携帯電話が誕生して40年だそうだ。
 その初号機は電話というより無線機に近い。通常の無線機は同一周波数を使うため、話すことと聞くことが同時にできない一方通行だが、異なる周波数を使うことで双方向に通信ができるようにしたのが携帯電話だ。
 その携帯電話初号機の姿が以下の記事。

CNN.co.jp : 携帯電話の誕生から40年、初の通話は? – (1/2)

40年前の4月3日、米モトローラの副社長だったマーティン・クーパー氏はニューヨーク市内の歩道に立ち、携帯電話から電話をかけた。公の場で史上初めて携帯電話が使われた瞬間だった。

(中略)

DynaTACが発売されるまでにはそれから10年かかった。当時の値段は3900ドル(現在のレートで約36万円)、重さは1キロを超え、長さは約30センチもあった。

 記事では写真でしか見られないが、ディスカバリーチャンネルの「歴史を変えたテクノロジー:携帯」で記録映像として紹介されていた。
 市販されたのは10年後ということだから、1983年。
 その当時、私はアマチュア無線をやっていたが、ポータブル無線機はもっと小さなものがあった。一方通行の無線ではあったが、144MHz帯や430MHz帯は、現在の固定電話の受話器くらい大きさのものがあった。
 それらは日本製だ。送受信を異なる周波数で行うためには、送受信回路が2つ必要にはなるが、当時の日本の技術であれば、モトローラ社よりももっとコンパクトに設計できたのではないかと思う。無線機技術を携帯電話機に応用できなかったのは、電話会社と無線機メーカーが畑違いという垣根があったからではないかと思う。
 昔は、分野が違うと提携したり共同開発したりが難しかった。

 初期の携帯電話は、無線機の発展系だったから、盗聴に対するセキュリティも乏しかった。そもそもニーズが限られていたから、盗聴されるという発想もなかったのだろう。
 その後、セキュリティ対策として、周波数を一定のパターンで切り替える「周波数ホッピング」の技術が取り入れられた。
 この「周波数ホッピング」の技術を発明したのは、ハリウッド女優のヘディ・ラマーだそうだ。
 彼女はその時代には希有な理系女性だったようで、いろいろな発明をしたらしい。
 「周波数ホッピング」は、妨害されない魚雷の誘導システムとして考案された。
 これについての経緯が、ディスカバリーチャンネルの「本当にあった奇妙な科学実験史 5」で再現ドラマとして取り上げられている。
 「周波数ホッピング」の特許を取るまでには、紆余曲折があったらしいが、その一因がヘディ・ラマーが女性で美貌だったためだという。女性に対する偏見が背景にあったようだ。

 共同開発者であるジョージ・アンタイルとの出会いのエピソードが、ユニークだった。
 ヘディ・ラマーがある映画に出演できない理由が、「胸が小さいから」だといわれ、豊胸するためにジョージ・アンタイルの元を訪れ、彼の前で上半身裸になって見せていった。
「わたしの胸、小さい? 大きくできるかしら?」
「ええ、できると思いますよ」
 と、彼は答えたという。
 1930年代後半の時代なので、豊胸手術などというものはなく、豊胸する術はなかった。
 ジョージ・アンタイルは作曲家・ピアニストだということになっているのだが、その彼になぜ豊胸の話をしたのかといえば……
ジョージ・アンタイル – Wikipedia

内分泌学の研究が趣味だったので、『エスクワイア』誌に内分泌腺に関する一連の論文を寄せている。

 ……という一文があるのみで、詳しいことはわからない。
 今でいうところの、ホルモン療法の走りともいえるが、当時はまだ未知の分野だ。しかし結局、彼女の豊胸は成功しなかったそうだ。このへんの逸話は、ネット上の日本語記事には出てこない部分なので、このドキュメンタリーは興味深い。

 「周波数ホッピング」の特許はのちに取得できるのだが、彼女がその特許の恩恵を受けることはなかったという。時代を先取りしすぎていたのだろう。
 携帯電話を誰もが持つ時代になって、かつての美人女優の発明がなくてはならない技術になっている。その背景を知ると、意外なルーツがあるものだと思う。

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