動物の帰巣本能は、人間にはない(あるいは失われた)能力だ。
犬が遠く離れた飼い主の元に帰るという話はよく聞くが、猫ではあまり聞かない。
猫は本来、行動半径が狭くて、飼い猫が逃げ出したとしても半径100メートル以内くらいに潜んでいることが多い。
だが、320キロを移動して地元に帰った猫がいたという。
ニュース – 動物 – 驚くべき動物の帰巣本能 – ナショナルジオグラフィック 公式日本語サイト(ナショジオ)
アメリカでは、旅先で行方不明になり、約320キロの道のりを自力で旅して地元に帰った飼い猫「ホリー」が大きなニュースとなった。
……と、猫の話が冒頭に来ている記事だが、そこはナショジオ(^_^)
本題は、猫ではなく帰巣本能に優れた生物の話だ。
うちには猫が8匹いるのだが、どの子もこんな旅はできないだろうね。外には出ない猫なので、迷子になったら最後、怖がるばかりでどこにも行けないと思う。
私と妻で「迷い猫.NET」という、迷子ペット捜索掲示板を運営しているのだが、そこにはペットを迷子にしてしまった飼い主さんたちの悲痛な思いが寄せられる。
運良く見つかる場合もあるが、見つからないまま月日が過ぎてしまう場合もある。
私自身も迷子にしてしまった経験があるが、必死に捜し回って見つけたものだ。
掲示板で発見されたケースや私の経験からいえば、飼い猫は自力では遠くまで行けない。たいていは近所にいる。いるのだが、猫は犬のように道をふらふらと歩いたりはしない。たいていは物陰に隠れて、身を潜める。そこが自分のテリトリーではないからだ。
野良猫が堂々と歩いているのは、自分のテリトリーだからだ。
「猫は家につく」ともいうが、これは一戸建てで出入り自由の猫の場合。マンションの部屋で飼っている場合には、猫は自分の住んでいる家がどんなものかを知らない。
以前住んでいたマンションで、猫が外に出てしまったとき、その猫は階の違う部屋の前で呼んでいた。階層構造のマンションは、各階が同じ作りなので、猫には区別がつかなかったようだ。
猫の嗅覚は犬には劣るとはいえ、人間よりはいいのだが、それでも密閉度の高いマンションでは自分の家の臭いは嗅ぎ分けられなかったと思われる。
ペットを溺愛する人も少なくないが、犬は犬、猫は猫であって、人間とは違うということを忘れてはいけない。とかく、擬人化して考えてしまって、「うちのワンちゃん(猫ちゃん)は大丈夫」みたいな根拠のない信頼感で、ペットを外に連れ出したり旅行に連れて行ったりして、迷子にさせてしまう人がいる。
ペットを愛するのはいいのだが、相手は動物であり、彼らは彼らの本能にもとづいて行動するのだということ。人の理屈や気持ちは、基本的には通じない。通じたと思えるようなこともあるのだが、それは感情移入しているからであって、本当のところはわからない。
私は、うちの猫たちを愛している(^_^)
長く一緒に暮らしている家族のようなものだ。だが、人間の家族ではない。
猫は猫。
猫としてつきあう。
猫は人に比べると短命だ。野良猫だと5年前後、飼い猫だと10年前後の寿命だ。
うちの猫たちは長生きしている方だが、10歳を過ぎると老化は顕著になる。これまでに6匹の猫が他界した。もっとも長生きした猫が18歳、短命だったのは3歳。短命だったのは白血病を患ってしまったからだった。
猫たちの死を見送るのはツライ。それは楽しかった日々の代償でもある。
ときどき、逝ってしまった猫たちのことを思い出して、涙が出てくる。
記憶の中では、あの子たちは今でも走り回って甘えている。
楽しくも辛い記憶だ。
それでも、今いる猫たちとの日々は幸せだ。
この子たちをみんな見送るまでは、死ねない。
猫たちは、私の生きがいのひとつなんだ。