「カミングアウト?」

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「カミングアウト?」

StockSnapによるPixabayからの画像

カミングアウトなる言葉が流行っているようだ。

日本で外国語が流行るときには、本来の意味から離れたものになることが多い。

「リベンジ」にしても、「復讐、あだ討ち」という血なまぐさい意味としてではなく、復活とか再挑戦といった軽い意味で使われている。

カミングアウトの意味を調べてみると、

◆カミングアウト(coming out)〔外来語年鑑2001年〕

(1)自分のセックスの好みをはっきりと相手に言うこと。〈参: カム・アウト〉

(2)それまで無名だったものが,突然活躍をはじめること。

「現代用語の基礎知識2001年版 (c)2001 株式会社自由国民社」より。

と、なっている。

使われている意味は(2)の方だろうが、(1)の意味も面白い(笑)。

使い方を間違うと、とんだ誤解の元になりそうだ。

『カミングアウトします』といった場合、

『公表します』とか『告白します』いうのが、一般的な使われ方のようである。

『私のセックスの好みをいいます』と受け取られると、恥ずかしいものである。英語圏の人に対しては、要注意の言葉だね。

だが、本来は『カミングアウトという言葉は、一般には「HIVに感染した人が、自分の感染について明らかにすること」という意味で使われてきた』ということである。その言葉の持つルーツや深い意味を考えずに使うのは、ときに問題を起こしかねない。

言葉には本来の意味のほかに、裏の意味……つまり、スラングがあったりする。スラングはごく限られた集団や世代で使われる、暗黙の了解で成り立っている。一種の暗号なのだが、無関係な他人にはわからないようにする意図には、言葉に差別的な意味や蔑視する意味があったりするからだ。そして仲間であるかどうかを見分ける、選別の手段ともなる。

言葉は意志の疎通を可能にする、もっとも確実な方法ではある。反面、ときには相手を侮辱したり攻撃する武器にもなる。攻撃の意図を持って言葉を使う確信犯もいるが、無意識に使って意図がなくても傷つけてしまうこともある。

カミングアウトという言葉を、HIV患者に使うことは失礼だろう。言葉だけが一人歩きして、TVでカミングアウトが気安く使われるようになったら、HIV患者の耳にも入るかもしれない。それは決して気分のいいものではないだろうと思う。メディアは批判の声が上がらない限りは、無頓着で無神経なのだから。

新しい流行り言葉が出てきたときには、その意味や過去の使われ方についても少しは配慮したいものである。

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