阪急阪神ホテルズの食材偽装問題を内野席から見ると

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阪急阪神ホテルズの食材偽装問題は、問題のホテルだけでなく、他のホテルまで疑われるような事態に発展している。

ホテル業界とは、仕事のクライアントとして多少関わっているので、まったくの外野というよりは内野席から見るような感覚で、一連の報道を見ている。

阪急阪神ホテルズ:調理担当者、レッドキャビアの偽装認識- 毎日jp(毎日新聞)

 阪急阪神ホテルズ(本社・大阪市)のメニュー偽装問題で、ホテルの調理担当者が、食材がトビウオの魚卵であると知りながら、「レッドキャビア」(マスの魚卵)と虚偽表示していたことが関係者への取材で分かった。トビウオの魚卵の価格はマスの3分の1程度だったといい、仕入れ値を安く抑える目的だった疑いもある。

テレビの記者会見で「意図的ではない」という発言をしていたが、長年にわたって偽装していたわけだから、意図的でないという発言そのものがおかしい。
「どうせ違いはわからないだろう」というような、客をなめている感覚があったのだろうと推測する。

実際、高級食材などを食べ慣れていない一般人には、それが本物かどうかなんてわからない。私は、レッドキャビアなんて食べたことないから、どんなものなのか、味も知らないよ(笑)。食べたことないものを出されたら、なるほどと納得するしかない。

ホテル業界には複数の縦割り構造があって、グループ会社を統轄する親分会社と、個々のホテルを経営する子分会社、その中で実務を担当する部署……と、いくつかの縦軸があるようだ。だから、食材を調達する部署と調理を担当する部署がまったく別になっている場合もある。

阪急阪神ホテルズの場合……

12ホテルで食材確認体制なし 阪急阪神「部門間に壁」:朝日新聞デジタル

 同社によると、各ホテルで新メニューを作成する際、食材を発注する調理担当とメニュー表示をするサービス担当らが打ち合わせて詳細を決定していた。だが各担当を束ねる管理職は新メニュー作成の報告を受けても、会社全体でメニュー表示の正確性をチェックする仕組みはなかった。表示方法はサービス担当に、調理や食材の選定は調理担当にそれぞれ任せられ、内容の変更があっても、担当間での情報交換がなかったという。仕入れ業者が食材を変更してもほとんど情報共有されていなかった。

……ということだ。

ホテルには支配人という役職があるが、最高責任者かというと、1つのホテルについては最高責任者ではあるが、グループ会社のホテルであれば、支配人は1ホテルの責任者でしかない。
経験を重んずる業界のようで、年功序列はかなり厳しいらしい。
典型的な縦社会なのだろう。いくつかある縦軸で、横の繋がりは希薄という感じだ。

一定水準以上のホテルが加入できる、「日本ホテル協会」というのがある。
その加入条件には……

ホテル経営者の皆様へ│日本ホテル協会

日本ホテル協会とは

日本ホテル協会とは

いずれも日本ホテル協会の入会基準をクリアした、
日本を代表するホテルとして高い評価をいただいております。

……と、謳われている。
阪急阪神ホテルズは、その会員ホテルなのだ。
日本を代表するホテル」がこれでは情けない。規模が大きいということだけで、日本を代表するホテルといわれているように思える。

また、ホテル業に従事する人たちを対象に、国交省が「観光関係功労者大臣表彰」を毎年授与しているのだが、平成24年度には、(株)阪急阪神ホテルズ 大阪新阪急ホテル調理部専任部長が表彰を受けている。
今回の偽装問題で、関係が深いであろう「調理部専任部長」である。
「知らなかった」とは、いえないのではないか?

業界誌を見ていると、「コンプライアンス」とか「顧客重視」などといった言葉やスローガンはたびたび出てくるのだが、顧客の方を見ているというよりは、業界内部に目を向ける「内向き」な印象だ。

顧客目線ではなく、経営陣や親会社の幹部を納得させることを第一に考えているように見える。
全部が全部そうではないにしても、業界としての体質に根ざしているのではないだろうか?

一流ホテルはカレイのエンガワだった」に続く。

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