【東日本豪雨】行政区域ごとの避難指示の問題点

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「東日本豪雨」と名付けられた、鬼怒川の大洪水。
衝撃的な映像を目の当たりにして、災害の恐ろしさが際立っていた。地震の場合と違って、「揺れ」という実感がともなわないから、避難しようというきっかけがなく、気がつけば浸水していたことが、逃げ遅れる一因にもなったように思う。
 
気象庁は警報は出すけれども、避難指示は自治体が出す。それも行政区分として区切られた町村ごとに出されるため、同じ流域でも避難指示の出たところと出ないところがあった。

時事ドットコム:避難指示遅れ、高杉市長謝罪=「決壊すると思わず」-茨城県常総市

甚大な被害が出た同市三坂町・上三坂地区の住民に堤防の決壊前に避難指示を出さなかったことについてミスだったと認め、「そこが決壊するとは思っていなかった。大変申し訳なかった」と謝罪した。

(中略)

三坂町の一部には同日午前10時半までに避難指示を出していたが、上三坂地区を含む鬼怒川東部地区に避難指示が出されたのは決壊後だった。

隣の町には避難指示が出て、隣接する地区には避難指示が出ていない。情報がなかったことが理由のようだが、行政区分の違いで指示を出したり出さなかったりするのは、合理的とはいえない。避難指示を出すのなら、流域全体に出すべきだった。豪雨は、人間が引いた地域の線引きを、考慮したりはしないのだから。
 
そこが決壊するとは思っていなかった」という「想定外」のことだったとはいえ、前にも書いたが災害は「想定外」だから起こる。しかし、まったくの想定外かといえば、ハザードマップで想定はされていた。

鬼怒川のハザードマップ(PDF:1.6MB)

鬼怒川のハザードマップ

鬼怒川のハザードマップ

※詳細はPDFを参照。

このハザードマップの想定は、「3日間の総雨量が402mmで、概ね100年に1回程度起こる大雨」ということなので、まさに今回の豪雨が相当する。
せっかくハザードマップを作成していながら、活用されなかった。「気象庁は10日、栃木県に大雨の特別警報を発表」していたので、その警報があまり活かされなかったともいえる。
 
地震に対する備えや心構えはある程度できていると思うが、豪雨に関しては危機感が乏しかった。それは行政の人たちだけでなく、市民も「まさか」と思っていたのだろう。近年に大きな水害を経験していなかったことも、判断の遅れにつながった。
地名に由来する過去の教訓について書かれた記事が以下。

鬼怒川で起きた大洪水を歴史と科学で検証する 水を治めてきた先達の知恵を疎かにしていないか | JBpress(日本ビジネスプレス)

 そもそも、現在の日本には「十分安全と言えるレベル」にある堤防は非常に少ないと報じられています。

私は専門家でもなんでもありませんが、かつて理学部で学んだ一個人として合理的に検討してみれば、茨城県常総市のケースと宮城県大崎市のケース、両者に共通する地誌的な条件がはっきりあること、また同様のリスクは日本列島の随所に存在することが明らかです。

しかし、市当局はまさか堤防が決壊するとは想像だにしておらず避難の指示が遅れたためにより被害が甚大になった可能性が指摘されています。

(中略)

「鬼怒川」あるいは「荒川」「九頭竜川」など、日本全国の川の名前には、水の恵みをもたらしつつ、恐るべき威力も持った川本来のパワーを示すものが少なくありません。

過去の教訓ということでは、地名もそうだが歴史も知らなければいけない。堤防があるから安心……というのも、根拠の乏しい安心でもある。洪水を防ぐために、堤防を高く高くすればいいわけでもなく、建設費や建設期間もかかるため、すべての河川流域を万全にすることには無理がある。
堤防に対する考え方を変えなくちゃいけない。「洪水を防ぐための堤防」ではなく、「豪雨で川が氾濫するまでの時間稼ぎのための堤防」というように。

今回の豪雨の中心は、たまたま鬼怒川流域に「線状降水帯」がかかってしまったが、もっと南西よりが中心になっていれば、荒川や多摩川が氾濫していたかもしれず、そうなっていたら都心が水浸しになった可能性もあった。
 
じつは、この「線状降水帯」がかかり始めた頃、私の勤務先である渋谷区でも土砂降りの雨が降っていた。これはすごい雨だな……と、東京アメッシュの画像をキャプチャしていた。

▼東京アメッシュ(2015-09-09 15:15)

東京アメッシュ(2015-09-09 15:15)

東京アメッシュ(2015-09-09 15:15)



この東京アメッシュは東京都を中心にしたエリアしかカバーしていないが、ゲリラ豪雨などの状況を把握するのには重宝する。5分ごとに最新情報を更新するので、刻々と変化する雨の地域と雨量を知ることができる。気象庁の雨雲レーダーよりも、リアルタイムに雨の状況がわかる。
 
これはなかなかの優れもの。こういう情報があれば、「情報がない」状況は回避できるだろうし、避難指示を出す判断にも使えるように思う。
東京アメッシュは東京都の登録商標とのことだが、こうした情報提供を全国に展開するといいように思う。

いずれにしても、避難指示を出すか出さないかを、市町村レベルの判断に委ねるのはどうなんだろう?
自然災害は広範囲におよぶことも少なくないのだから、行政区分にとらわれない避難指示を出すシステムが必要な気がする。隣接するA町では避難指示が出て、B町では避難指示が出ないのは、住民にとっては理不尽な話。決断力のある市長や知事がいるところは救われて、決断力のない市長や知事のところは犠牲者が出てしまう、ということにもなりかねない。
 
災害時の行政区分にとらわれない避難指示等を、どこが(誰が)出すのかといった、システムを再構築する必要があるように思う。

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