北朝鮮の自称・人工衛星打ち上げが迫っている。
衛星写真からの監視でも、ロケットを準備している様子が捉えられているようだ。
日本は発射されれば迎撃するともいっているが、政府筋から「迎撃は無理」との発言も飛び出して、物議をかもしている。
だが、可能なのか無理なのかは、明確にすべきだろう。
技術的に可能なことと、指揮命令系統の人間的な問題があるが、発射されてから着弾まで10分くらいというから、迎撃の命令を政府から待っていたら間に合わないことは明白。
ということは、発射が確認された時点で、現場の判断で迎撃をするか否かの決定をしなくてはならない。それが可能だろうか?
PAC3 首都圏・東北に展開 迎撃態勢、週明け整う(産経新聞) – Yahoo!ニュース
ミサイル防衛(MD)システムでの迎撃は二段構えとなる。海上自衛隊のイージス艦搭載の海上配備型迎撃ミサイル(SM3)が大気圏外で撃ち落とし、失敗すれば航空自衛隊のPAC3が着弾直前に迎撃する。
湾岸戦争で注目されたパトリオットミサイルの改良型が、日本にも配備されているが、その命中精度はどのくらいなのか?
ということに関しては、あまり明らかにされていない。百発百中でないことは確かで、迎撃に成功したというアメリカ軍の発表映像は、成功したものだけを見せているにすぎない。
湾岸戦争時のパトリオットミサイルの命中率については、以下のような記事がある。
日本が配備する計画になっている地上発射型迎撃ミサイル(PAC3)は、アメリカが湾岸戦争で初めて大々的に使ったパトリオット(ペトリオット)ミサイルの改良型だが、パトリオットについては湾岸戦争時に米軍側が「命中率はほぼ100%」と発表していたにもかかわらず、実は命中率は9%かそれ以下でしかなかったことが、1992年の米議会の会計検査院(GAO)の調査で分かっている。
つまり、100発撃って9発しか当たらないのだ。
命中率は1割以下。
これでは、打率が悪すぎて、使えないバッターと同じだ。
首都圏に配備するというPAC3の規模が報じられていないので、何発のミサイルがあるのかもわからない。取材するのなら、そういう実態を数字として示して欲しいものだ。
通常、1つの発射機で4発、1パトリオット中隊は5~8基の発射機を運用するという。この規模は、命中率から逆算しているようにも思える。ただし、日本ではどうなのかはわからない。
命中率が1割としたら、最低でも10発を一度に発射できるくらいの規模が必要になる。3発当てようとしたら、30発必要だ。
「当たらない」と失言されて、それを防衛相は否定していたが、否定の根拠がないからよけいに信用できなくなる。
「命中率は1割だが、100発用意したから大丈夫」とでもいえば、納得もできる。「最善を尽くす」という努力目標では、誰も納得しないだろう。
野党は「極めて不見識」「緊張感が足りない」などと批判しているが、追求すべき論点が間違っている。確実に迎撃するには、どのくらいの迎撃態勢が必要なのか、現状はどのくらいだから、迎撃の可能性はこれくらい……と、根拠を明確にしてから議論なり批判なりをするべきだ。装備が足りないのなら、緊急に追加発注することだって、可能だったのではないか。今さら、遅いかもしれないが。
おそらく、数発の迎撃では失敗する。失敗すると、ますますPAC3の存在意義が問われ、日本の防衛能力は穴だらけということになる。
本音は発射したくないのではないか? 張り子の虎とはいわないまでも、見せかけにすぎないことがばれるのは避けたいだろうからだ。