昨日は仕事の打ち合わせのため、某週刊雑誌の編集部にいった。毎度のことで、夕方6時から出かけ、編集部から帰途につくころには夜になっていた。
編集部から外に出ると、携帯電話を取りだして妻の携帯に電話をいれる。しかし留守電になっていた。
「オレだけど、いま●●●●編集部を出た。これから帰る」
伝言を残して地下鉄に乗り、乗り継ぎ駅である渋谷へと向かう。妻の勤めている会社は渋谷にあった。うまく連絡が取れれば、いつも渋谷で待ち合わせて一緒に帰る。
渋谷に着いて、再び電話をするが、留守電のままだった。しかたなく埼京線に乗り、池袋へ。その途中に携帯が鳴った。私の携帯はバイブレーションだけにしていて、ベルトホルダーに入っている。振動を感じたが、電車が止まって車両から出るまでは電話を取らない。混雑している車内で携帯電話を取ることはしない。それがマナーだということもあるが、人に電話中の会話を聞かれたくないのだ。
多くの人が大声で車内でも電話をしているが、不用意に自分のプライバシーを露出する神経は理解できないね。片側だけの会話でも、十分に話の内容は推測できるし、その人のプライバシーがうかがえるからだ。そんなに覗かれたいのだろうか? そもそも大声で話す必要はない。マイクの感度は十分にあり、小声でも会話は可能なのだ。
電車を降り、妻に電話する。
「いま池袋だよ。そっちは?」
「渋谷駅の前」
「待ってた方がいいか?」
「うん」
待ち時間をつぶすために、池袋西武デパートの地下へと下りる。今夜の食事のメニューをなににしようかと考えながら、食品売り場をぶらぶらと歩く。閉店時間まで1時間を切っている時間帯なので、あちこちの売り場で値引き合戦をしていた。
妻は肉が好きなのだが、私は魚の方が好きだ。狂牛病騒ぎで牛肉はちょっと遠慮したい気分だ。感染の可能性のある牛の部位は知っていても、では安全は100%なのかといえば、処理段階の二次感染までは確認しようがない。イギリスでの感染例では、解体作業中に飛び散った骨髄が、安全なはずの肉に付着していたのだ。
【参照】環境goo “狂牛病は怖くない”
“狂牛病の正しい知識 Version 3.1”
そこで魚売り場で、なにか手頃なものはないかと探す。刺身も安くなっていた。どうしようかとしばらく思案したが、妻が外食したいという可能性もあったため、見送ることにした。
ぐるりと生鮮食料品を見てまわって、次に高級食材を売っているフロアへと行く。なにげなく歩いていて、ジャムの並んでいる棚の前で止まった。普段は見慣れないメーカーのジャムがたくさんあった。「売れ筋一番」と札のかかったジャムを手に取る。アップルジャムとブルーベリージャムの2種類があった。試しにと、アップルジャムを購入(後日レビューしよう)。
ふと、以前TVでやっていた「カルピス・バター」のことを思いだした。たしかここにもあるといっていた。それはあった。しかし、値段を見て買うのをやめた。1個が1000円だって……。生クリームのような味わいのあるバターらしいのだが。
そうこうしているうちに、そろそろ妻が池袋に着いた頃だと判断して地上へ出る。そして電話する。
「いま、どこだ?」
「池袋に着いた」
「オレは西武の食堂街へのエレベーター前にいる」
しばらくして、ニコニコ顔の妻が歩いてきた。
「なんか、食ってくか?」
「うん、お腹すいた」
私たちはエレベーターに乗って、8階の食堂街へ。妻は中華の店を選び、中へと入った。
注文は3品。広東チャーハン、五目焼きそば、若鶏の唐揚げである。料理がテーブルに運ばれてくると、ふたりで3品を分ける。だいたいいつもこうしている。ひとりが1品ずつよりも、ふたりで分けあう方が、複数の料理を味わえるからだ。貧乏くさいかもしれないが、メニューの幅も広がり、経済的だ(笑)。
食事を済ませてふたりで帰途につく。
私たちは結婚指輪を持っているが、ふだんはつけていない。私は指輪をつけていると指に圧迫感があってだめなのだ。しかも、汗をかいたりすると痒くなってしまう。時計も同様に痒くなってしまうので、めったにしない。時間は携帯電話をみればわかるので、時計は特に必要がないのだ。
電車の座席に並んで座る。指輪をしていないので、私たちが夫婦であることは傍目にはわからないかもしれない。一般的な夫婦でないだろうことはたしかだが(笑)。
私と妻の仕事帰りの道草は、結婚前から続いている。以前は携帯電話もなかったので、時々刻々と居場所を確認することはできなかった。そのため、妻は私が出かける時間を見計らって、通過駅の切符売り場で待ち伏せていた。ときには待ちぼうけをしたこともあると思うのだが、タイミングよく会うこともしばしばだった。あるときなど、予定外の外出であったにもかかわらず、たまたま乗った電車の車内に妻がいたことがあった。電車が1本、車両がひとつ違っていればすれ違いだったはずだが、申しあわせたように同じ電車に乗ったのだ。なにかがふたりをつないでいるような、不思議なものを感じた。
私たちのささやかなデートは、携帯電話のおかげで、行き違うこともなくなったのである。技術の進歩に感謝しよう(笑)。