フォトグラファーでもある私には、とても関心がある事例。
写真が無断使用されることは多いのだが、著作権者が権利の侵害を認めてもらうのには、法律的にいろいろとややっこしい問題があった。被疑者が「知らなかった」とか「違法とは思わなかった」と主張すると、その反証として「無断使用の意図があった」ことを証明しなくてはいけなかった。
しかし、そこに画期的な判決が出た。
有料写真が無断使用されたアマナイメージズ勝訴 クリエイター側の損害賠償のハードル下げる画期的判決 – ねとらぼ
アマナイメージズが、自社で販売する有料写真がボストン法律経済事務所のWEBサイトで無断使用されたことについて、損害賠償を請求し勝訴しました。裁判日は4月15日で、著作権、著作者人格権、独占的利用権の侵害が認められての判決。加害者に故意や過失があったかどうか立証しなくても、無断使用した事実さえ証明すれば勝訴できたという重要な例になります。
写真を無断使用された経験は、私自身にはないが、写真仲間の友人はWEBで勝手に使われているのを発見したことがある。
私のブログに載せている写真や画像は、無断使用されることを前提にして、公開するものとしないものとを分けている。オープンにするというのは、無断使用されるリスクもあることを計算しておかないといけない。勝手に使われたくないなら、公開しないことなんだ。世の中、善人ばかりではないのだから。
上記の記事では、有料写真……つまり、プロの撮った写真が問題にされていたわけだが、プロかアマかというのは本来は関係ない。
一般人が撮ったスナップ写真でも、著作権は撮影者に自動発生するので、他者が無断で使用すれば著作権の侵害になる。法律家の先生方は、素人写真の芸術性のあるなしを問題にしたりするのだが、芸術性は見る人の価値観で変わるものだし、誰がその判断をするのか?……という問題にもなる。
そういう意味では、トートバッグ問題で騒がれている佐野氏のスタッフが、素人写真のフランスパンを勝手に使ったのは、立派な著作権侵害なんだ。
アマナイメージズには私の写真を提供していて、お世話になっているストックフォトなので、こういう裁判で頑張ってくれたことは心強い。
「加害者に故意や過失があったかどうか立証しなくても、無断使用した事実さえ証明すれば勝訴」
この判例の意味は大きい。
「トレース」なんていう言葉で、誤魔化しはできなくなる。
ストックフォトサイトには、サイズの小さなサンプル画像があり、ウォーターマークも入っているのだが、無断使用する人はそれでも使う。ウォーターマークを消し、画像を左右反転するなどの加工をしたりして、わからないようにする。だが、写真のディテールは指紋と同じで、オリジナルと比較すれば痕跡は見つかる。
今回の判決が出たからといって、無断使用がなくなるわけではないが、権利侵害を訴えやすくはなる。
フォトグラファーにとっては朗報だね。