日本では遅々として進まない電子書籍の普及。
 もっぱら、過去の資産としての本の電子化が問題にされているが、電子ブックとして特化した新しいコンテンツがどんどん出てこないことの方が問題。
 大手出版社は、積極的に電子ブックを出そうというより、渋々対応している感じで、既得権益をいかに死守するかということに腐心しているようだ。
 以下の記事も、そのひとつだろう。

電子書籍を「アンチコモンズ」にするな : アゴラ – ライブドアブログ

日経新聞によれば、政府の知的財産戦略本部は、出版社に著作隣接権を与える方針だという。この記事は「電子書籍で読める作品の数を増やすため」と書いているが、これは嘘である。出版社に隣接権を認めると、一つの本に多くの権利者が拒否権をもつアンチコモンズ状態になって、電子出版は止まってしまうだろう。

今でも、出版社は隣接権を実質的にもっている。紙の本をスキャンして電子化するとき、「版面権」と称するものを主張するのだ。これには法的根拠はないが、実質的に出版社が許諾権をもっているため、電子化の大部分の時間は著作権の交渉に取られる。これを法的に認めたら、独立系の出版社が電子化することは不可能になる。

 著作隣接権あるいは版面権を法的に認めるのであれば、出版社の下請けで出版物を作っている末端の多くの制作会社やデザイナーにも、その権利の恩恵を受けられるようにしろよ……と、いいたい。
 本の著者には、印税という形で、発行部数に応じた報酬が支払われ、増刷すればその分の報酬も発生する。出版社も増刷できるくらい売れれば、その分の売上げは上がる。
 だが、下請け制作会社は、制作を請け負ったときの1回きりの制作費しか支払われない。それも安い金額で請け負っている。なぜ下請けに回すかといえば、制作費を安くするためだ。たとえば、制作予算が100万あったとしても、下請けには50万で出す。残り50万は元請けの出版社の取り分だ。右から左に回すだけで利益が出るわけで、ピンハネみたいなものだ。孫請けに出すときには、もっと安い金額になる。
 そういうピラミッド構造は、いろんな業界にあることだが、出版界も例外ではない。

 電子ブックでは出版社は中抜きすべき……というのが私の持論(^_^)。
 作家が自分で作品を書き、自分で電子ブック化し、自分で売る。
 そのためのアプリケーションとプラットフォームは整いつつある。
 販売サイトに手数料を取られる以外に、中間マージンを取られることがなく、作家の取り分は最大限になる。玉石混淆で売れるかどうかはバクチみたいなものだが、売れたときは大きい。

 これからは「個人」がベストセラーを世に出す時代だろう。
 電子ブックは、その可能性を秘めている。

 電子ブック市場としてのAmazonとiBooksが、早く日本を席巻してくれた方がいいと思うのだが……

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