電車で「私は電磁波過敏症なんです」と叫んだ人

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電車内

©Picnote / Shutterstock

帰りの電車の中で、突然、女性が大きな声を張り上げた。

「私は電磁波過敏症なんです。ケータイ電話の電源を切ってください」

なにごとかと思った。
ケータイを使っている人に注意してるのかと思ったが、どうやらそうではなく、使っていない人にも「ケータイを切れ」といっているようだった。

周囲の人たちも、いぶかしんでいる様子。
その女性がいったことの意味を理解するのに、しばらく時間がかかったようだ。
そして、生真面目な人たちはケータイを切っていた。

だが、ちょっと待て。

電磁波過敏症というのがあるのは知っているが、電磁波といっても周波数や強度は様々なのだ。太陽の光も蛍光灯の光も、厳密な意味では電磁波である。

つまり、私たちの身のまわりは、電磁波だらけなのだ。
何をさして「電磁波」というかによって、意味はまったく違ってくる。

うちの妻は紫外線アレルギーで、強い日差しに当たると肌が炎症を起こしたりする。紫外線も電磁波だから、電磁波過敏症だともいえる。
かの女性がいったことは、じつに曖昧な表現なのだ。

Wikipediaから引用すると……

電磁波過敏症 – Wikipedia

世界保健機関(WHO)は「電磁波過敏症」とされるものについてとりまとめた研究報告(ファクトシートNo.296、日本語訳)において、様々な症状の存在は真実とした上で、「医学的診断基準はなく、その症状が電磁界曝露と関連するような科学的根拠はない」としている。また、このファクトシートによれば、二重盲検に基づいた研究報告の大半は、電磁波の暴露と電磁波過敏症の間に関連性がないという結論を出しているとし、電磁波以外の環境要因、あるいは電磁波を心配することによる精神的なストレスとの関係を示唆している

ケータイだけが問題なのではなく、身のまわりの電気を使うものからは、ほとんどの場合、大なり小なり電磁波は出ている。

彼女の家には、電化製品がまったくないのであろうか?
そんなことはないだろう。

家庭の電化製品で、電磁波が多く出ているものには、テレビ、電子レンジ、パソコン、冷蔵庫、掃除機が大きな発生源だ。また、見逃されがちだが、蛍光灯も発生源である。

電車内を想定すると、照明の蛍光灯はたくさんあるし、屋根には電車の動力である架線とパンタグラフ、それと床下にはモーターがある。

具体的な数値を書くと……

●蛍光灯……直下で120mG(ミリガウス)
●パンタグラフ……1000mG(架線と線路に1000アンペアという大電流が流れているため)
●モーター……10mG~100mG(周波数によって違う)

ここでは磁束密度の数値を挙げたが、これは低周波の電磁波に用いる単位で、ケータイ電話などの高周波の場合には電力密度(単位はマイクロワット/平方センチメートル(μW/cm2)など)で測られるため、話がややこしくなる。

ケータイの電磁波の強さを、あえてmGで測ると、60mG~200mG(通話時が高い)になるという。

電磁波の強度は、発生源からの距離の二乗に反比例して低くなるのだが、それでもケータイ以外の発生源が少なくないことにはなる。

だから、彼女が電磁波過敏症で症状が出るのであれば……

「電磁波過敏症なので、ケータイも電車も止めてください」

というのが、正しい。
つまり、都会で生活すること自体が無理ということになる。
彼女は、いったいどんな生活をしているのか、おおいに気になった。

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