赤とんぼを激減させた新農薬は人体には無害なのか?

LINEで送る
Pocket

赤とんぼを激減させた新農薬は人体には無害なのか?

 そういえば、最近、赤とんぼが減ったなーと思っていた。
 撮影の仕事で、山や川のある郊外によく出かけていた。赤とんぼは、いるにはいるものの「たくさん」ではなかった。私が子供の頃は、うるさいくらい飛んでいたものだ。

日本から「赤とんぼ」がいなくなる。背景に新農薬の使用 | 日刊SPA!

 20年ほど前までは、日本中の至るところで見られた赤とんぼ(アキアカネ)。これが’00年前後を境にして、半数以上の府県で1000分の1以下に激減しているのだという。

(中略)

「『ライシメータ』という水田に模した装置を使い、育苗箱用殺虫剤の影響でどれだけアキアカネの数が減少するかを調べました。すると、フィプロニルを用いた場合はまったく羽化せず、ジノテフラン、イミダクロプリドといった殺虫剤でも、30%ほどしか羽化しませんでした。一方、従来の農薬を使った場合は、農薬を使用しなかった場合と同程度の羽化が見られました」

 「赤とんぼ」というのは、胴体が赤いトンボの総称なのだが、アキアカネに代表されるアカネ属のトンボで、成熟して赤くなる種類をいう。
 撮影でトンボを撮ることも多いが、アキアカネは濃いオレンジ色という方が適切で、タイリクアキアカネの方がより赤い。
 都会の渋谷あたりでも、よく飛んでいたのだが、昨今はあまり見かけなくなった。幼虫のヤゴは淡水の池や水田で生育するので、水辺のある環境が必要だ。

 新農薬と赤とんぼの激減の関連性は、2012年頃からいわれていたようだ。
 記事はそのネタを掘り起こしたものだと思われる。なので、新しい情報というわけではない。
 人間にとって不都合な虫は「害虫」と呼ばれ、有益な虫は「益虫」と呼ばれる。トンボは「益虫」の方だ。害か益かという区分けは、人間の勝手にすぎないが、農薬は害虫だけに効くわけではなく、益虫であっても容赦はない。
 原因物質の「フィプロニル」は、ミツバチの蜂群崩壊症候群(CCD)の原因ともされている化学物質だ。「ジノテフラン」「イミダクロプリド」は、「ネオニコチノイド系農薬」と呼ばれるもので、これはかなりの猛毒。
 ペットのノミ取り用の薬剤で「フロントライン」というのがあるが、これはフィプロニルが主成分。使用の注意書きには、人体につけてはいけないとあるが、それをペットの肌につけることになる。多くつけすぎてペットが死んだという事例もある。人体に有害なものが、犬猫に無害であるわけがない。
 フィプロニルやネオニコチノイド系農薬は、神経を麻痺させることで生体を死に至らせる。そういう意味では、危険ドラッグと似ている。「ネオ-ニコチノイド」いう名前は、ニコチンに似ていることからきている。

 赤とんぼを絶滅危惧種にするくらい効果的な農薬が、人間には無害なのか?……と問いたくなる。
 人間は体が大きく、細胞の数も桁違いに多いので、一部の細胞で不具合が生じてもエラーを補えるだけの冗長性があるため、生命維持に直接的な影響が出にくい。ヤゴには致死量でも、人間には微々たる量でしかない。だが、蓄積されたらどうなのか?
 私が子供の頃は、日本中のあちこちで「公害」が問題になっていた時代だ。産業と経済の発展にともなって、環境がひどく汚染された時代に育った。光化学スモッグ注意報なんてのも出ていた。沿岸の埋め立て地に林立した煙突からは、絶えずもうもうと煙が上がっていた。川はヘドロでドロドロになり、悪臭をはなち、ドブ川になった。行き交う車は排気ガスを吐きちらし、臭いと思いつつもその空気を吸っていた。
 環境ホルモンが問題になったのは、それよりもあとの時代で、吸う空気から食べる食品まで、様々な化学物質で20~30年にわたって人体実験をされていたようなものだ。その環境ホルモンも、最近ではほとんど話題にされなくなったが、なくなったわけではない。
 今現在、40代~50代というのは、そういう環境に育った世代だ。
 私も含めたこの世代は、たぶん長生きはしないよ(笑)。
 平均寿命が延びて、より高齢化した社会がやってくると予測されているのだが、おそらくある時期を境に、平均寿命は下がり始めるような気がする。公害世代が60歳を超えるあたりから……幼少期に公害環境にさらされたツケを、高齢者になった頃に払うことになるのではないか。

 中国で大気汚染が問題になったりしているが、30~40年前(現在年からは39年〜49年前)の日本もそうだった。大気汚染は目に見える公害だが、農薬汚染は目に見えない。無農薬や有機農法が話題になったりするが、生産性は落ちるから需要をまかなえない。
 赤とんぼの激減は、環境悪化の赤信号なのかもしれない。

(Visited 45 times, 1 visits today)