四方くらいの大きさ)を作ったりしたこともある。いずれも、賞をいただいた。

そんな昆虫少年だった私だが、ミンミンゼミだけは取ったことがなかった。手の届くところにいなかったのだから無理もない。
……と、先日、ミンミンゼミに遭遇して、「撮った」(^_^)

ミンミンゼミ

ミンミンゼミ

※カメラはNIKON D800、レンズはAF-S Micro NIKKOR 60mm f/2.8G ED
写真はトリミングしてある。

取ったのではなく、撮った、である。
写真を撮るとき、昆虫は今でも好きな対象だ。

このミンミンゼミは、おそらく雌。腹を見れば区別はつくが、確認できず。背の低い木に留まっているのを見つけた。
レンズは60mmなので、かなり距離的には寄っている。20センチぐらいまで接近したと思う。それでも逃げなかったのは、よほど鈍感なのか、余命が少なく弱っていたのかもしれない。

夏を舞台にした映画やアニメでは、ミンミンゼミやヒグラシの鳴き声が効果音として使われることが多い。
しかし、その音は、私には現実的な「夏」をイメージさせない。物語の中の「夏」なのだ。
私にとっての夏の効果音は、クマゼミだからだ。

東京に来て、ミンミンゼミの鳴き声を聞くようになったが、自分が別世界にいるような錯覚を覚える。
今日も、外からミンミンゼミの鳴き声が聞こえている。

「オレは、どこにいるんだろう?」

ふと、そんな違和感というか、現実感がかすんでしまう。
まるで、自分が物語の中の「夏」にいるような気になってしまうのだ。

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