温暖化問題で主導権を握ろうとするアメリカ

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温暖化問題で主導権を握ろうとするアメリカ

Gerd AltmannによるPixabayからの画像

温暖化問題で、アメリカは世界の主導権を握ろうとしているようだ。
オバマ米大統領の就任演説に、その意志が強く出ている。

ニュース – 環境 – 温暖化対策、米新政権への10の提案 – ナショナルジオグラフィック 公式日本語サイト(ナショジオ)

 2013年1月21日に行われたバラク・オバマ米大統領の就任演説には、いくつかの意表を突く内容が含まれていた。中でも、気候変動への言及は、ほかのどの問題よりも多くの時間が費やされ、驚きを持って受け止められた。

オバマ大統領は、「われわれは気候変動の脅威に対処していく。それができなければ子どもたちや将来の世代を裏切ることになると誰もがわかっている」と語った。

かつて、京都議定書(1997年)が採択され時には、アメリカは署名はしたものの実行性のある締結には消極的だった。その理由は、自国の産業界や経済界からの反発があったためだ。
EUは積極的だったが、二酸化炭素の排出権取引の市場をEU主導で推し進めるという、経済的メリットを手にした。

温暖化問題に消極的だったアメリカも、最近は積極路線に転換したが、それは主導権を取り戻したいからだと推測される。

アメリカの国力は、相対的には低下傾向にある。軍事力や経済力、世界への影響力では、いまだナンバーワンではあるものの、中国やインドの台頭、アメリカ経済にも直結するEUの抱える経済的な弱体化によって、差は縮まっている。

長らく覇権国家として影響力を持ってきたアメリカは、これから先も覇権を維持するためには、新たな主導権を握る必要がある。
それが、温暖化問題なのだろう。

大義名分としての「次世代のため」というのは、誰もが納得できる理由だ。それが言葉通りに実現できるのなら、反対する国も人もいない。
とはいえ、理想だけでは世界は動かない。

温暖化問題に対する、さまざまなルールや規制・規格が登場することになる。そこには「お金」が絡む。自分たちに都合のいいルールであれば、利権を独占できる。経済ではルールを握っている者が勝者になる。たとえるなら、カジノのプレーヤーではなく、カジノを運営する側になるということ。

温暖化対策として挙げられる方策には、矛盾点も多々ある。
木質バイオマスなら燃やしてもいいという矛盾」で触れこともひとつだ。
また、

 福島の事故が示すように、原子力発電は決して完璧なエネルギーというわけではないが、「安全に注意して慎重に取り扱えば、温室効果ガス排出の少ない有効な代替エネルギーになり得る」と支持派は主張する。

……と、原発は温室効果ガスは出さないが、放射性廃棄物は出す。高濃度の放射性廃棄物は、地下深く埋めるなどするしか処分方法はない。しかも、それが安全なレベルまで放射性が低下するのに、数万年かかる。数万年先まで廃棄場所を維持管理するのは、事実上不可能だ。地下処分するということは、捨てたらあとのことは知らん……ということと同義だ。

そもそも数万年先まで、人類が繁栄しているという可能性の方が薄いかもしれない。
原発に対する二者択一をするのなら……

二酸化炭素と放射性廃棄物と、どっちがいいか?

……ということになる。
原発は必要だという理屈もわからないではないが、利点ばかりではなく、上記のようなデメリットの選択をする必要もある。

二酸化炭素を人工的に回収する技術は、じつは存在する。
人工光合成二酸化炭素を吸着する人工樹木など、採算ベースになる実用化には至っていないが、大規模に実用化すれば問題解決の可能性が高い技術だ。
問題はコストと効率、そして普及だ。

有望な技術なのに、なぜすぐにも実用化に取り組まないかといえば、制度の問題であったりこれを導入すると既得権益を脅かされる業界があるからだ。
日本政府がこういう新技術に資金を投じればいいのだが、そこまでの先見性は期待できそうにない。

温室効果ガスとして二酸化炭素ばかりが注目されるのだが、メタンガスの方が同量の二酸化炭素の21~72倍の温室効果をもたらすとされている。
シベリアのツンドラが溶けることでメダンガスが放出されているし、資源としても注目されている海底のメタンハイドレートもメタンの発生源になる。また、人口の10倍にもなる家畜の糞尿から発生するメタンガスも無視できないとされる。
温暖化の原因は、二酸化炭素だけでなく複合的な要因によるものだが、どれが主犯なのかは研究者によって主張が異なる。

北極圏や南極圏の氷が溶けると、海水面が上昇するとして、温暖化に警鐘を鳴らす端的な例として取り上げられることが多い。

だが、この例も、衛星による地球の観測が可能になった、ここ30年くらいのデータに基づいているに過ぎない。それ以前のデータは、曖昧な古文書の記述しかない。
これについて、面白い映像があった。


データの見方として、なかなか興味深い。

氷河の後退も、温暖化の影響だとされているのだが、後退している氷河がある一方で、氷河が成長しているところもある。変化は一様ではない。
過去20~30年を振り返ると、「異常気象」という言葉が毎年のようにいわれていたように思う。

そもそも「正常な気象」とは、なんなのか?
「例年」というのが「正常な気象」なのだろうが、地球が太陽を公転する1年は、毎年同じではない。
太陽には活動の活発な時期と、停滞する時期がある。温暖化は太陽活動に起因するという説もあるが、それが主因だと、二酸化炭素はあまり関係ないという話になる。

いずれにしても、「温暖化問題」というのが、政治的にも経済的にも重要なキーワードにはなっている。
その問題に対する対処法の主導権を握ることが、アメリカの意図するところなのは間違いなさそうだ。

余談だが、温暖化よりも寒冷化を心配した方がいいかもしれない現象が、太陽では起きている。
太陽に異変 静穏化で地球は寒冷化するのか  :日本経済新聞

 北極がS極で南極がN極だったものが、今年に入り、南極がN極を維持したまま、北極がS極からN極に変わりつつある。このまま行くと、北と南がN極で、赤道付近がS極という「4重極」になるとみられる。こうした変則的な磁場の構造は、最近の研究によると、マウンダー極小期と呼ばれる17世紀を中心とした近世の寒冷期にも起きていたらしい。

温暖化か寒冷化の答えは、早ければ数年後、遅くとも10年後に出てくる。
温暖化問題はバカ騒ぎだったのか、それとも深刻な問題だったのか……。
10年後、世界はどうなっているのやら。

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