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 こんなに悔しくて、悲しくて、寂しい気持ちを味わうなんて……
 PK戦になって、嫌な気がした。
 運が左右するPK戦では、勝つ確率と負ける確率が五分五分だ。
 そして、どっちかに決着がつく。

 運がなかった。

 負けが決したとき……

ぐぅあぁぁ~~~
かぁぁ~~~;;;

 頭を抱えて、言葉にならないうめき声を発した。
 しばらく、うなっていた。
 涙があふれてきた。
 すると、そばにいた猫のシマが、いっしょに、
「うにゃぁぁ~~、ぅぅぅにゃぁぁ~~」
 と、鳴いた。
「おまえも一緒に泣くのか? オレがなんで泣いてるのかわかんねぇだろうに」
 妻はスポーツには興味がないので、見ていたのは私だけ。

 ひとりで見ているのが、余計に辛かった。
 この気持ちを共有できる人がいない。

 呆然……というより、緊張感が瓦解した放心状態。
 大切なものを失った喪失感。

 それは、まるで大好きだった彼女に別れを告げられて、失恋したときのような感覚。

 ショックから立ち直れない。
 眠れそうになかった。

…………………………………

 4年をかけた、長い物語が終わった……
 辛いことも多かったが、終盤は歓喜もあった。
 その歓喜が大きかっただけに、この幕切れは辛い。

 もう少し、夢を見たかった……
 もう少し……

 4年後に再び……
 なんて、軽く言ってくれるな。
 また、4年も待たなくてはならないのだ。
 けっして、楽な4年ではないだろう。
 誰が監督になるにしても、平坦な道のりではない。
 もしかしたら、私は生きていないかもしれない。
 ある日突然、交通事故に遭うことだってある。
 「プレトリアの惜敗」で涙を流した人の中で、そんな目に遭う人もいるだろう。

 日本がスペインと戦う姿を見たかった。
 スペインに負けるのなら、納得できただろう。
 パラグアイとはなんとか互角に渡りあえたから、余計に残念でならない。

夢の時間は終わった。

 まだ、夢から覚めたくはなかったのだが……
 4年後は、どんな夢を見せてくれるのだろうか?

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