安全保障法制の強行採決に見る政党政治の限界

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安全保障法制が強行採決された。
委員会の紛糾ぶりをテレビで見ていて、茶番劇だな……と思った。
野党は審議不十分といい、与党は十分に審議したという。

だが、たとえ200時間、300時間審議したといっても、同じことを言っただろう。
採決するとなれば、結局、数の勝負だ。
数の多い政党が勝つようになっている。
政党政治とは、そういう仕組みなのだ。そのために徒党を組む。

採決させまいと、野党議員はやんややんやと騒いでいたが、パフォーマンスとしては「反対したぞ」というアリバイ作りにはなっても、採決を阻止できると本気で思っていた野党議員はいないと思う。それは自明のこと。
議長が「賛成の者は起立を求む」といっても、いちいち起立した議員の数を数えたりはしない。数えることなく「賛成多数」といってる。単なる儀礼的な採決でしかない。

政党が党議拘束をかけている以上、議員個人がどういう意見を持っていたとしても、賛成に回るしかない。それが嫌なら、党を離脱するしかない。
どういう法律、いかなる政策を決めるにしても、結局は多数派の政党の主張が反映される。

だから、政党は政権を取ろうとする。
民主党が政権を取ったときも、好き放題やったではないか。
たとえば……

郵政法案たった6時間で強行採決 野党激怒「前代未聞の暴挙」 : J-CASTニュース

米軍普天間基地の移設問題の影に隠れて目立たないものの、国会では、異例のペースで法案の強行採決が行われている。特にそれが際だつのが郵政改革法案で、審議入りしたその日に、わずか6時間の審議で強行採決。「前代未聞の暴挙」(共産党)をはじめ、野党側が激しく批判しているのはもちろん、与党側の一角からも疑問の声があがっている。

今国会の衆院委員会では、2010年5月12日には国家公務員法改正案、5月14日には地球温暖化対策基本法案、5月25日には放送法改正案などが、相次いで強行採決されている。

政権を取った立場になれば、どこの党であっても同じことをする。良し悪しは別にして、強行採決できるのが政権を取るメリットだということ。共産党が政権を取れば、やっぱり同じことをすると思うよ。

つまるところ、政党政治の限界なのだと思う。
民主主義=政党政治=多数決……という構図になっている。
野党や反対派の人たちから、「民主主義の危機」との意見も出ているが、選挙で議員を選び、政党で政治をしているのであって、自民党に政権を持たせたのは国民である。投票率の低さや選挙制度の欠陥があるにしても、形式上は国民が選んだ議員だ。

そうであるなら、これは民主主義の危機ではなく、政党政治の危機だろう。議員は国民の代表ではなく、政党の代表になっている。政党の利益が国民の利益と一致していればいいが、政党支持率をみればわかるとおり、一致しているとはいいがたい。

時事ドットコム:【図解・政治】政党支持率の推移(最新)

政党支持率(2015年6月現在)

政党支持率(2015年6月現在)

※2015年6月現在

自民党支持率は24.2%しかない。選挙では自民党が勝ったが、国民の代弁者にはなっていない。1票差でも勝ちは勝ちなので、反対票を入れた人々の意見は無視はしないまでも軽く扱われる。選挙制度の限界、政党政治の限界でもある。

サッカーの試合にたとえれば、与党チームと野党チームが対戦しても、最初から与党チームが勝つことが決まっている出来レースでしかない。なぜなら、野党チームは11人に対して、与党チームは20人で戦っているようなもの。しかも、審判は与党チームが有利になるように笛を吹く。
与党チームが勝つために試合をした……ということ以外に、意味がない試合。

フェアな試合……フェアな議会を求めるのなら、政党政治をやめ、議員一人ひとりの意思で自由に投票できるようにするしかない。最初から結果がわかっているような投票は、八百長と一緒だ。

そもそも、議員による政治が民主主義といえるのかどうかも問題だ。

理想的なのは直接民主制だが、これまでは物理的に不可能だった。だが、現在はネットを介して、全国民が票を投じることは技術的に可能になっている。採決に、有権者の全国民が参加する……という社会になれば、民意はそれなりに反映されるのだろう。それでも、反対派の人は抗議をするだろうけどね。

民主制の近代化、新しい民主制の形を発明しないといけない時代になっているのかもしれない。

国民の総意が今回の一件について、不満、反対、危機感を抱いているとするなら、次の衆議院・参議院の選挙で、自民党議員を落選させることだ。
それ以外に有効な方法はない。
新たな政権が誕生したら、法律を変えればよい。ただし、民主党は勘弁して欲しいけどね。じゃ、どの政党なのか?……という話になる。

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