電車の優先席での携帯電話OFFの根拠は?

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優先席の表示

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 電車の優先席では「携帯電話の電源をお切りください」となっている。
 その理由は、今ではあまりアナウンスされなくなったが、心臓のペースメーカーが誤作動する可能性がある……とされていた。
 数年前までは、携帯電話の通話をやめるようにうながしていたが、最近では通話をする人は少なくなり、メールやネットに利用している人が大半だ。電車内で着信音が鳴ることも少なくなったが、着信音を鳴らすこと自体が目立つ行為で、バカ丸出しという感じだ。

 現在、都内の電車は、優先席の吊革の色を変えて差別化し、「優先席の近くでは、携帯電話の電源をお切りください」のステッカーを貼り、アナウンスを繰り返している。しかし、その理由は説明しなくなった。耳たこではあるが、理由もわからず注意を見聞きしている人も多いのではないだろうか?
 以前から気になっていたのだが、ペースメーカーに対する誤作動の可能性は、どのくらいあるのか?……ということ。
 つまり、「優先席の近くでは……」という「近く」とは、正確にはどのくらいの距離なのか?
 たぶん、知ってる人は少ないように思う。というか、そもそも鉄道会社の人ですら、その根拠を知っているのだろうか?と疑問に思った。

 そこで、調べてみた。

札幌厚生病院循環器科 「ペースメーカー」のページより
強い電磁波を発生するので、注意を要する場所、機器

電磁波を発生する場所 誘導型溶鉱炉、発電施設、レーダー基地、テレビやラジオ等の送信塔、高圧電線の下、エンジンをかけた車のボンネット内、核磁気共鳴検査装置(MRI、MRA)など
体に通電または強い電波を発生する機器 電気風呂、肩こり治療器などの低周波治療器、高周波治療器、医療用電気治療器、磁器マット、全自動麻雀卓、各種溶接器など
漏電している電気製品 感電により、本体が故障することあり

弱い電磁波を発生するので、注意を要する場所、機器

磁石 磁石をペースメーカー本体の上に当てないこと。磁気ネックレスも同様。はなせば影響しなくなる。
携帯電話等 携帯電話は本体から22cm以上離して使用。ポータブル、車載型の場合はアンテナ部位と本体を30cm以上離す。その他の無線(アマチュア無線、タクシー等の業務用無線など)では出力によりアンテナとの安全な距離のガイドラインがあるが、アンテナの指向性によってはより短い距離でも影響があるので注意。3ワットで約30cm、25ワットで約90cm、200ワットで約3m以内に近づかないこと。
日本医用機器工業会 ペースメーカ協議会のガイドライン
1997年のNew England Journal of Medicineの研究記事
電子レンジ等の電磁調理器、IHジャー 本体を故意に近づけないこと
商店に設置されている盗難防止装置の一部、外国の空港などでの金属探知機の一部 立ち止まらないこと

 と、なっている。
 これによると、携帯電話から最低22センチ以上離れるとなっている。
 22センチというと、肘から手首くらいまでの距離だ。そうすると、隣に座っていると問題だが、優先席に座った人の前や隣に立っていて、携帯電話を胸ポケットに入れていれば、十分な距離があることになる。
 おおざっぱにいって、優先席から30センチ以上離れていれば問題は起こりにくいという解釈が成り立つ。
 むしろ、電車内よりも電車を出た直後の方が問題ではないだろうか?
 電車が停車して、乗客が車外に出ると、携帯電話を持ち出して電話をする人も少なくない。その場合、ペースメーカーを埋め込んでいる人の周りに、電波の発信源が複数発生する。混雑している駅では、満員電車並みに接近しているので、リスクは増えるような気がする。
 だが、そうしたことについての注意はされていない。電車内でのリスクを考えるなら、駅のホームでの携帯使用も制限するのが道理というもの。

 さらには、電波の発信源として、列車無線(運転手や車掌が電車から発する無線)や駅構内の携帯電話の中継アンテナなどもある。最近では、電車内で無線LANを使えるサービスを始めた路線もある。それらの電波源についてのリスクは考えられているだろうか?

 電波はいたるところから飛び交っている。
 携帯電話だけではなく、テレビやラジオ、ゲーム機からの通信、PDAやノートパソコン等々。
 少し前に、飛行機が携帯電話の電波によって故障した……というニュースが報じられたが、調査の結果、原因は携帯電話ではなく機器そのものの故障だった。そもそも携帯電話の微弱な電波で故障するような機器であったら、シールドが不完全であり実用に耐える機器にはならないという。最近では、飛行機内から携帯電話を使えるようにする対策も試みられていることから、携帯電話が飛行機の機器に影響を与えるというのは、可能性として低いそうだ。

 問題は、電波の出力だろう。
 携帯電話の出力は、

Kozupon.com – 電波による機器障害(心臓ペースメーカーへの影響)!
携帯電話の空中線電力(出力)
携帯電話の周波数帯別空中線電力は、
■ 800MHz帯 → 800mW
■ 1.5GHz帯 → 800mW
■ 2GHz帯  → 200mW、10mW

 となっている。
 では、列車無線の出力は?……と、調べてみたが、なかなか見つからなかった。
 ようやく見つけたのが以下。

JR東日本の列車無線デジタル化

電波型式 送信周波数 出力
F2D
F3E
336.0375~336.1250MHz
(12.5kHzステップ8波)
1W
F3E 414.4250MHz
414.5500MHz
415.2000MHz
1W
G1D
G1E
336.0375~336.16875MHz
(6.25kHzステップ22波)
0.3W

 ということで、携帯電話よりも若干出力が大きい。若干ではあるが、リスクとしては列車無線の方が高いことになる。もっとも、無線機は先頭と後尾の運転席にしかないから、運転席の隣にある座席が危険だということになる。距離としては1~2メートルくらいだろうか。ただ、周波数が携帯電話に比べて低いので、干渉は大きいように思う。そのへんの実証試験はしているのだろうか?

 携帯電話が原因のペースメーカーの誤作動の実例は、今のところないということらしい。可能性がゼロではないから注意する、というのが鉄道会社の言い分のようだ。
 そうであるならば、前述したように、駅の構内はすべてを携帯電話不可にしなくては意味がない。リスクの対象者がどこにいるか特定できるわけではないからだ。
 リスクの高さを問題にするなら、ホームからの転落を防止する防護柵の設置の方が、もっとやるべきことだろう。東京では月に何度か、ホームから転落して電車が遅れることが発生している。
 携帯電話よりも、はるかに危険なのだ。
 そういうお金が膨大にかかることについては、対策は遅々として進まない。
 もっと、現実のリスクを考えてほしい気がする。

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