電子書籍関連の記事。
果たして、この思惑は成功するのだろうか?
大手出版社が連携して設立する電子書籍会社「出版デジタル機構」(仮称)が、4月2日に創設されることが発表。「すべての出版物のデジタル化」を謳う同社の活動に注目が集まっている。
「出版デジタル機構」は、講談社、集英社、小学館、新潮社、文藝春秋など、計20の出版社により昨年9月に設立が発表された会社(2月29日現在、賛同出版社は187社に)。同社は、設立の目的として、電子出版ビジネスの市場拡大やインフラ整備、出版物のデジタルデータの保管などを挙げており、電子書店への配信業務のサポートや、図書館に対する窓口機能などの業務なども行っていくという。
意気込みというか、理想はいいんだけどね。
問題は、どれだけ実現性があるかということ。
賛同している出版社のリストを見ると、角川が入ってないんだよね。
その角川はAmazonと手を組むようだ。
つまり、すでにインフラを構築している相手と組むわけだ。こっちの方が現実的。
今からインフラを作るのでは、スタートラインから負けている。
そもそもこれだけたくさんの出版社が参加していて、利害が一致するのかどうかは疑問。烏合の衆のようにも思える。それぞれの主張をまとめるのは至難の業だろう。
過去の失敗・成功事例を勉強した方がいい。
200社以上が参加した新規プロジェクトで、成功した例があるだろうか?
ちょっと思いつかない。
Appleが音楽分野で成功したのは、ハードとしてのiPodとプラットフォームとしてのiTunesを、セットで展開したからだ。当初は、音楽界も難色を示していたが、今では売上げに大きく貢献している。
電子書籍も、リーダーシップを取る出版社が率先してプラットフォームを作り、そこに他社の参入をうながせばいいように思うが、どこもそれをやりたがらない。というか、そのノウハウがないからだろう。
インフラはよそに作ってもらって、そこに便乗しようという意図が見え見え。
ようするに、本気度が低いということだ。
ゲーム業界では、かつていろいろなハード(プラットフォーム)があったが、現在では任天堂とプレイステーションに収斂されてしまった。
電子書籍のプラットフォームも、同様に2つないし3つくらいに収斂すると思う。
読者(ユーザー)は、あっちもこっちもと買うところを選ばない。たいていは1つか2つ。
その1つか2つに、これから立ち上げるプラットフォームが選ばれるかどうか。
1つはAmazon。もうひとつはどこか?……という話。
全書籍のデジタル化というのは、実現すればけっこうなことだが、それは同時に紙書籍の衰退を加速させる。
また、利益配分をどうするのか? 価格をどうするのか? といったことも不透明だ。
コンテンツを提供する作家にとっては印税の問題。
電子書籍になれば、価格は下がるのが妥当だ。しかし、電子書籍になっても、現状と同じ10%~15%の印税では、作家はますます食えなくなる。AmazonやAppleのように、印税を60%~70%も配分できるのか?
現状、紙書籍と電子書籍の価格は、あまり差がない。それは紙書籍を優先しているから、電子書籍の価格を下げられないというお家事情だ。アメリカのAmazonのように価格差がなければ、国産の電子書籍は爆発的には売れないだろう。
難題は山積みだ。
【追記】2013年5月31日付
結局、たいした成果を上げられず、ほぼ挫折したようだ。
出版デジタル機構の電子書籍取次買収は最悪の愚策繰り返される「JAL再生での失敗」 | 岸博幸のクリエイティブ国富論 | ダイヤモンド・オンライン