「ナナちゃん、来たる」

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n011015a10月15日、夜8時前に、1本の電話がはいった。

「●●です」

名前を聞いて、即座にピンときた。妻が里親求むの掲示板で、連絡を取りあっている人だった。

「突然なんですけど、今晩、子猫を連れていってもいいでしょうか?」

なるほど、突然だ(笑)。そろそろだとは聞いていたが、妻も今日だとは思っていなかっただろう。

「ええ、いいですけど、まだ妻が帰ってないんですよ。だいたい9時以降だったら帰ってると思います」

簡単な挨拶と、うちまで来る最寄り駅を確認して電話を切った。

さて、来客となると少々部屋の掃除をしなくてはならない(笑)。なにしろ、大所帯の猫家族なので、部屋中に猫の毛やら猫砂が飛び散っているのだ。私はいそいそと掃除機をかけ、散らかっている部屋を片づけた。

部屋の掃除が終わる頃に妻が帰ってきた。

「おーい、ナナちゃん来るってよ」

「ええ!(笑) 今日?」

「そう、9時過ぎくらいになるって」

妻はうれしそうだ。いいまで、メールのやりとりで画像でしか見ていなかったナナちゃんに、やっと会えるからだ。妻は着替えると、部屋の片づけを手伝い始めた。

――ピロロンピロロン。

インタホンが鳴った。すかさず妻が受話器を取る。

「はい、どうぞ」

妻はマンション入口の開錠ボタンを押す。

「お二人到着」妻がいった。

うちのマンションの1Fにあるインタホンには、カメラがついている。相手が誰かがわかるようになっているのだ。

妻はドアを開けて、来客を待つ。ドアの外のチャイムを鳴らすと、猫たちが雲隠れモードにはいってしまうからだ。

ご夫婦が現れ、子猫を手提げバッグの中に大事そうに抱えていた。

子猫とも初対面ならば、譲ってくださる方にも初対面だ。ご夫婦は若い人だった。先方もこちらのことは詳しく知らないと思うが、私たち夫婦よりもずっと若いと思う(^^;)。

n011015bまだ2ヶ月足らずのナナちゃんは、まだまだ小さい。8月20日頃に生まれたというナナちゃん。その日、台風が関東をおおっていたさなか、舞いこんできた三毛猫が生んだのだという。

怯えた様子のナナちゃんは、初めての場所でおどおどしていた。無理もない。人間でいえば、4〜5歳で親から自立させられるようなものだからだ。

バッグから出てきたナナちゃんは、いそいそと猫のねぐらとして使っているキャリー(カゴ)の中へと隠れる。

うちの猫たちはといえば、来客と知って姿をくらましていた。それでも、嗅ぎ慣れない臭いの猫がいることを、早くも察知していた。

まっさきに様子を見に出てきたのはBチャン。ついで、クリ。しかし、いずれも新入りに対して警戒している。毎度のことで、新入りが来るとしばらくは猫たちの間で、力関係の駆け引きが行われる。

だが、ナナちゃんはけっこう強気な性格であるようだ。早くも先輩猫に威嚇の唸り声をあげている。

掲載した写真は、カゴの中に隠れているナナちゃんである。

ご夫婦は帰り際に、名残惜しそうにナナちゃんを撫でていた。本来なら、自分で育てたいところだろうからだ。里子に出すからには、それなりの事情がある。

部屋の中を自由にはしゃぎまわるまで、しばらくかかるだろうが、遊び相手はたくさんいる。歳の近いタマコは、ナナちゃんに対してもっとも警戒しているようだが、きっと一番の遊び相手になるだろう。

新しい家族が増えたことは、なにはともあれうれしいことである。

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