インフルエンザでマスクは予防に効果がないのか?……研究についての盲点


インフルエンザがらみで、マスクの予報効果についての記事があった。
それについて、ちょっとツッコミ(^_^)

大流行のインフルエンザ「マスクをしても予防できない」って本当?(市川衛) – 個人 – Yahoo!ニュース

マスクは予防に効果がないの? 
それでは、マスクは健康な人がつけても意味がないということなのでしょうか? その点について、米ミシガン大学が2010年に行った研究があります(※5)。

インフルエンザの流行シーズン中(1月~3月)、大学の寮に住む健康な学生1297人を「何もしない」「マスクをする」「マスクをして手洗いも心がける」という3つのグループに分け、インフルエンザのような症状を起こす人がどのくらい出るか調べました。

 その結果が、次のグラフです。縦軸がインフルエンザのような症状を起こさなかった人の割合、横軸は経過した時間(週)を示します。

マスクの予防効果の検証とされるグラフ

マスクの予防効果の検証とされるグラフ(諌山が少々加筆)

5)Mask use, hand hygiene, and seasonal influenza-like illness among young adults: a randomized intervention trial.

……ということで、マスクの効果があったとして、この文献とグラフを出しているのだけど、ちょっと待て。

2週目までは3つのグループにほとんど差異はなく、感染者が増えている。マスクに予防効果があるとするなら、この推移はおかしくないか?
記事中に掲載されているグラフは小さくなっていて、ちょっとわかりにくいのだが、大元のグラフで拡大して見ると、マスクをしたグループの方が、1週目あたりで罹患者が若干多くなっているのだ。
誤差の範囲かもしれないが、それについての説明がないのはなぜ?

つまり、マスクの予防効果があるとすれば、私がピンクの線で引いた「理想値」の推移にならなければ、予防効果があるとはいえないのではないか?

3週目あたりから、各グループでの差異が出始めて、6週目で0.08ポイントほどの差になっている。
1297人を3つのグループに分けると、1グループは432人くらい。
そのうちの0.08だと、35人くらいの差。

何もしていないグループの罹患率は、約36%。
マスクをしていたグループの罹患率は、約30%。
結局のところ、マスクで予防できたかもしれないのは6%だけ。
これは流行を防げたといえるのだろうか?

実験の方法にも、問題がある。
もともと免疫力が高く、インフルエンザにかかりにくい人もいるわけで(私がそれに該当する)、グループ分けした人たちの中で、感染しやすい人とそうでない人との峻別がされていない。その差異をなくすためには、3つのグループそれぞれに、3つの条件で実験して、被験者の免疫力の個体差を比較対象の前提条件から外す必要がある。

おかしな実験だなーと気になって、引用元の英文資料を見てみた。
すると、以下のような記述があった。

ILI発生率(P <.025)の統計学的に有意な低下が、6週間の研究期間の後半にのみ観察された理由を説明する要因はいくつかある。
まず、研究開始2週間後に募集を継続し、サンプルサイズを11%増加させました。研究中の後の参加率が高いほど、学生寮内での呼吸器ウイルスの感染が減少した可能性がある。
第2に、マスクおよび手指衛生グループの被験者の割合がほぼ10%増加し、調査の3〜6週間で平均以上のマスク(1日3.5時間)を装着したことが報告された。
対照的に、この比率は、同じ期間にフェイスマスクのみのグループで2%増加しただけであった。
結果に影響を与えたかもしれないもう一つの要素には、潜伏期間中の軽度のインフルエンザの時期が含まれていたこと。
ミシガン州の検査室で確認された症例と大学保健サービス(UHS)に対するILIの報告は、調査の第2週までは実質的に増加しなかった。 UHSに報告されたILIの症例の最大頻度は6週目に発生し、ミシガン州で検査で確認されたインフルエンザの最大数は、この研究の第4週および第5週に発生した。
加えて、春休み旅行がこの実験に影響を与えた可能性がある。ほとんどの生徒は春休み中(実験期間の4〜5週間)にキャンパスを離れ、この間に防護措置を継続する必要はないため、春休み期間中の潜在的に被ばくした可能性したがって、春休みの曝露は混乱要因となり、実験の有効性を実証する能力が制限される可能性がある。したがって、ここで観察された防御効果が、より大きなインフルエンザの流行、ならびに実験開始時間および中断の潜在的影響に一般化され得るかどうかを同定するために、将来の研究が必要である。

まどろっこしい説明だが要点は、

  • 被験者が途中から増えていた。
  • 実験途中で、マスクの装着時間が増えた。
  • 実験開始時、インフルエンザは流行していなかったが、6週目には地域の流行がピークに達していた。
  • 春休み期間中は、被験者が実験を継続しなかった。

つまり、実験としては穴ばかり、不備ばかりだったということだ。
このような実験では、マスクの予防効果の有効性は立証できない。

お粗末な実験ではあるが、この実験からわかることは、

マスクをしていないと、罹患率は36%。
マスクをしていても、罹患率は30%、
その差は、6%にすぎないので、流行は防げない。

……ということだと思う。

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