前にも疑問符をつけた連載記事なのだが……
揚げ足を取るわけではないが、「科学で分析する~」となっているからには、科学的に緻密に検証して欲しい……という観点から。
離婚するとき──男の理由、女の理由:日経ウーマンオンライン【科学で分析する 男と女の付き合い学】
身体の解剖学的な特徴を見ても、ヒトが完全な乱婚であったことがあるとは考えにくいのです。乱婚の動物はオスとメスの差が大きい。例えば、乱婚のチンパンジーやニホンザルではオスの方がメスよりずっと体重が重いです。メスの獲得をめぐってオス同士が争わなければならないからです。約19万年前に現れた現生人類(ホモ・サピエンス)の男女差はそんなに大きくない。これは、一夫一妻的な傾向が強くなったことの表れだと考えられます。
オスとメスの個体差の違いが、「一夫一妻」の科学的根拠のひとつ……とするには無理がある。
理由はほかにも考えられるからだ。
ヒトとチンパンジーでは、そもそも成体の体格が大きく違う。ヒトの方が倍くらい大きい。ベースが大きくなっているから、オスとメスで体格が違いすぎると、かえって不都合だろう。
また、妊娠期間が……
ヒト………………270日
チンパンジー……210日
と、ヒトの方が約2ヵ月長く、出産時の新生児の体重が……
ヒト………………平均2800g
チンパンジー……平均1500g
と、この時点で約1.9倍と2倍近い。
ということは、長い期間を胎内で成長させ、大きな子を出産するためには、大きな体が必要だという理屈にもなる。オスとメスは受精した段階でランダムに決定されるから、オス用とかメス用の子宮を作るのは効率的ではない。共用できる方が都合がいい。大きな子を産むには大きな体、というのは必然だろう。
成体の体重については……
ヒト
・男 171.8cm/66.5kg
・女 158.3cm/50.9kg
(平成16年の20代の平均身長と平均体重)
チンパンジー
・オス 34~70kg→平均体重43kg
・メス 26~50kg→平均体重33kg
というデータがあったが、
ヒトは、女に対して男は、130.6%
チンパンジーは、メスに対してオスは、130.3%
と、ほとんど差異は変わらないのだ。
つまり……
「乱婚の動物はオスとメスの差が大きい」という著者の理屈は成立しない。
科学は、データの積み重ねだ。
そのデータの多くは、数値化できるものである。数値化ができない分野もあるが、多数の標本(サンプル)を比較することで、ある基準を設定したときに、どういう傾向を示すかは、統計的に数値化できる。
上記の記事には、ほかにも疑問符をつけたいところがあるが、それは時間があったら(^_^)。